NHK「きょうの料理」がテレビ料理番組の最長放送としてギネス認定!

NHKで放送中の「きょうの料理」(総合=金曜午後0:20、Eテレ=月・火曜午後9:00)。1957年11月にスタートし、これまでに計4万6600種類の料理のレシピを紹介し続けた同番組は、昨年65周年を迎えた。そして、このたび、テレビ料理番組の最長放送としてギネス世界記録に認定。認定証の贈呈式がNHK内で行われ、20年以上番組の司会を続ける後藤繁榮アナウンサーと、番組で調理助手を続けて35年間番組を支え続けている栄養士・神戸良子氏、30年間チーフプロデューサーとして番組を担当している矢内真由美氏が出席した。

長年司会を務める後藤アナは、番組の歴史を振り返り「『きょうの料理』が始まったのは私が小学1年生の時でした。記念すべき第1回の放送を調べてみたら、当時は(毎月の1回目の放送では)料理の紹介はしておらず、栄養士の近藤とし子さんが『食は命』というテーマのお話をしていました。当時の国民栄養調査によると4人に1人が栄養不足、そんな時代背景で番組が生まれました。ですから、おいしいものを皆さんに紹介すると同時に、健康に役立つ料理を大切に放送していました。私の母と姉も番組の大ファンだったおかげで、私は元気に大きく育ったんだと思います。これも『きょうの料理』のおかげだなというふうに思っています。これからも、視聴者の皆さんに役立つ番組作りに関わっていきたいと思います」と、番組への思いと今後についても触れた。

番組を影で支える調理助手の神戸氏は、「長年にわたって調理助手をやっていますが、最初の頃は慣れなくて緊張しっぱなしで番組のテーマ曲が聞こえるとガチガチに固まってしまいました。そんな中、先輩たちに指導されて、番組の流れについて分かってきたのが2年ぐらい経った頃で、きちんと動けるようになるまで5年ぐらいかかりました。カメラに映っていないところで、モニターを確認しながらタイミングを見て料理を出すというのが難しくて、最初の頃は自分には向いていないのかなと葛藤していて、こんなに長く続けられるとは思っていませんでした。なので、35年も続けていたことは自分でも信じられず、番組の歴史の半分以上に携われたとうれしく思います。今後も後輩の皆にも頑張ってもらって、番組がずっと続くようにと思っています。すでに亡くなられた先生方も多くいらっしゃいますが、そういった偉大な先生方に出会えたことは、自分にとっての財産だと思います」と感慨深げに振り返った。

矢内氏は印象に残っている講師について、「私がまだ新人ディレクターとして、辰巳芳子さんの言葉の美しさに驚いたことがあります。『鍋のふたを着せる』や『塩をあてる』、そのような言葉遣いを聞いたことがありませんでした。本当に料理や調理道具、調味料にもちゃんと心を込めて向き合っているように感じて、料理はただ栄養を取れればいいというものではなく、心の栄養にもなる。ひいては食べる人への思いにつながり、文化になっていくというのを辰巳さんから感じて、食から大きな世界が開けるんじゃないかと感じました。それが『きょうの料理』をずっと続けていきたいと思ったきっかけになっています」と講師陣への敬意と、番組制作を長年続けてきた理由を述べた。

入社当時から「きょうの料理」の制作に携わり続ける矢内氏は、「1992年に入社して、語学番組や育児番組、そして『きょうの料理』と出合いました。そこから30年ずっと続けて来られたのも、ひとえに縁があったということになります。今回の朗報が届いた時はとにかく皆で驚きました。というのもNHKの番組の中で『きょうの料理』は5本の指に入るぐらい長寿番組だと言われてきましたが、まさか世界一長く放送している料理番組だとは誰も予想していなかったので、大きなご褒美をいただいたというふうに感じています。鬼籍に入られた講師の皆さんをはじめ、個性的な方たちが番組を支えてくださいました。今も活躍している講師の皆さんや料理を愛してくれる司会の皆さん、裏で支えてくれるディレクターや調理助手の皆さんなどたくさんの制作スタッフ、そして食卓で再現して家族の健康を支えてくれる視聴者や読者の皆さんが65年間支えてくださった。本当にありがとうございます」と、番組に関わるすべての人たちへ感謝の言葉を伝えた。

印象に残っている料理について質問されると、後藤アナは「土井善晴さんの塩むすびが印象に残っています。24分という尺を塩むすびだけで使うという回でしたが、まずは『おむすびってなんだろう』というところから始まり、土井先生は『真心です』とおっしゃっていました。真心をおむすびとして食べてもらうために、手の洗い方から、お米に水を浸水させ、程よく炊き上げる方法を教えていただいて、そして結ぶ時に中に空気が入るように作ると一番おいしくなると教わりました。その際に、土井先生が三角に、俵にむすんでいるうちに『(三角や俵の形に握る)ちょっと違うんじゃないかと思うんです』とおっしゃっていたのを覚えています」と、貴重な思い出を教えてくれた。

続けて、神戸氏も「城戸崎愛先生との撮影時にブランデーを使う機会があったんですけど、撮影の本番ではリハーサルの時より多めに入れてと言われ、少しだけ多めに使ったら、入れた途端に火が上がって責任を感じた記憶があります。ほかにも、平野レミさんのスープを盛り付けて出した時、スープがずっと揺れ続けて思わず笑いそうになったのを抑えるのが大変だったこともありました」と裏話を話した。

あらためて、今後の番組の目標を尋ねられると、矢内氏が「テレビとテキストの両方で社会の状況を反映したレシピを送り出していくというのを命題として、三つのことを意識しています。一つはジェンダー。女性だけでなく、男性や若い方、お年寄り、障害のある方など誰もが食に関われる番組ができたらいいなと思っています。二つ目にSDGsを考えています。食材を大切にして無駄にしない、作り置きをするけれども、捨てることなく活用ができる知識を番組として伝えていけたらと思います。そして、最後はデジタルへの展開です。今の時代はテレビや雑誌だけでなく、スマートフォンで気軽にレシピを見られるよう、例えばスーパーでこの食材を買えばこのレシピができるかなと、外で『きょうのレシピ』を見ていただけるように、あるいは制作側から公式ホームページやSNSなどで発信していきたいと思います。長く続く番組なので古くさいな、まだやっているのかと視聴者の皆さんに思われないよう、新しいことにどんどんチャレンジしていきたいです」と意気込みを新たにした。

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