社会現象にもなった「カープ女子」 10年たってどうなった?

ユニホーム姿でカンフーバットをたたいて応援する高校生

 約10年前に一世を風靡(ふうび)した「カープ女子」。広島東洋カープの熱烈な女性ファンを指す。2014年には「ユーキャン新語・流行語大賞」トップ10に入るほど注目を集めた。しかし、最近は取り立てて聞く機会が減った気がする。カープ女子って今どうなっているの?

 9月下旬、広島市南区のマツダスタジアム。真っ赤に染まったスタンドには女性の姿が引き続き目立つ。高校2年の仲田恭子さん(16)=南区=は、同級生の近藤歩花(ほのか)さん(16)=東広島市=と制服の上からユニホームを羽織り、カンフーバットを握って応援していた。

 その姿はまさに令和の「カープ女子」。新型コロナウイルス禍を経て、今季から本格的に球場に通うようになったという。「観戦したいから部活はやってない。カープの応援部って感じ」と屈託なく笑う。

 一方、高校2年加藤こころさん(17)=西区=は基本1人で球場を訪れる「ソロ活動」派。正面砂かぶり席から一眼レフで写真を撮りまくる。「カメラを持った女性、結構いますよ」。新たな楽しみ方も生まれているのかもしれない。

 そもそも「カープ女子」はいつどうやって登場したのか。カープに詳しい作家の迫勝則さん(77)=佐伯区=によると、13年秋にNHKの番組が首都圏で急増するカープファンを取り上げたのがきっかけという。

 迫さんは「赤いグッズのかわいさ、無名の選手が成長し活躍するスタイルなどが当時、関東の若い女性をカープに引きつけたのだろう」と語る。野球のルールをよく知らない女性も球場へと足を運んでいたようだ。

 14年のマツダスタジアムの観客動員数は190万4781人で、13年の約1・2倍に増えた。球団側も「カープ女子の影響では」と推し量る。

 もちろんカープファンの女性は、話題になる前から存在していた。旧市民球場時代から「女子カープ後援会」「レディースファンクラブ」など女性に特化した団体もあった。関東のカープ好きの女性が注目されたのを機に、存在が強調されたという訳だ。今も球場を見渡せば、「元祖・カープ女子」がたくさんいる。

 ただ、高校生の仲田さんはカープ女子が注目された時代を知らない。記者が取材の理由を伝えると首をかしげた。「女子ってわざわざ付ける必要あるのかな」

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