飛べない昆虫ナナフシ、したたかに子孫繁栄 卵が鳥に食べられ、遠くでふ化 神大研究グループが発見

ナナフシを食べるヒヨドリ(撮影・加藤百錬末次健司教授提供)

 飛べない昆虫であるナナフシの全国的な遺伝構造を解析し、卵を鳥に食べられることで遠くまで分散させた痕跡を初めて見つけたと、神戸大大学院理学研究科の末次健司教授(35)らの研究グループが11日発表した。昆虫類ではほとんど例がなく、移動能力の乏しい生物の移動分散を考察する上で重要な発見で、同日、英科学誌の電子版に掲載された。

 研究グループは9年前から、植物が果実を鳥に食べさせ、種を排せつさせる方法で分布領域を広げることをヒントに、昆虫でも同様の現象が起きていないか調査してきた。5年前には、鳥に食べられたナナフシの卵の一部が生存状態で排せつされ、その後ふ化していたことを確認している。

 今回、ナナフシが分布する東北、関東、中部、近畿、中国、四国から67匹を採取し、3通りの方法で遺伝子型を解析。うちミトコンドリアの配列を調べる方法では、最大683キロ離れた場所で同一の配列が確認された。遺伝子的にかなり近い個体が、自力での移動が不可能な場所で別々に見つかったことになる。

 他の2通りの解析結果とも照らし合わせると、長距離分散は少なくとも数百年以上前から起こっており、鳥による分散の可能性が高いことが判明したという。末次教授は「ナナフシがしたたかに、たくましく子孫を残していることが分かり、研究者としても驚き。ナナフシ以外の昆虫でも同じ現象が起こっていないか調べたい」と話している。(勝浦美香)

© 株式会社神戸新聞社