「ゼロゼロ融資」利用後の倒産 2023年度上半期は333件 2020年からの累計は1,077件に達する

~ 2023年度上半期(4-9月)「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況 ~

2023年度上半期(4-9月)に発生した、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を利用した後の倒産は333件(前年同期比44.1%増)だった。5月から5カ月連続で50件超の高水準で推移している。
初めて倒産が確認された2020年7月からの累計は、1,077件に達した。
ゼロゼロ融資は、中小・零細企業の資金繰り支援として倒産の抑制に大きな効果を見せた。しかし、副作用として過剰債務の企業が増加した。民間金融機関の返済開始がピークを迎えるなか、業績回復が遅れた企業を中心に返済原資の捻出ができず、倒産や事業継続を諦める企業の増加が懸念される。

2023年度上半期の産業別は、最多はサービス業他の114件(前年同期比72.7%増)で、全体の約3分の1(構成比34.2%)を占めた。業種別では、飲食店の36件が最多で、コロナ関連支援の効果がなくなり、物価高や人手不足が追い打ちをかけ倒産に追い込まれたとみられる。

負債1億円未満が177件(前年同期比77.0%増、構成比53.1%)、従業員数10人未満が255件(同70.0%増、同76.5%)と大幅に増加し、小・零細規模の倒産が中心だった。業績不振に加え、価格交渉力が弱く、物価や人件費の上昇を商品・サービスの価格に転嫁しにくい小・零細企業の息切れ倒産の増加が鮮明になった。

コロナ禍からの業績回復が遅れ、ゼロゼロ融資の返済原資の捻出もままならない小・零細企業が多い。全国信用保証協会の保証実績では、代位弁済件数は2021年9月以降、24カ月連続で前年同月を上回り、2023年1-8月累計は2万6,353件を数える。資金繰りに余裕のない企業を表しており、同期間の倒産件数5,560件の4.7倍に達する。代位弁済は倒産の先行指標となるだけに、今後も予断を許さない状況が続くとみられる。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2023年度上半期の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は333件、前年同期の1.4倍

2023年度上半期(4-9月)の「ゼロゼロ融資」を利用後の倒産は、333件(前年同期比44.1%増)だった。
ここ1年間の倒産を四半期ごとにみると、2022年10-12月期151件→2023年1-3月期159件→4-6月期163件→7-9月期170件と、増勢が続いている。
負債総額は、768億3,700万円(前年同期比1.2%増)で、前年同期(758億8,700万円)より微増にとどまった。平均負債額は2億3,000万円で、前年同期(3億2,800万円)を9,800万円下回り、小規模化の様相をみせている。

【産業別】サービス業他が3分の1を占める

産業別では、サービス業他が114件(前年同期比72.7%増)で最多、全体の3分の1(構成比34.2%)を占めた。増加率も2番目に高い。
以下、建設業67件(前年同期比39.5%増)、製造業49件(同40.0%増)、卸売業45件(同21.6%増)、小売業24件(同26.3%増)、運輸業15件(同11.7%減)、情報通信業12件(同140.0%増)、不動産業4件(同33.3%増)、農・林・漁・鉱業3件(前年同期ゼロ)。金融・保険業(同1件)を除く9産業で発生した。
増減率では、金融・保険業と運輸業を除いた8産業で、前年同期より増加した。

【業種別】飲食店が前年同期の1.5倍

業種分類別(中分類)では、「飲食店」が36件で最多、前年同期(23件)の1.5倍だった。材料や光熱費の高騰、人手不足が重なり、先行きの不透明さがうかがえる。飲食関連では、「飲食料品卸売業」も15件で4番目に多かった。
2番目に件数が多かったのは「総合工事業」34件で、「職別工事業」も22件で3番目に続く。資材価格や外注費の高騰、人手不足に伴う工期遅れが資金繰りの悪化を加速させている。

【形態別】破産が9割を占める

形態別の最多は、破産が301件(前年同期比40.0%増)で、全体の9割(構成比90.3%)を占めた。特別清算7件(前年同期2件)と合わせた消滅型倒産は308件に達した。
一方、再建型倒産では、民事再生法が2件(同4件)にとどまり、会社更生法は前年同期と同様に発生がなかった。
このほか、取引停止処分が22件(同10件)、内整理が1件(同ゼロ)。

【従業員数別】5人未満が過半数

従業員数別の最多は、5人未満の176件(前年同期比83.3%増)で、過半数(構成比52.8%)を占めた。5人以上10人未満79件(前年同期比46.2%増)と合わせた、10人未満の小規模倒産は255件で、7割超(構成比76.5%)を占めた。
一方で、20人以上50人未満は23件(同11.5%減)、50人以上300人未満は6件(同45.4%減)にとどまり、小規模化が一段と進んだ。

【地区別】9地区のうち、8地区で増加

地区別では、最多は関東の144件(前年同期比65.5%増)。次いで、九州60件(同15.3%増)、近畿29件(同38.0%増)が続く。
9地区全てで発生し、東北(同10.7%減)を除いた8地区で増加した。このうち、前年同期に最少だった中国(同850.0%増)と、2番目に少なかった四国(同266.6%増)の増加が際立った。幅広い業種の中小・零細企業で行き詰まりをみせた。
都道府県別では、東京都が81件で最多。以下、福岡県36件、埼玉県24件、大阪府17件、北海道15件、群馬県と神奈川県、愛知県、広島県が各11件で続く。

© 株式会社東京商工リサーチ