音楽通じ「隔離の歴史」知って 愛生園収容所跡で初コンサート

長島愛生園の収容所跡で歌う沢さん(中央)と山川さん(右)

 瀬戸内市の国立ハンセン病療養所・長島愛生園に残る収容所「回春寮」跡で8日、シンガー・ソングライター沢知恵さん(52)=岡山市=と、アーティスト山川冬樹さん(49)=秋田市=によるコンサートがあった。島に入った患者が最初に収容された施設と、入所者の人生に光を当てる初企画。園内外の約50人が国による強制隔離の歴史を振り返りつつ聞き入った。

 回春寮(鉄筋平屋約200平方メートル)は1930年の開園当初からあり、旧事務本館など園内4施設とともに2019年、登録有形文化財となった隔離を象徴する建造物の一つ。15年に初めて訪れた沢さんは「ここで歌いたいと思いながら空間の持つ重さにたじろいだ」といい、8年がかりで開催にこぎ着けた。

 コンサートでは10歳での入所時の記憶をつづった宮崎かづゑさん(95)のエッセーを朗読。同じ長島にある邑久光明園の元入所者千島染太郎さんが作詞した楽曲「たんぽぽの絮(わた)」を山川さんの打楽器演奏に合わせ、伸びやかな歌声で披露した。

 参加した宮崎さんは「人生を支えてくれた人たちのことが思い出された。今日はすてきな日です」と話した。

 沢さんは幼少期から高松市の大島青松園をたびたび訪問。16年の瀬戸内国際芸術祭から作家として加わっている山川さんと大島で知り合い、共演を実現させた。終演後の取材に「音楽を通じ、入所者の皆さんの思いを、生涯を懸けて伝えていきたい」と語った。

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