10月7日の長崎

 真っ暗じゃん。がらんとした境内を見渡しながら、いくら何でも早く着き過ぎたか…と、張り切る自分に苦笑いを浮かべかけた取材の記者は、続々と参拝に向かう人々の姿に気づいた。午前4時20分。10月7日の諏訪神社の朝が特別に早いことを彼女は学んで▲午前7時半。長崎市桜馬場の夫婦は、日課のウオーキングの時間を少し遅らせて諏訪神社を目指した。しばらく待つと、奉納踊りのトップバッターを務めた桶屋町の一行が桟敷席の歓声を背に坂道を下りてくる。狙った通りの展開に笑い交わす2人▲非日常の弾んだ空気が長崎をわくわくと包む。「待つのもくんちの醍醐味(だいごみ)」-ふだんは長く長く感じる待ち時間もきょうは「たったの30分」だ。高揚感が時間の感覚をバグらせる▲お祭りが人とふるさとをつなぐ。「くんちに合わせて帰省しました」-若い会社員のコメントがうれしい。知事や長崎市長が泣いて喜びそうな談話を特集面で見つけた。「おくんちが好きで東京から移住しました。長崎市民になってよかった」▲これからお旅所に行っておさい銭をあげて、その後、露店を攻めるんです…と夕方、本社の報道部の内勤者。帰り支度のステップが今にも駆け出しそうに軽い▲きょうは中日(なかび)。雨雲の機嫌が気に懸かる。負けるな、長崎っ子の心意気。(智)

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