ジャニーズ問題 報道は本質論に立ち返れ

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・ジャニー喜多川の未成年者に対する性的虐待はNHK局内でも。

・最近の報道は「性犯罪再発防止」と「被害者救済」という本質論から逸脱。

・テレビはなぜジャニー喜多川の性的虐待を看過してきたのか、第3者による検証が必要。

NHKの10月9日の「ニュース7」で、20年ほど前、音楽番組への出演を希望してダンスの練習に参加した男性が、ジャニー喜多川から、NHK局内のトイレで複数回、性的虐待に遭ったと証言していた、とのニュースが流れた。

ジャニー喜多川は、芸能界デビューを夢見て応募してきた子供達の中から目星をつけ、好みの子をNHKのスタジオでのダンスレッスンに呼び、その後、自宅マンションに泊まらせ淫行に走っていたことは、元Jr.が証言しているが、NHKの局内がそうした犯罪の場になっていたことは衝撃だ。

改めてこの前代未聞の性犯罪事件の異常さと深刻さを思い知ることになった。

一方で、昨今の報道ぶりは残念だ。

2回目の記者会見でNGリストを作成した危機管理コンサルティング会社の不手際や、質問は「1社1問、更問い禁止」などとしたジャニーズ事務所の傲慢さ、不規則発言を繰り返す一部記者に対する批判など、本筋と大きくかけはなれた問題に議論が拡散しているからだ。

本来議論すべきは、「権力を笠に着て未成年者に性的虐待を行うという卑劣な犯罪をどうしたら防ぐことができるのか」、そして、「被害に遭った人の救済はどうあるべきか」の2点だろう。

ジャニーズ事務所のタレントに依存し、利益を享受してきたメディアは、長年のジャニー喜多川による未成年者に対する性的虐待を看過してきたという意味において、その責任を厳しく問う世論が存在するにもかかわらず、「事務所の対応を見守る」などという他人事のような対応に終始している。そこに当事者意識は全く感じられない。

とりわけ、テレビ局はNHKとTBSがそれぞれ検証番組をオンエアしたが、局内のヒアリングに基づく検証では不十分だとの見方も強い。

こうした社会の厳しい批判に答えるためには、第3者による検証が必要なのではないか。

ジャニー喜多川のセクハラ問題を報じた「週刊文春」に対し、事務所側が起こした名誉毀損訴訟で、記事の重要部分を真実と認定した2003年の高裁判決、その判決が確定した2004年の最高裁決定を報じなかったとしたら、なぜ報じなかったのか。その時、社内でどのような意志決定がなされたのかなどを明確にすべきだろう。

(了)

トップ写真:看板の掛け替え中のジャニーズ事務所(2023年10月6日東京都港区)ⒸJapan In-depth編集部

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