【台風13号】復旧作業、長期化も 農業被害3億4000万円 茨城県内

解体したビニールハウスを前に、今後について語る増田伸一郎さん=日立市小木津町

台風13号に伴う大雨で、茨城県内で被害を受けた農家の復旧作業が続いている。水田への土砂流入や農業用ハウスの倒壊などで被害は推計3億4538万円(8日現在)。稲が倒れて機械による収穫ができなくなったり、今後の生産縮小を視野に入れたりする農家もあり、復旧作業の長期化は避けられない状況だ。

県のまとめによると、農作物の被害は大豆やニンジンなど13品目。範囲は9月8日夜に線状降水帯が発生した日立市や鉾田市、茨城町など沿岸を中心とする7市町に及ぶ。

被害の大半は水稲。中でも北茨城市の被害が最も大きく、浸水や土砂流入で13.5ヘクタールの水田が被災し、県農業技術課によると、被害額は1478万円に上っているという。

同市のコメ農家、大友忠正さん(70)は23ヘクタールを栽培。近くを流れる里根川の越水で水田が浸水した。1カ月過ぎた現在も漂着した砂利や流木を取り除きながら収穫を続けるが、「品質や収入が心配」と表情を曇らせる。

常陸太田市、コメ農家、50代男性は「今年は自家用にしかならないかもしれない。でも、このままにしておけない」と話した。

日立、高萩、鉾田の3市では農業用ハウスなどの関連施設21件が損壊し、1839万円の被害を受けた。

トルコキキョウなど花き栽培を20年にわたり続けてきた日立市の増田伸一郎さん(80)は、花々を育てるハウス近くを流れる東連津川が越水。ハウスは水圧で押しつぶされ、出荷目前のトルコキキョウが全滅したという。増田さんは復旧作業について「根を詰めたらつぶれてしまう。ゆっくり片付けていく」と語る一方、今後は規模を縮小する方針だ。

県によると、常陸大宮市や東海村など7市村の農地・土地改良関連施設で、排水路ののり面が崩れるなどの被害が計102件あった。林業関係では、日立や常陸太田など4市で、山林の斜面崩落をはじめとする被害29件があったという。

農林水産業の支援に向け、県は先月26日、県農林漁業災害対策特別措置条例(県災害条例)の適用を決定。肥料や病害虫対策に必要な薬剤の購入費、施設復旧費に対する利子助成などの支援を決定。このほか、被災した市町村でも各種支援策が検討されている。

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