年度上半期 負債1,000万円未満の倒産227件 3年ぶりに増加、5月から前年同月を上回る

~ 2023年度上半期(4-9月)「負債1,000万円未満」倒産状況 ~

2023年度上半期(4-9月)の負債1,000万円未満の企業倒産は、227件(前年同期比16.4%増)だった。5月から5カ月連続で前年同月を上回り、年度上半期では2020年度同期以来、3年ぶりに増加した。
企業倒産は負債1,000万円未満だけでなく、同1,000万円以上(同37.6%増)も増加し、企業規模を問わず増勢を強めている。 「新型コロナ」関連倒産は、66件(前年同期61件)発生した。

産業別は、最多がサービス業他の89件(前年同期比2.1%減)。次いで、建設業40件(同6.9%減)、小売業35件(同75.0%増)と続く。
原因別は、販売不振が174件(前年同期比29.8%増、構成比76.6%)で、コロナ禍からの業績回復が進まない小・零細企業の苦境を示している。
資本金別は、1千万円未満(個人企業他を含む)が211件(前年同期比13.4%増)で、9割以上(92.9%)を占めた。
形態別は、消滅型の「破産」が219件(前年同期比14.6%増)で、全体の96.4%を占めた。

負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業がほとんどで、経営再建のための資金調達だけでなく、人的リソースも余力がなく、過剰債務を抱えて事業継続を諦める傾向が強い。

「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」の返済がピークを迎えているが、生産性が低く返済が困難な小・零細企業は少なくない。さらに、経済活動が本格化するなかで、物価高による仕入コストの上昇、人材確保のための人件費アップなどで、事業規模に関わらず資金負担は増している。業績回復が遅れ、過剰債務の解消も見込めないなか、企業倒産は引き続き緩やかに増勢をたどる可能性が高い。

※本調査は、2023年度(4-9月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


年度上半期の倒産227件、3年ぶりに前年同期を上回る

2023年度上半期(4-9月期)の負債1,000万円未満の倒産は227件(前年同期比16.4%増)で、3年ぶりに前年同期を上回った。2023年度上半期は、負債1,000万円未満だけでなく、同1,000万円以上も4,324件(同37.6%増)と増加している。事業規模を問わず、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ)融資」の返済本格化や物価高、人件費上昇などのコスト負担が重く、事業継続に大きな影響を及ぼしている。
2020年度上半期は、コロナ禍で急激に市場が縮小し、355件と2009年以降で最多を記録した。その後、コロナ関連の資金繰り支援が奏功し、2022年度同期は195件まで減少した。ここにきて、支援効果も薄れ、円安や物価高なども加わり倒産は増勢に転じ、2023年度上半期は5月から5カ月連続で前年同月を上回って推移している。

【産業別】10産業のうち、6産業で前年同期を上回る

産業別では、最多はサービス業他の89件(前年同期比2.1%減)で、年度上半期では3年連続で前年同期を下回った。構成比は39.2%(前年同期46.6%)だった。
このほか、農・林・漁・鉱業が3件(前年同期比40.0%減)で2年連続、建設業が40件(同6.9%減)で2年ぶりに、それぞれ前年同期を下回った。
一方、製造業9件(同50.0%増)と卸売業16件(同45.4%増)、運輸業11件(同1000.0%増)が3年ぶり、小売業が35件(同75.0%増)で2年ぶり、情報通信業が14件(同40.0%増)で2年連続で、それぞれ前年同期を上回った。金融・保険業が2件で、2年ぶりに発生した。
また、不動産業は、前年同期と同件数の8件だった。

業種別では、受託開発ソフトウェア業8件(前年同期7件)、経営コンサルタント業(同4件)とあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所(同3件)が各7件、一般電気工事業6件(同3件)、一般貨物自動車運送業(同1件)と労働者派遣業(同4件)が各5件、貨物軽自動車運送業(同ゼロ)と無店舗小売業(同1件)、不動産代理業・仲介業(同3件)、バー,キャバレー,ナイトクラブ(同3件)、喫茶店(同2件)が各4件などで、前年同期を上回った。

【形態別】消滅型の破産が9割超

形態別では、最多は「破産」の219件(前年同期比14.6%増)で、3年ぶりに前年同期を上回った。構成比は96.4%で、前年同期の97.9%を1.5ポイント下回った。
このほか、特別清算は3件(同200.0%増)で、2年ぶりに前年同期を上回った。消滅型の「破産」と「特別清算」の合計は222件(前年同期比15.6%増)で全体の97.7%を占めた。
一方、再建型の「民事再生法」は前年同期と同件数の1件だった。
また、「取引停止処分」は4件(前年同期比100.0%増)で、2年連続で前年同期を上回った。「会社更生法」は、2009年度上半期以降、15年間発生がない。
負債1,000万円未満の倒産は、ほとんどが小・零細企業で、経営再建に向けたリソースが乏しく、ほとんどの企業が破産を選択している。

【原因別】販売不振が7割超

原因別は、最多は「販売不振」の174件(前年同期比29.8%増)で、年度上半期では3年ぶりに前年同期を上回った。構成比は76.6%(前年同期68.7%)だった。
このほか、「他社倒産の余波」20件(前年同期比25.0%増)、代表者の病気や死亡を含む「その他」が11件(同22.2%増)で、それぞれ3年ぶりに前年同期を上回った。「信用性低下」は2件で、2年ぶりに発生した。
一方、「事業上の失敗」9件(同40.0%減)と「運転資金の欠乏」3件(同62.5%減)、「既往のシワ寄せ」6件(同33.3%減)が2年ぶり、「事業外の失敗」が2件(同33.3%減)で3年ぶりに、それぞれ前年同期を下回った。
販売不振から抜け出せず、事業の先行きを見通せないケースが多い。

【資本金別】1千万円未満が9割超

資本金別では、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が211件(前年同期比13.4%増)で、3年ぶりに前年同期を上回った。構成比は92.9%(前年同期95.3%)で、年度上半期では5年連続で90%台だった。
内訳は、「個人企業他」が75件(前年同期比25.0%増)、「1百万円以上5百万円未満」が71件(同9.2%増)、「1百万円未満」が41件(同2.5%増)、「5百万円以上1千万円未満」が24件(同14.2%増)。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が16件(同77.7%増)。また、「5千万円以上1億円未満」が5年連続、「1億円以上」が2009年以降の15年間では、それぞれ発生がなかった。

© 株式会社東京商工リサーチ