書くことは「体の毒素を抜くこと」 俳優、田村芽実さん、文学に目覚めたアイドル時代振り返る

読書好きの俳優田村芽実さん。影響を受けた作家の1人に谷川俊太郎をあげる=東京都内

 「文章を書くことによって、指先から毒素が流れ出し、心が癒やされる」。テレビドラマやミュージカル出演などで活躍中の俳優、田村芽実さん(24)は、読書や文章を綴ることによって救われてきたという。アイドル時代に文学に目覚め、今では自らコラムや舞台脚本を手がける田村さんにとって「書くこと」とは。その魅力を語ってもらった。(津田和納)

 -幼いころから本好きでしたか。

 「子どものころはむしろ嫌いでした。姉が小学校の図書館の本を端から端まで読んでしまうような本好きで、自分は劣等感があったんです。中学生になった時、(アイドル集団の)『ハロー! プロジェクト』に入って、毎日群馬県と東京を新幹線で往復する生活に。時間がもったいないと思って、1日1冊を目標に読むようになりました」

 -当時はどんな本を。

 「初級から入るのは好きじゃなく、上級から入るタイプ。『夏目漱石読んでるなんてかっこいいじゃん』みたいな。大きな転機は、川端康成『古都』との出会い。日本人に生まれて、日本語の美しさを文章から感じることができた時、『本ってなんて美しいんだろう』と心の底から思いました。もう、虜ですよ」

 -いつから小説を書こうと。

 「コロナが流行した3年前です。お仕事でコラムの連載をしていたので、書くことは『やらなければならないもの』という意識が強かった。私にとって書くことは特別。手を使って書くと心が癒やされたり、救われたりする。ただ、今は書くことが正直しんどくて…。文章に片思いをしています」

 -舞台脚本を手がけたそうですが、難しかったところは。

 「設定とか細かいシーンの描写を書くのは好きなんですが、点と点をつなぐ線を書くのが結構面倒くさい。でも、(しんどさが)伝わってはいけないので、常に生き生きとした文章を書かないといけないのが大変。最新作『私のもとへ還っておいで』はショーパブで歌う女の子が主人公の物語で、少し過激な内容。演劇に加えて、友近さんやゆりやんレトリィバァさんら女性の芸人さんの1人コントを見て勉強をしました」

 -好きな作家や親交のある作家さんは。

 「女性的な感覚を持った作品が好きです。吉本ばななさんの作品は、狭い世界を描きながらも宇宙が広がっているのがすてきですね。川端と村上春樹さんが描く女性像は母性のある奥ゆかしさがあって、主人公が何だかんだ女性に依存しているのが面白い」

 「個人的には森沢明夫さんと親交があって、尊敬しています。森沢さん原作の映画に出演したことで交流ができ、その際に『芽実は自分が見ている世界がある』と言ってくださって、今の執筆活動につながりました。『小説の書き方』という本は本当に勉強になります。行き詰まったら必ず読んでいて、役者としても面白い本だなと思います」

 -文章を書くことに挑戦したい人へのメッセージは。

 「私はあまり難しい言葉は知りませんし、高学歴でもありません。でも、本を読んで、自分の言葉や気持ちとして腹の中に落とすことで、私自身の表現ができる。子どもが素直に親に話すような内容で文章を書くことができたら、それはその人だけのすてきな作品になるでしょう。孤独な時、人に依存しなくても、自分と一緒にいてくれる存在。それが文章を綴ることだと思っています」

【たむら・めいみ】1998年群馬県生まれ。アイドルを経て、現在はミュージカルやテレビドラマを中心に活動する。10月21日に自らの脚本・演出で1人芝居コンサート「私のもとへ還っておいで」を東京・大手町三井ホールで上演。来年1月には大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されるフレンチロックミュージカル「赤と黒」に出演予定。

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