市原隼人「思い出したくないくらい…」撮影した食事シーンの“8割”をカットするドラマ『おいしい給食』の充実感

10月よりテレビ神奈川、TOKYO MX、BS12 トゥエルビほかにて放送を開始するドラマ「おいしい給食 season3」。本シリーズは、1980年代の中学校を舞台に、給食をこよなく愛する給食マニアの教師・甘利田幸男(あまりた・ゆきお)と、彼を取り巻く給食マニアの生徒や周囲の人々の人生模様を描いた、笑って泣ける学園食育エンターテインメント。今作で主演、甘利田幸男を演じる市原隼人にドラマの撮影エピソードや見どころについて話を聞いた。

――シーズン3がいよいよ始まります。どんな思いで待ち望んでいるのか、心境をお聞かせください。

精一杯尽力いたしましたので、届けられる日が楽しみです。シーズン3を作ることは、5年前のシーズン1の頃には夢にも思っていませんでした。まずシーズン2ができたことも本当に光栄で、さらにシーズン3を作らせていただけることは奇跡だと思っています。本当にこれ以上ない感謝をもち、続編を熱望くださったお客様に恩返しがしたいという思いでいっぱいでした。

その思いが募れば募るほど、すごくハードな現場で体力がもつかどうかと思いながらプレッシャーと闘っていました。監督と話をして“出し惜しみは一切しない。今できるもの全て出しましょう。もし次があったとしてもそれを越えればいいだけじゃないですか”って。でも途中でキャパオーバーして意識が飛びました(笑)。

(最近)完全オリジナル作品自体が少ないんです。(オリジナル作品は)現場でいろんなものを生み出していけることが強みなので、“そこに妥協は一切したくない、使われなくてもいいですから色々挑戦していきましょう”と監督とお話ししながら撮っていたんですけど、シーズン3もいつものごとく給食のシーンは8割くらいカットです(笑)。

――2割しか使われてないんですか!?

給食のシーンは先に子どもたちのリアクションを撮ります。その時は僕は映らないのですが、全力でずっと芝居しています。なので、自分側の撮影が始まる頃には結構ボロボロになってから毎回始まるので…思い出したくないくらい(笑)。でもそれだけ子どもたちと一緒に本気になって作品を作っていって、いろんな方にこの作品が必要とされるために何が必要か自分たちで見出していく。

エンターテインメントってなくても人々は生きていけてしまう。だからこそ必要とされるために奮闘するのが僕らの仕事なんです、というお話を子供たちにもして、どういう方たちにどうやったら必要としてもらえるのかと一緒に闘ってきたんです。クランクアップの頃には、子どもたちも涙を流して“参加できて良かったです”って仰ってくれたので本当に一生懸命共に良い時間を過ごせたんだという充実感であふれています。

――SNSでは「『劇場版 おいしい給食 卒業』で最後だと思ってた」「帰ってきてくれてうれしい」という反響が。出演者も一新する今作では、これまでの作品と比べて意識した点や変化などはありましたか?

必然的なことでいうと、「おいしい給食」を今まで好きでいてくださったお客様が求めていただいているものは全て入っています。そして、新たなライバルやヒロイン、新たな環境の北海道・函館が相まって、新たな甘利田先生を見ていただくことができるのでそこをぜひ楽しみにしていただきたいです。

冒頭で実は私は寒がりだったというナレーションから始まるんですけど、もうこれだけで僕は面白くて、この先どうなるのかっていう(笑)。食の宝庫、函館。その給食に翻弄される甘利田役を演じていてすごく楽しかったので、お客様にも楽しんでいただけると思います。前作ではいなかった新たな強烈なキャラクターも増えてますので、甘利田以外にも、全ての登場人物を楽しんでもらいたいです。

――甘利田先生はコミカルな動きが特徴的です。そのファンも多く、今作も期待が高まっていますが…

©2023「おいしい給食」製作委員会

期待してください!現場で右往左往しながら、現場にある物すべてを使って甘利田を表現したので。笑われても、滑稽な姿を見せても、好きなものを好きと胸を張って人生を謳歌(おうか)する甘利田の姿を視聴者の皆様に見ていただいて、人生の活力にしていただきたいです。今回も色んな食べ方をしてます。カットされてる部分がいっぱいあるので、いつか全てを見ていただきたいですね。

――給食マニアの生徒・粒来ケンを演じる田澤泰粋さんは共演されていかがでしたか?

もう本当に食べるのが大好きで、給食のシーンが終わっても食べてるんですよ、帰らずに(笑)。すごく頭がきれる子で、誰かがヒントのようなことを言ったらすぐに台本にメモしたり、台本が付箋だらけで。本当に一生懸命に作品に向き合っている姿に感動しました。僕ももっと頑張らなきゃいけないなと。

――そんな粒来ケン役の田澤泰粋さんとの給食バトルのシーンの雰囲気はどうでしたか?

もう既に(粒来ケンは)“甘利田イズム”が入っていました。会った瞬間から。“なんだなんだ、あれ?”と思って(笑)吸収が早いなって思いました。良い意味で遠慮しないんですよね、(食べる)一口がでかい(笑)。萎縮せずに物怖じせずに、本当に本番を楽しんでるんだなって思うような子でした。阿吽(あうん)の呼吸でだんだん(芝居が)できる関係性になっていったので気持ちよかったです。

――シーズン3を撮り終えて、市原さんにとって甘利田先生とはどういう存在ですか?

こういう人間でいたいなっていう僕の憧れです。令和の時代になって規律や規制が増えていく中で、人間臭さというのが失われかけている時代だと思います。だからこそ1980年代の時代にあった日本ならではの、わびさびの心を持ち続けているような、ある意味ロマンチストで。給食に翻弄されながらも自分の好きなものに向かって人生の全てを注ぐ孤独な男でもあるんですけど。

甘利田のように好きなことを好きと胸を張って誰に笑われようが滑稽だろうが、自分だけが感じられる喜びにひた向きに向かっていく。それでいて相手が子供だろうが、負けた時は素直に負けを認める甘利田の姿はすごく素晴らしいなと思います。

――最後に今作品のみどころを教えてください。

今の時代だからこそ見ていただきたい、人間臭くて生きることってこんなに楽しくて素晴らしいんだと思っていただける作品です。すべての方に楽しんでいただけるエンターテインメントを目指して作りましたので、誰でも誰とでも楽しめる作品になっています。ぜひお楽しみください。

©2023「おいしい給食」製作委員会

【ドラマ「おいしい給食 season3」】
2023年10月よりテレビ神奈川、TOKYO MX、BS12 トゥエルビほかにて順次放送予定。1980年代の、中学校を舞台とした、笑って泣ける学園食育エンターテインメント。1980年代の中学校を舞台に、食欲をそそる給食バトルと共に、甘利田と彼を取り巻く子どもたち、大人たちのさまざまな人生模様が描かれる。

昨年公開された『劇場版 おいしい給食 卒業』のラストでは、甘利田が函館への転勤が決まり、給食のライバルだったゴウとの別れで幕を閉じた。今回の新シリーズの舞台は函館。北の地オリジナルの献立や食材に囲まれて、給食をこよなく愛する甘利田の新たなる給食道の幕開けになる。

写真:©entax

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