「傑出した経営者を輩出」Dual Bridge Capital 伊東駿代表パートナーに戦略を聞いた

伊東駿Dual Bridge Capital代表パートナー

Dual Bridge Capital(デュアル ブリッジ キャピタル、東京都渋谷区)は2023年4月に、スタートアップへの投資を目的に、プライベートエクイティファンド(投資家から集めた資金で企業の未公開株を取得し、当該企業の価値を高めたうえで株式を売却するファンド)のミダスキャピタル(東京都港区)から出資を受け、ファンド事業を展開する会社としてスタートした。

すでに2社への投資を完了しており、10月4日にファンドサイズを30億円に拡大、さらに2024年4月には75億円に引き上げる計画だ。どのようなスタートアップに投資をし、どのように成長を支援するのか。同社の伊東駿代表パートナーに戦略をお聞きした。

二つの罠に橋をかける

-スタートアップに投資をするとのことですが、どのような戦略をお持ちですか。

Dual Bridge Capitalは、これまで我々が長くスタートアップ業界と関わる中で、起業家、挑戦者の方々が陥りがちな二つの罠に対して架け橋をかけていきたいという思いを込めて、このDual Bridge Capitalという名前を付けています。

二つの罠というのは、一つ目が創業初期の「魔の川」のことで、もう一つがIPO(株式新規公開)前後の「死の谷」のことです。

「魔の川」に関しては、どれだけいいチームであっても、正しい事業領域の選定ができずに伸び悩む会社をこれまで数多く見てきました。またどれだけ正しい事業領域の選定をしたとしても適切なチームの組成に苦労し、伸び悩む会社も数多く見てきました。

そこに対して我々は起業家とともに正しい事業領域の選定と、適切なチーム作りを行い、フォローアップすることで大きな会社を作っていきたいと思っています。

もう一つはIPO前後の「死の谷」です。日本は非常にIPOしやすいマーケットになっていますが、IPOをした後、伸び悩む会社が数多くあります。このIPOをした後、伸び悩む会社はIPOをする前にしっかりと準備をすることで、伸び悩みを改善できると考えています。我々がIPOの前に株主になることで、IPO後の世界に向けてさまざまな支援をさせていただき、この「死の谷」を渡っていく会社を作りたいと思っています。

-ファンドによって支援の仕方はいろいろですが、御社はどういったところが特徴ですか。

Dual Bridge Capitalはミダスキャピタルと共同で立ち上げており、ミダスキャピタルがこれまで培ってきた有形、無形の資産をフル活用できるのが最大の特徴です。

-具体的にはどのような資産なのでしょうか。

ミダスキャピタルは経営者が集まってできたファンドでして、1000億円以上の上場企業を経営したことのあるメンバーが数多く揃っています。そうした方々から経営上の知見や、さまざまな支援をいただけます。

もう一つがリファラルの採用プール(紹介採用人材のデータベース)です。現在2000人ほどの人材が登録されています。投資先の採用支援を、このリファラルプールを使ってできるというのが我々の特徴になっています。

-リファラルプールとはどういうものなのですか。

リファラルとは紹介とか推薦という意味で、ミダスキャピタルの関係者の方々が、自分の身の回りにいる傑出した人材を紹介し合う形で、このリファラルのプールを作っています。例えば前職で一緒に働いたことがある優秀な人たちを登録しています。この誰かがつながっている人材の集まりをリファラルプールといいます。このプールを活用して、我々の投資先がCFO(最高財務責任者)を採用したいといった場合は、CFO経験のある方をピックアップして、投資先に紹介します。


投資した会社を良くする

-御社自体の成長戦略をお聞かせ下さい。

1号ファンドは最大75億円にまで拡大することに取り組んでいきます。その75億円ができたタイミングでの組織構成としては、今の5人体制から6人から8人の体制にしたいと考えています。2号ファンドについては2025年末から2026年の初めあたりから動き始めようと考えております。

-投資先の件数に目標数字はありますか。

75億円のファンドサイズで、投資件数としては20件から30件ほどを想定しています。そのため、1社に対してある程度、追加投資の枠を設けながら大きな会社を作っていこうと思っています。シード・アーリーステージにおいては、初回投資では約1000万円から最大3億円ほどまでを投資する予定で、それに加えて4億円ほどの追加投資枠を持っており、1社に対して最大で約7億円まで投資を実行していく計画です。

-ファンドを目指す人に対してアドバイスはございませんか。

Dual Bridge Capitalは、いい会社に投資をするだけではなく、投資した会社を良くしていくことを基本にしています。まずは汗をかくことで、自分たちが成功の変数になることを重要視しています。我が社としては、スタートアップに興味関心があり、加えて世代や産業を代表する傑出した経営者を輩出していくというミッションに共感していただける方を募集したいと思っています。

【伊東駿氏】
2013年、フューチャーベンチャーキャピタルに入社
2016年、ニッセイ・キャピタルに入社
2022年、ニッセイ・キャピタル投資部長
2023年、Dual Bridge Capitalを設立、代表パートナーに就任
慶應義塾大学院修了。1988年8月生まれ、静岡県出身

文:M&A Online

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