茨城県内大雨1カ月 裏山崩れ「帰れぬ」 二次災害、不安今も 県北3市、50世帯避難

自宅裏手の山が崩れ、土砂が家まで押し寄せてきた当時の状況を説明する福田浩一さん=7日午前10時18分、日立市宮田町

台風13号に伴う大雨被害は8日で発生から1カ月。被害が大きかった日立、高萩、北茨城の茨城県北3市では、自治体が提供する公営住宅などで約50世帯が避難生活を送る。大規模な土砂崩れが起きた日立市の現場周辺では、二次災害のリスクが残る中で住民が不安な日々を過ごす。

日立市宮田町。福田浩一さん(63)は7日、土砂崩れの爪痕が残る自宅の裏山を見て「大雨でいつまた崩れるか。怖くて帰れない」と嘆いた。

現場は9月8日の大雨で高さ約20メートル、幅約30メートルにわたって崩れ、土砂が自宅の一部に直撃。コンクリートがらなどが残る斜面は、応急対策でビニールシートを張ったのみで、福田さんは被災後から妻の実家に身を寄せる。

あの日、崩れた土砂は台所の窓を突き破って家の中に押し寄せ、雨水も滝のように流れ込んだ。当時は隣室で食事中。直撃の瞬間は「ドッカーンというごう音で、家に雷が落ちたと思った」という。

崩れたのは別の住民の土地だった。自宅は土砂の圧力で内壁が10センチほど膨らんでひび割れし、システムキッチンもゆがんで使用不能に。物置は7メートルも押し流された。数百万円と見積もるリフォームが終わるのは早くても年末だ。

被災後の日々は「人生で最も早い1カ月だった」と感じている。

家の片付けに追われる中、崩れた斜面の安全対策工事について、市や消防に救済措置を求めて何度もかけ合ってきた。

だが、市からは「民有地への支援制度がなく、自分たちは何もできない」と返された。

斜面を保護する工事には多額の費用が見込まれることから、福田さんは「個人ではどうにもできない。これほどの災害なのに救済策もないなんて…」と途方に暮れる。

自宅の敷地内に流れ込んだ土砂の高さは2メートルほどに達し、撤去がようやく終わったのは10月初旬。市社会福祉協議会などを通じ、建設業者やボランティアが運び出すのを手伝ってくれた。量は2トントラック60台分に上った。

一方、崩れた土砂や大木で押しつぶされた隣の空き家は、今も手つかずの状態。近隣住民も二次災害を懸念し、「安心して眠ることもできない。せめて応急対策だけでも行政で」と悲痛な声が上がる。

被害の大きかった日立、高萩、北茨城の3市のまとめによると、自宅が浸水被害などを受けて市営住宅や民間の借り上げアパートで暮らす被災者は、6日時点で38世帯81人(入居予定含む)に上る。このほかに県は、県北3市と東海村で計15世帯に県営住宅を提供している。

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