トビウオ、口が小さい釣りには不向きなターゲット…でも「すくい網漁」を体験できる場所が南大隅にあった

網ですくい上げた立派なトビウオ=9月18日、南大隅町間泊港沖

〈あゆLOVEフィッシング―上園あゆみ〉

 鹿児島県内のトビウオの産地と言えば、種子・屋久地方が思い浮かぶ。島を結ぶ高速船「トッピー」も種子島の方言でトビウオという意味だ。トビウオは「かごしま旬の魚(春)」や「プライドフィッシュ」(漁師お薦めの魚介類)に認定されていて、私も大好きな地魚の一つだ。

 しかし、釣りのターゲットとしては不向きだ。船に飛び込んできたり、たまたまルアーの針に掛かって“釣れてしまった”りしたことはあるが、狙うのは難しい。プランクトンを主食とするトビウオは口がとても小さく、生息域が表層付近のため魚群探知機にほとんど映らないのだ。

 そんなトビウオをタモ網ですくう伝統漁法が南大隅町に伝わっている。闇夜に集魚灯をたいて、寄ってきたトビウオを3メートルの柄のタモ網ですくうというものだ。町観光協会が「サメよりも早く! トビウオすくい網漁体験」として実施している。事前に予約すれば誰でも参加できるということで、私も参加してきた。

 薄暗くなる頃に出港し、夕暮れの中しばしクルージング。月が明るいと船の集魚灯が効かなくなるので、月が欠けている日が実施日となっている。魚群探知機に映らないトビウオを探すのは至難の業で、船長の経験と勘が物を言う。

 明かりをたいてしばらく待つと、暗闇からスーッと羽を広げたトビウオが近づいてきた。トビウオの正面に網を構えて頭からキャッチ。網の中には美しいトビウオが力強く跳ねている。青々とした魚体と黄色いライン、羽(胸びれ)の透明感とユニークな形に感動さえ覚える。こんな体験、ここでしかできない!

 時間を追うごとに集まるトビウオが増えたが、天敵のサメもやってきた。大自然の中、弱肉強食の世界を目の前に、終始興奮しっぱなし。終わる頃には丸々太ったトビウオを20匹ほどゲット。自宅でしばらくはトビウオざんまいだった。

 釣りでは狙えない、鹿児島のおいしい魚。水産をより身近に感じられるこのような取り組みが増えれば、魚食普及の一助を担うに違いない。予約は南大隅町観光協会=0994(24)3120。

トビウオをすくうタモ網。柄の長さは3メートルある=9月18日、南大隅町間泊港沖
網ですくってキャッチしたトビウオ=9月18日、南大隅町間泊港沖

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