クマに襲われ女性重傷 富山・栗山

女性がクマに襲われた住宅の庭=富山市栗山

 9日午前6時半ごろ、富山市栗山の民家の庭で、住人の女性(79)がクマに顔をひっかかれ、同市の富山県立中央病院に運ばれ、重傷を負った。命に別条はないとみられる。クマは現場から逃げたまま見つかっておらず、10日は現場周辺の小学校で安全対策を強化。9日現在で今年の県内の人身被害は3件(3人目)、出没件数は238件を数え、県は今年2度目となるツキノワグマ出没警報を発令し、緊急対策会議を開いて大量出没に厳戒態勢を敷いた。

 県や市などによると、女性の息子が「クマに襲われ、顔面から出血している」と119番通報した。女性は額の傷が深く、手術を受けて入院した。近隣住民によると、女性は自宅裏の軒下に倒れていた。そばには実を多く付けた柿の木が植えられていた。

 現場から約600メートル離れた同市安養寺でも9日、住民が寺院敷地内に入り込むクマを目撃した。目撃場所から約200メートル先の畑では、成獣とみられるクマの足跡が見つかった。

 人身被害と目撃の現場は同市南部の大沢野地区に近い郊外で、周辺には熊野小や市環境センターがある。

 熊野小は10日、保護者に登下校の送迎や見守りを依頼し、児童の安全対策を強化した。同じく現場に近い新保小は振り替え休日だったが、外出に気を付けるよう保護者に注意を促した。

 被害に遭った女性宅のある栗山では、住民から「怖い」「外を気軽に歩けない」と不安の声が上がった。女性の友人の青木朝子さん(79)は「先週、『柿がいっぱい実ったから勝手に取って食べて。クマが出るから取らんなん』と言っていた。こんな場所に出るなんて」と話し、女性のけがの具合を気にした。

 多発するクマの目撃に、40代男性は「だんだん山から市街地に近づいてきている。子どもの登下校が心配だ」と表情を曇らせた。

 県内ではこの2件のほか、8~10日にかけてクマの出没情報が相次いだ。富山市内では8日に八尾町諏訪町で足跡、9日に東黒牧の富山国際大付近で成獣1頭の目撃、10日に日尾、八尾町高橋、同町窪、同町下田池で柿の木に登った跡やふんが確認された。小矢部市安楽寺の小矢部トンネル付近では8日に幼獣1頭の目撃、南砺市では9日に立野原西で柿の木の爪痕やふん、才川七と大鋸屋で10日に計2頭の目撃があった。

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