長崎市内で夜にスイーツを提供する店が、ひそかなブームを呼んでいる。なぜ甘い物は、そんな時間帯でも人々をとりこにするのか。魅惑の「夜スイーツ」の現場を巡ってみた。
◆大行列
8月下旬の土曜午後7時。三原1丁目、住宅が立ち並ぶ坂の中腹、道路沿いに「大行列」ができていた。5月にオープンした「Charm night Ice」は午後5時から9時まで営業するテイクアウト形式の「夜パフェ」専門店だ。店主の田口桃奈さん(18)が「外食や遊びの帰りに立ち寄れる場所を」と開業した。
夕食後に来店した10代女性会社員2人は「甘いものは別腹。ソフトクリームがさっぱりしていておいしい」と笑顔。20代男性会社員の客3人組は「夜は涼しいので、行列に並ぶのも苦にならない」とようやく手にしたパフェをほおばった。
若い来店客のほとんどは交流サイト(SNS)がきっかけという。店頭のフォトスポットで、見た目がかわいいパフェを撮影できる。「SNS映え」を意識した店づくりも人気の理由らしい。この日、行列が途切れることなく約300人が来店した。
◆特別感
「昼よりも夜の方が『一日のごほうび』として食べたくなるのでは」。西山4丁目の「夜のジェラート屋さん あっしむ」を経営する唐田博貴さん(35)はこう話す。
医師として働く傍ら、午後5時45分~9時15分に営業している。食券1枚購入すると、バニラやショコラなど約10種類から3種類を選べる。添えられた手作りのワッフルコーンが高級感を引き立てる。9月初旬の午後8時半、家族で訪れた10代女性は「コンビニとは違う特別感がある。一日の締めとごほうびにちょうどいい」とうれしそうだった。
◆セルフ
諏訪町の中通り商店街に深夜でもひときわ明るい店を見つけた。24時間年中無休の「47Dolce(ヨンナナドルチェ)」だ。7月にオープンし、東京で人気の缶に入ったショートケーキなど、全国各地のスイーツやご当地アイスなど約50種類をそろえる。
常駐の店員はおらずセルフレジで決済する。担当者は「生活スタイルはさまざま。無人なので他人の目を気にせずに買えるのがいいのでは」。客の6割は午後7時以降に集中しているという。8月末の同8時半、美容室帰りに立ち寄った50代女性は「明るくて入りやすい。次は保冷バッグを持参してたくさん買いたい」とほおを緩めた。
記者も取材終わりにそれぞれの店でぱくり。甘さが疲れた体に染みわたる。「後は寝るだけなのに」という背徳感もあるが、人々を引きつける理由が分かった気がした。「一日の終わりぐらい、自分を甘やかしてもいいじゃん」。これからさらにどんな夜スイーツに誘われるか楽しみだ。