カモ井加工紙mt factory tour vol.12(令和5年9月6日~9月20日開催)~ まるでテーマパーク!?普段は入れないマスキングテープの工場見学

倉敷では、お土産の定番となっているマスキングテープ。

美観地区にはマスキングテープ専門店のお店ができていたり、イベントの景品がマスキングテープだったり、マスキングテープが身近なものとなっています。

実は文具や雑貨向けのカラフルなマスキングテープが誕生したのは、2008年頃。

そのマスキングテープを開発したのが、カモ井加工紙株式会社です。

カモ井加工紙では、1年に1回本社への工場見学を実施し、お客様を招待しておもてなしをしています。

カモ井加工紙がなぜ文具向けのマスキングテープを作り、工場見学を始めたのか、そして工場見学のようすもあわせて紹介していきます。

mt(エムティー)とは?

mtとは「masking tape(マスキングテープ)」の略で、カモ井加工紙が作ったマスキングテープのブランド名です。

文具や雑貨向けのカラフルでデザイン性が豊かなマスキングテープは、気軽にちぎったり貼ったりでき、すぐに剥がせるので、今では日本だけではなく海外でも大人気となっています。

カモ井加工紙が2008年に初めて「mt」を製作したことで、マスキングテープ倉敷発祥の地といわれるようになりました。

mt工場見学とは?

2012年から始まった工場見学(mt factory tour)は、1年に1回特別にカモ井加工紙の工場に遊びに行けるツアーです。

2023年で通算12回目。

新型コロナウイルス感染症の影響で時期を延期したこともあったそうですが、毎年休むことなく開催を続けてきました。

工場見学に参加するためには、インターネットで応募をし、抽選で当たらなければ行くことができません。

筆者も毎年応募をしていますが、幸運にも今回は当選しましたので、友達3人で工場見学に行ってきました。

mt factory tour vol.12 ツアーに参加

1年に1回、2週間の期間限定で開催される「mt factory tour vol.12 ツアー」。

工場のなかでは、どんなイベントや見学ができるのでしょうか。

さっそく見ていきましょう。

バスに乗車

「mt」の工場見学は、倉敷駅前のカモ井パーキングからの送迎バス(無料)に乗車することから始まります。

送迎バスにもマスキングテープの装飾がほどこされていて、ぱっと目をひきます。

カラフルに装飾されたバスが、道路を走っているのを見たことがある人もいるかもしれません。

バスの装飾は、毎年ツアーのたびに張り替えているそうです。

白や黄色、青色のバスにマスキングテープ柄が装飾された3種類。

バスの色は選べませんが、行きと帰りで違う色のバスに乗車することもあるようです。

バスでの移動は20分ほどですが、バスのなかでは2022年にテレビで放映されたmt工場見学のDVDが流れていて、期待が膨らみます。

工場に到着

工場に到着すると、社員の皆さんが笑顔で出迎えてくれ、一人ひとりにノベルティグッズを配っていました。

ノベルティグッズは工場見学ツアーに当選し、実際に訪れると無料でもらえます。

こちらのノベルティグッズが欲しくて毎年応募している人たちもいるようです。

mt factory tour vol.12 ツアーのノベルティグッズ

2023年はカモ井加工紙100周年で、たくさんのグッズや非売品が入っていました。

丈夫そうな生地で作られたバッグは、毎年デザインが変わるそうです。

「mt」のかわいい柄にテンションが上がります。

工場見学「mt」ができるまで

最初に、普段は入れない「mt」を作っている第2工場の中を案内してもらいました。

Pepper(ペッパーくん)がお客様をお出迎え。

カモ井加工紙の社員が、「mt」ができるまでの工程を機械の前でていねいに説明してくれます。

工場内は通常、撮影禁止です。今回は特別に撮影許可をいただいています。

「mt」の機械の説明をしている社員

工場内は広々としていて明るく、機械にも「mt」が至るところに貼られ、かわいい柄に思わず立ち止まってしまうほどでした。

小さくてかわいい「mt」が作られていくようすは、新鮮で愛着がわきます。

第3攪拌(かくはん)工場(資料室)へ移動

続いて、カモ井加工紙の歴史が学べる資料室へ移動しました。

昔実際にリボンハイトリ紙を作っていた工場を、当時の建築そのままを使用し資料室にしているそうです。

リボンハイトリ紙とは、リボン状のデザインで、天井など高いところから吊り下げて、ハエや害虫の捕獲に使われていた粘着テープのこと

全国で開催のイベント時に出動するmt柄で装飾された車

1階には、「mt」で装飾された車や自転車が飾られていて、実際に乗って写真を撮れます。

奥へ進むと、2019年からおこなわれている「第5回mtアートコンテスト」で受賞された作品が展示されています。

すべて「mt」で創作されている作品だそうですが、個性的で素敵な作品ばかりでした。

2階には、カモ井加工紙の歴史を物語る商品やポスターなど展示物が陳列されています。

ハイトリ紙から、「mt」に至るまでの100年の歴史が学べます。

「mt」販売コーナー(mt shop)

次の施設は、mt shopです。

施設の半分を使って、歴代の「mt」のデザインをパネルで歴代順に並べてありました。

数えきれないほどのデザインに圧倒されます。

今までに作られたデザインの柄は1万点を超えるそうです。

隣の販売ブーズでは、カモ井加工紙創立100周年ということで、「百年百円市」を開催していました。

なんとデザインや柄に関係なくすべてが100円!

在庫限りのようで、すでに品切れの商品も。

筆者も取材を忘れて、目を凝らしながら好みのテープを探しました。

別のコーナーでは、2023年販売の商品や工場限定の「mt」が通常の値段で売られています。

ランキング形式で紹介しているので、人気の商品が一目でわかっていいですね。

筆者もついつい売り上げランキングナンバー1を購入してしまいました。

mt CASA shop

一番奥の施設では、文具以外のマスキングテープの品々が販売されていました。

キッチンマットやトイレマットに使えるふかふかのマスキングテープも販売されています。

周りの壁も「mt」で装飾され、家の中をイメージしたお部屋など、工場だとは思えないほど素敵な空間が広がっていました。

縁日&アウトレットコーナー

まだまだ散策は続きます。

こちらにはガチャガチャやつかみ取り、ひもくじなどまるで縁日を思わせる遊び心満載なブーズが並んでいました。

1,000円以上購入すればラッキーくじがひけたり、ガチャガチャのなかにはさらに当たりくじが入っていたりと、好奇心を掻き立てられる仕掛けがいっぱいです。

1,000円以上のグッズがたくさん入っているひもくじ
mtの端っこの部分「へた」は、1人一つ無料でもらえます

ハイトリ窯場

そして2023年初公開のリボンハイトリ窯場へ。

今はもう使われていませんが、昔はこちらのレンガでできた窯で粘着剤を煮出していました。

当時働いていたOB社員に話を聞くと、専用の機械で1人が毎日2,000個もリボンハイトリ紙を作っていたそうです。

ここだけ時代がタイムスリップしたようなノスタルジックな空間です。

社員食堂を開放

普段は、社員食堂として使われている場所を休憩室として開放しています。

うどんの「倉敷うどん ぶっかけ ふるいち」や、コーヒーショップ「BESSO COFFEE」が出店していて、多くのかたが利用していました。

奥ではワークショップも開催されていて、子どもだけではなく大人も楽しめそうです。

その他にも写真が撮れる映えスポットがあったり、等身大のかわいい子像の置物が置いてあったりと、まるでテーマパークのような工場見学で大満足な時間を過ごしました。

毎年、大人気でキャンセル待ちもでるほどの工場見学mt factory tour。

このイベントを企画しているカモ井加工紙株式会社 代表取締役社長 鴨井尚志かもい たかし)さんとコンシューマー部 部長 高塚新たかつか しん)さんにお話を伺いました。

インタビュー

毎年多くのmtファンの人々が、全国各地から訪れる工場見学mt factory tour

どのような想いがあって工場見学を始めるようになったのでしょうか。

カモ井加工紙株式会社 代表取締役社長 鴨井尚志かもい たかし)さんとコンシューマー部 部長 高塚新たかつか しん)さんにお話しを伺いました。

鴨井尚志さん(左)、高塚新さん(右)

「mt」ができたいきさつ

──ハイトリ紙の商品を作っていた会社が、どうして文具や雑貨向けのマスキングテープを作ろうと思ったのですか?

鴨井(敬称略)──

16・7年前に、東京の3人組の女性たちから手紙が届いたのがきっかけです。

「色彩豊かなマスキングテープを作ってほしい」という要望でした。

当時国内テープメーカーは8社あり、女性たちはすべての企業に提案をしたそうですが、断られ、受け入れたのは弊社だけでした。

最初に20色のマスキングテープを作り「mt」が誕生しました。

──そんなストーリーがあったのですね。まったく関係のない分野に進出するのは大変だと思うのですが、どうして受け入れようと思ったのですか。

鴨井──

ハイトリ紙のいきさつも、ハエがたくさんいて不衛生だから作ってほしいとのお客様の要望から始まっています。

そのあとのマイカーブームでは、車の塗装に必要なテープが必要なので生産しました。

輸送の箱が木箱から段ボールに変わったときも、梱包するのに釘からガムテープへの変更が不可欠になり、製造しました。

その時代で社会が必要としているものを、自分たちの粘着の技術で、製品なのか、サービスなのか、情報なのか、技術なのかを考え、解決していこうというスタイルでやっています。

だから「mt」に関しても、お客様からの要望を受け、粘着の技術お客様の願いを解決したのです。

──そうだったんですね。では、mtの工場見学を始めたのもお客様からの要望なのでしょうか。

高塚(敬称略)──

お客様からの「マスキングテープが生まれるところを見てみたい」との話があったことも、きっかけのひとつです。

それ以外にも、カモ井加工紙の歴史がつまった資料を多数保管しており、せっかくだからみなさんに見ていただく場所を作ろうと始めました。

工場見学への応募

──工場見学には、どれくらい応募があり、何人ぐらい訪れるのでしょうか。

高塚──

今回は、40,000人ぐらいの応募がありました。

工場見学は、1日1,000人で調整しています。

開催期間は2週間なので、14,000人のかたに毎年来ていただいています。

今年(2023年)は約3倍の倍率でした。

──すごい倍率ですね。どうしても行きたいと思うお客様もいらっしゃるのではありませんか。

鴨井──

おかげさまでmtには、熱心なファンがたくさんいてくださいます。

全国各地でおこなうイベントには行けるのに、倉敷で開催の工場見学だけは定員が決まっており、抽選に当たらないと行けないのは不公平感があるという声を聞き、スタンプラリー形式のアプリを5年前から導入しています。

イベントなどでスタンプを10個ためると、優先的に工場見学へのチケットを獲得できるような仕組みです。

──それはうれしいですね、開催次期は毎年決まっているのですか。

高塚──

以前は、お客様から子どもと一緒に行きたいとの声をうけ、春休みにかけて開催していました。

2022年からはJR西日本と岡山県観光連盟とコラボレーションし、「岡山デスティネーションキャンペーン」に参加しています。

その関係で2023年は9月に開催となりました。

岡山県に観光客を呼び込もうと、観光地と「mt」がコラボレーションし、夏限定で特別に彩られたmt空間を作っています。

2022年には牛窓・犬島地区を、2023年は蒜山エリアや高梁市の旧吹屋小学校を「mt」で装飾しました。

また2023年は初めてアイビースクエアの愛美赤煉瓦館で企画展とmtショップを期間限定でオープンさせ、多くのお客様に来ていただきました。

倉敷アイビースクエア内にある愛美赤煉瓦館での展示作品

サポートショップについて

──工場見学だけではなく、倉敷のショップでもオリジナルのmtがもらえるのですね。

鴨井──

倉敷美観地区を中心に今回のfactory tourに賛同いただいたお店で、各ショップの条件をクリアするとお店オリジナルのマスキングテープをプレゼントしています。

工場見学を訪れた人々に、倉敷の街にも出かけてもらい、倉敷を楽しんでいただきたい。

そして、観光客が倉敷の観光地で飲食や買い物をしていただくことで、経済効果に結びついてほしいと願っています。

これからについて

──2023年はカモ井加工紙100周年でいろいろな企画をされたと思うのですが、来年の予定などは決まっていますか。

高塚──

工場見学の日程はまだ決まっていないですが、どこかで開催する予定にはしていますので楽しみにしていてください。

鴨井──

100年といっても実感はあまりありません。

先人たちのお陰でここまでこられたと思っていますので、これまで支えていただいたお客様やかかわってくださったかたがたに感謝をし、次の世代につなげていけるよう精進していきたいと思っています。

おわりに

アーティスト浅井祐介(あさいゆうすけ)さんのmtで描かれた壁画「100年の遠吠え/100年の眠り」

工場見学「mt factory tour vol.12 ツアー」は、普段は工場として使っている場所を提供し、工場で働いている社員が陳列をし、レジを担当し見学の説明をしていました。

お客様の希望を叶えるために、社員全員一丸となっておもてなしをしているのです。

そして観光客を魅了するだけではなく、地域経済にも貢献し、地元の人々みんなが笑顔になって倉敷を盛り上げていこうという想いであふれていました。

たくさんのかわいい柄が次々と登場し、多くの人から愛されているカモ井加工紙の「mt」は、これからもどんどん新しい展開をしていくことでしょう。

「mtの街倉敷」といわれる日もそう遠くないかもしれませんね。

1年に1回倉敷の本社で開催される工場見学は、全国に毎年楽しみに待っている多くのファンがいます。

筆者もそのうちの一人です。

2024年は、いつどんな形で工場見学のイベントが開催されるのか、楽しみに待ちましょう。

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