循環型社会の構築へ  国際環境NGOと大手コーヒーチェーンが対話進める

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国内の大手コーヒーチェーン店が、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンとの対話を重ねつつ、店内での使い捨てカップのリユース率を着実に高めている。グリーンピースは2022年7月に初めて、日本のカフェ業界における使い捨てカップの現状を調査し、スターバックスコーヒージャパンをはじめとする大手9チェーンだけで年間3億6950万個を使い捨てていることが判明。この結果も踏まえて各社と意見交換を進め、今年8月に再度スターバックスとタリーズコーヒージャパンの全国150店舗においてグラスとマグカップの利用状況を調べたところ、前年にわずか8%だったスタバのリユース率は41%と大幅に上昇していた。グリーンピースは業界の使い捨てカップからの脱却をきっかけとする廃棄物削減や循環型社会の構築に向け、今後も調査や対話を続ける。(廣末智子)

主要9社で年間3億6950万個使い捨て――2022年調査で判明

日本のカフェ業界における使い捨てカップの現状調査は、グリーンピースが「カフェ業界では使い捨てカップが広く普及しているにもかかわらず、正確な消費量がはっきりせず、問題の規模も分かっていない」として実施。主要9社(スターバックス、タリーズ、プロント、ドトールコーヒーショップ、カフェベローチェ、エクセルシオールカフェ、上島珈琲店、カフェドクリエ、コメダ珈琲店)を対象に、定量的評価がなされた。

その報告書によると、9社の合計で、2020年には推定で3億6950万個の使い捨てカップを消費し、量にして約2800トンが焼却炉などの処理施設に送られていた。9社のうち、使い捨てカップの消費量が最も多かったのはスターバックスで、約2億3170万個(約1600トン)、2位はタリーズの7250万個(544トン)だった。これは店舗数の多さやビジネスモデルなども反映している。また、この調査時点で、テイクアウト用のカップは100%が使い捨てだったが、イートイン用飲料でもスターバックスでは10個中9個が、タリーズでは10個中7個が、使い捨てだったという。

こうした結果を受け、グリーンピースは、「イートインでのリユースカップの使用を拡大し、テイクアウトの購入時にもリユースカップを選べるようにすれば使い捨て製品への依存を大きく減らせる可能性がある」などと提言していた。

また最大手のスターバックスを巡っては、2021年から対話を重ねてきた。グリーンピースが上記の調査を行う以前の2022年3月に、スターバックスがカップや蓋などの使い捨て資材の削減を目指す取り組みを開始した際にはこれを一定評価した上で、店内でのマグカップ・グラス利用を徹底することや、マイタンブラーの持ち込み率を大幅アップさせるために、使い捨てカップへの課金や持ち込み割引の増加を検討することなどを求めた経緯がある。

今年8月、スタバとタリーズで再調査――スタバの店内リユース率は大幅改善

そのような提言の延長線上で、グリーンピースは今年8月13日〜31日まで、スターバックスの全国計95店舗とタリーズの55店舗で店内飲食用のグラスとマグカップの利用状況について再度調査を実施した。

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今回の調査は一般利用者93人に協力を募り、無作為に選んで来店した店舗で「マグカップ・グラスの使用者数」「使い捨てカップ数」「注文の際にマグカップを使用するか聞かれたか」などの項目について調べる方式で行い、その結果、2022年の調査と単純比較はできないものの、スターバックスでは店内リユース率が前年のわずか8%から41%にまで大幅に上昇し、リユースの取り組みが着実に進んでいることが確認できたという。

一方、タリーズの店内リユース率は前回の29%よりも下がり、12% にとどまった。タリーズはマイタンブラーを持参した人にはすべての飲料を30円割り引くといった独自のマイタンブラーやマグカップの推奨策を行っているが、グリーンピースは、今回の調査によって「その効果がほとんど浸透していないことが分かった」としている。

調査の協力者が、脱使い捨てに向けて、両チェーン店が、紙やプラスチックの使い捨てカップを減らす努力をしているように感じたかどうかを聞いた項目では、「まあまあ感じた」「とても感じた」と答えた人の割合はスターバックスで50.4%、タリーズは16.1%だった。

この調査結果を受け、グリーンピースはタリーズと面談の場を設け、環境に対する取り組みなどについて意見を交換。タリーズ側は前年の調査を踏まえたグリーンピースの報告書にも影響を受けて使い捨てカップ削減を課題として取り組む意識は年々高まっており、今回の調査結果からもさらに店内におけるマグカップやイートイングラスの利用を全国的に強化していく姿勢が示されたという。

日本の大手コーヒーチェーン店の特に店内でのリユースの推進について、グリーンピース・ジャパンでプラスチック問題を担当する大館弘昌氏は、2004年から、日本の国際環境NGOであるFoE Japanがスターバックスに対して徹底を求めるなど、業界の長年の課題であることを指摘。そのスターバックスが、今年4月から店内で繰り返し使える樹脂製のグラスによる飲料の提供を全国1500店舗で開始するなど、「着実に取り組みは前進している」といい、同社については今回の調査の数字がそれを裏付けた格好だ。

一方で、タリーズについては「現時点では目立った成果は出ておらず、カフェ業界における使い捨てカップ排出量第2位の企業として抜本的な取り組みが求められる」としている。

さらに、大館氏は両社に対し、世界で導入が拡大しつつあるテイクアウト分野における返却式リユースカップについて、スターバックスが今年8月から全国39店舗に拡大している容器のシェアリングサービスの仕組みの早急な拡大と、タリーズについても仕組みの導入を本格的に検討することを改めて要望。「リユース拡大のためにカフェ大手の協力が実現すれば、他の業界への良い影響も期待できる」として両社に連携を促すとともに、2040年までにプラスチック汚染を根絶することにコミットする国際条約の制定に向け、業界を超えた政策レベルでの容器包装全般におけるソリューション構築の重要性を訴えている。

今回初めてグリーンピースとの対話に臨んだタリーズコーヒージャパンは、「リユースについては創業時からタンブラー利用を推進し、マグカップに続いて2012年にはイートイングラスを導入し、今年6月にはこれをリニューアルするなど積極的に取り組んでいる。調査結果は真摯に受け止め、今後もプラスチックや廃棄物の削減にとどまらず、地球が抱えるさまざまな課題に積極的に関与し、サステナブルな社会の実現に貢献していきたい」と話している。

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