「クラブ主導応援」で話題のクリアソン新宿。選手は批判の声をどう受け止めたのか。池谷友喜に聞いてみた

先日から大きな話題を集める存在となっている「クリアソン新宿」。

2021年に地域サッカーチャンピオンズリーグを勝ち抜いてJFLに昇格し、今年J3ライセンスを取得することになった。しかしながらクラブはまだ確固たるホームスタジアムを持っておらず、これは東京23区内という地域的な要素を踏まえた特例での許可であった。

さらにクリアソン新宿は8月24日に新しいクラブ主導の応援スタイルを発表。初めてスタジアムを訪れるファンにも平等な楽しみを提供したいとして、クラブと連携した応援によってスタジアムの雰囲気を作り上げるというプランだった。

クラブ主導の応援、そして特例でのライセンス。この2つの要素によってある意味「ヒール」のような存在となったクリアソン新宿。ただ、この2つはどちらも「ピッチ外のもの」。特に応援はプレーヤーを支えるもので、それを受ける立場の選手たち自身はどのように見ているのか。

かつてロアッソ熊本でプレーした経験を持ち、2021年に加入したクリアソン新宿で3年目を迎え、ビジネスマンと選手を両立し続けてきた池谷友喜選手に率直な思いを伺ってみた。

――Jリーグも経験し、クリアソン新宿で地域リーグからJFLを戦ってきた池谷選手から見て、「クラブ主導の応援スタイル」をどのように感じていますか?

応援というのは、どちらが悪くてどちらが良いというものではないと思っているんです。

もちろん僕が前に所属していたロアッソ熊本やカマタマーレ讃岐のときの応援ももちろん素晴らしいものでしたし、そしてクリアソンの応援も素晴らしいと感じています。

勝ち負けもすごく大事だということは前提に置きつつも、『サッカーの価値』というか、サッカーを通して豊かさをもっと体現し続けたいという思い、それを実現できる環境を作っていきたいという理念があるんです。

これが答えになっているのかどうかわからないですけど、良し悪しと言うよりは『これもあっていいよね』という思いがあります。

――今回クリアソン新宿が必要以上に悪い方向に伝えられたような雰囲気がありましたが、選手や現場の皆さんはどのような見方をされていましたか?

僕はそんなに世間体は気にしていないんですけど(笑)。

難しいところはあるんですけど、新しいことをやっていくとなったときにはそのような声があって当然だと思うんです。

そのような状況の中でも自分たちはそれを大事にしていくのか。本当にそれを体現したいと思っているのか。叶えたいと本気で思っているのか。なぜそのようなスタンドや応援を作りたいのか。そして、ひいてはどんなクラブを作りたいのか。

そのようなことがより明確になったと思います。皆さんに色々と言って頂いたからこそ、一回そこで立ち止まって『自分たちの体現したいものは何なんだ』とみんなで考えられているところです。

そういった意味では、今むしろ良い時を迎えていると思います。

――地域リーグからJFLに上がるときに池谷選手が「試されている」と言っていたのが印象的でした。まさにまたそのような時が来ている?

まさに試されているというところは強いかなと思います。今クリアソンはまさに3連敗という状況なんですけど、そういう時に『辞める』とか『諦める』のはすごく簡単なんですよね。

そのような状態になったときにこそ、自分たちが本当に何を成し遂げたいのか、何を体現したいのか、それをやり続けられるのか。それがすごく大事だと思うんです。

常に試されているというか、『問われている』というか。そういう状況だなと思っているんです。

――2020年の入れ替え戦で勝った後、「関東リーグでも大変だったのにJFLで戦ったらどうなるのかまだイメージが湧かない」と仰っていましたね。実際にそれを1年半経験してどうでした?

楽しいですね!クラブとしてもサッカーで上に行きたいという熱も高まってきています。

とはいえ自分はもちろんビジネスマンとしても働いているので、限られた時間でどのように結果を出していくのか、どうやって世の中に価値を届けていくのか。

そのような比重を模索しながらすごく楽しんでいますし、もっと突き詰めて、もっと良いものを届けていきたいなと思っています。

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クラブの選手全員が仕事を持ちながらプレーしているクリアソン新宿。そして、その多くがクラブを運営する株式会社Criacaoで勤務している。

その独特な構成もあってか、クラブが打ち出している応援のスタイルや状況に対しても「批判を受けたからこそ自分たちの理念に立ち返る機会になった」と考えているようだ。

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