誤情報の拡散には言語圏を超えた対策が必要、東京大学と筑波大学が調査

東京大学大学院と筑波大学の研究グループは、新型コロナ禍の誤ったイベルメクチン情報の拡散の特徴を調査した結果、日本語ユーザーは英語ユーザーとは独立して、英語の誤情報を見つけて広範囲に共有していることが明らかとなった。

イベルメクチンは実験室環境ではウイルスの阻害剤と示されたが、厳密な試験ではCOVID-19死亡率の低下との関連は証明されなかった。しかし、一部のソーシャルメディアユーザーの間ではイベルメクチンがCOVID-19の治療法として提案され続け、科学的・非科学的な議論が入り交じり、公衆衛生に大きく影響する誤情報として複雑化している。

今回の研究では、2020年2月~2022年3月の2年間にわたるTwitterデータを用い、英語と日本語でそれぞれ共有されたイベルメクチンが含まれるツイートに関し、そのトピックや影響力のあるユーザーを比較。多言語分析による情報拡散の特徴を調査した。

その結果、リツイートに着目した計測では、影響力のあるユーザー(インフルエンサー)はその影響力を一貫して維持する傾向を示した。特に、日本語ユーザー間ではインフルエンサーを中心に強固なコミュニティが形成されていた。また、英語の誤情報は日本語ユーザーの間で拡散しがちで、特にインフルエンサーに広く共有されていた。

さらに日本のインフルエンサーは、英語のTwitterを観察して人気のある英語の誤情報を日本語で紹介するのではなく、英語の誤情報を直接キャッチアップし、時に英語ユーザーに先んじて日本語で誤情報を紹介していることが明らかになった。

今回の研究により、誤情報対策を行う場合の異言語間の対策の重要性が示され、誤情報対策には言語圏を超えた対応を考える必要があるとしている。

論文情報:

【Scientific Reports】A cross-lingual analysis on the spread of misinformation using the case ofIvermectin as a treatment for Covid-19

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