中原めいこもアニソンに挑戦【ダーティペア】主題歌「ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレット」  ちょっぴり刺激的なキャラクター「ダーティペア」の主題歌を歌う中原めいこ!

“アキバ系” アーティストが紅白に初出場

紅白歌合戦に “アキバ系” なる枠が出現し、3組のアーティストが初出場したのが2007年。その時の出場アーティストは “しょこたん” こと中川翔子、秋葉原に専用劇場を持つAKB48、“グラビア界の黒船” リア・ディゾンだった。まだ当時は、アキバ系やヲタクというのは現在ほど市民権を得ておらず、のちにAKBが国民的アイドルになるとは多くの人は思っていなかったはずだ。

これまでの人生でアニメやゲームに熱中したことのない自分が、ヲタク系カルチャーへの印象が変わったのは、2011年の年末に観た中川翔子のコンサートがきっかけだった。会場につめかけたファンはオシャレな若者が多く、中には完ぺきなコスプレをしている人もいた。ヲタ芸というものを間近で見たのも初めてだったし、それまで勝手に抱いていたヲタクのイメージはそこにはなかったのである。自分が青春時代を過ごした80年代にヲタクと呼ばれていた人々とはかなり印象が違っていたので、ちょっとしたカルチャーショックを受けたのを憶えている。

アニソン旋風のきっかけ、杏里「CAT’S EYE」

“アニソン” という呼ばれ方が一般的になったのはいつ頃だったのか記憶は定かではないが、自分が幼少期を過ごした1970年代はテレビマンガと呼んでいたし、主題歌やエンディングはアニメ専門の歌手が歌っていた。なので誰でも知っているテレビマンガの主題歌が、ヒットチャートをにぎわすという現象はほとんど起きていなかったはずである。

そんなアニソンに新風を巻き起こしたのは1983年に杏里が歌った「CAT’S EYE」がきっかけだろう。この曲で杏里は初のオリコン1位を獲得し一躍有名になるわけだが、最初はアニソンを歌うことに若干抵抗があったそうだ。当時はいわゆる歌謡曲、ニューミュージックのアーティストはアニソンに対して少なからず偏見のようなものを持っていたはずだし、ましてや杏里は車やサーフィンが好きな大学生から支持を受けていたアーティストだ。

岩崎良美がアニメ『タッチ』の主題歌「タッチ」をヒットさせたのが1985年、斉藤由貴が『めぞん一刻』の主題歌「悲しみよこんにちは」をヒットさせたのが1986年。つまり杏里の成功のおかげで、その後多くのアーティストがアニソンをヒットさせ、それらの曲は令和になってもスタンダードナンバーとして愛されているのである。

アニメ「ダーティペア」の主題歌に挑戦した中原めいこ

1982年にデビューし、オシャレな大学生を中心に支持されたのが中原めいこだ。彼女はポスト・ユーミンと呼ばれ、1984年にカネボウ化粧品のCMソング「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」を大ヒットさせている。どちらかというとリゾートソングを歌うイメージが強かった中原めいこも、1985年にアニメの主題歌に挑戦している。1985年7月〜12月まで放送された日本サンライズ制作のアニメ『ダーティペア』の主題歌がそれである。

この作品は高千穂遙によるSF小説シリーズ『ダーティペア』を原作としたアニメで、22世紀の銀河系宇宙が舞台となっている。犯罪トラブルコンサルタント “ラブリーエンゼル ”、別名 “ダーティペア” こと、ケイとユリが活躍するスペースオペラである(スペースオペラとはSFの中の宇宙活劇の意)。ちなみにサンライズのYouTubeチャンネルで現在『ダーティペア』を見ることができるのだが、約40年前のアニメとは思えないクオリティの高さだ。当時は肌を多く露出させた主人公のアニメはとても珍しく、10代の青年にはちょっぴり刺激的なキャラクターだったかもしれない。

そしてこの『ダーティペア』の主題歌になったのが1985年12月21日に発売された中原めいこの9枚目のシングル「ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレット」だ。初のアニメの主題歌になったこの曲は、ケイとユリのキャラクターに寄せたのか、それまでの彼女の曲にはなかったロックテイストあふれるサウンドで、ボーカルスタイルもそれまでになかったアニメチックな雰囲気であった。アニメの主題歌ではあるが、大人の恋の駆け引きをロシアン・ルーレットというゲームに落とし込み、自身のポップスに昇華しているテクニックはさすが中原めいこだ。

さらにエンディングにも彼女の楽曲「宇宙恋愛(スペース・ファンタジー)」が起用されている。むしろこちらの曲のほうが、アニメや小説のイメージに近いかもしれないが、この曲は、同年の5月22日に発売されたアルバム『CHAKI CHAKI CLUB』に収録されていた既発曲だったので、アニメの雰囲気に合っていたのはもしかしたら偶然だったかもしれない。

オリコン最高位13位をマークした「ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレット」

主題歌とエンディングに起用された「ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレット / 宇宙恋愛(スペース・ファンタジー)」はオリコン最高位13位をマークするヒットになり、中原めいこの代表曲と呼べる1曲になった。同曲は翌1986年3月20日に発売されたアルバム『MOODS』にも収録されたが、チャイニーズ風なアレンジで、シングルとはひと味違うので是非聴き比べてみていただきたい。

中原めいこは「歌いやすく覚えやすいポップス」をモットーに楽曲を制作していて、曲によって色彩を変えるプリズムのようなサウンドが最大の魅力であった。サンバ、ボサノバ、ラテン、バラード、ディスコなど、様々なサウンドでリスナーをワクワクとした気分にさせてくれたものだ。近年のシティポップブームで彼女を知った若いリスナーも多いと思うが、アニソンから知ったリスナーも少なからず存在するはずだ。そんな中原めいこは1988年にアニメ主題歌「鏡の中のアクトレス」もヒットさせている。この曲も人気アニメの主題歌なので、こちらに関してはまた別の機会にということで。

カタリベ: 長井英治

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