【寄稿】ぱちんこの今後(WEB版)/POKKA吉田

本稿執筆は9月13日。この日は認証協の総会の日で、認証協が20年という節目を迎えたということもあって、大々的な懇親会を初めて開催した。業界団体としては、認証協の生みの親的存在の全日遊連、そしてユニット職域として関連の強いメーカー団体である日工組、日電協の3団体の理事長が執行部の主なメンバーとともに来賓として出席していた。

この手の懇親会の場合、来賓挨拶は主要業界団体のトップが担う。全日遊連阿部理事長、日工組榎本理事長、日電協小林理事長の順に来賓挨拶があり、そして乾杯となり懇親会がスタートした。

今年の6月の総会シーズンでは、日工組榎本理事長の来賓挨拶が私の中では強く印象に残っていた。大注目でスタートしたスマート遊技機について、スマスロは既に好調で結果が出ているが、スマパチの結果が出ていないということで、必ず進化して良い結果を出すべく日工組メーカーすべてが努力していることを強調していたわけだ。

認証協の総会後の懇親会の来賓挨拶で日工組榎本理事長は同じようなニュアンスのことを発言していた。それはもちろん偽りのない本音の発言だと思う。榎本理事長は来賓挨拶で原稿を読む姿は観たことがない。自分の言葉での発言に努めている方という認識だ。

ところで冒頭の9月13日。この日は京楽のスマパチ2機種目のSAOの初日から10日目である。初週の業績が好調だったこと、2週目に入っても好調を続けており、「仕置人のリベンジ成功となったか」という判断を業界関係者がしようかもう少し様子を見ようか、思案しているようなタイミングであった。

それは私も同じであり、認証協の総会会場の新橋の第一ホテル東京に16時の予定に合わせて拙宅を出るのではなく、都内の初日からの導入店舗で台数が多めの店を数店舗覗いてから16時までに総会会場に到着するようにした。そして覗いた3店舗すべてでSAOは満席。しかも1店舗は立ち見での待ちが2人、2店舗は立ち見での待ちが1人であり、これを見てリベンジなったと思えたことから、京楽の仲の良い人にLINEした。すると、まだ気を引き締めているという反応が返ってきて、そして総会が始まり、懇親会だった。

このため、懇親会の会場で日工組榎本理事長に挨拶した際、その流れを少しお話させていただいた。まだ京楽の榎本社長としては私がLINEした人と同じように気を引き締めているという印象だったが、私の気のせいかもしれないが表情が幾分やわらかだったように思う。また、他の来賓された方ともSAOについて少し話したが、ほぼすべての方がSAOは良い、という印象を持っているようだった。

遊技機の良し悪しは実際には10日で結論が出るはずもなく、長期稼働するかどうかは、長期間営業データが良い、ということが前提である。ただ、私はかなり長い間、スマート遊技機推進の論説をずっと発信してきたし、昨年はフォーラムにも登壇させていただいている。スマスロが初日からヴヴヴの話題で盛り上がったときも、スマスロ北斗が導入直後から大盛況だったときも純粋に喜んだ。そしてスマパチの大注目機だった仕置人が失敗に終わったときは純粋に残念だった。

6.5号機とスマスロが昨年登場し、ともに実績を積み上げて今はパチスロがホールの収益構造の中心となっている。一方、ぱちんこは規制強化ではなくむしろスマートも含めて緩和されているにもかかわらず市場が低迷しているのが現状だ。だからスマパチが打開してくれる、加えてP機もRe:ゼロや咆哮を超えるものがいくつも登場する、そういう市場推移によってPSどちらも良い市場にトレンド転換していく、というのが私の想定する良いシナリオである。そのシナリオの第一弾として注目されたのが仕置人。仕置人が失敗し、その第二弾として注目されたのがガンダムSEED。SEEDが失敗したことから、第三弾の、ぱちんこ市場の低迷からの脱却を担う旗手として注目されたのが、再び京楽からSAOということになったわけだ。

SAOの導入前までのスマパチの最高評価は慶次。慶次という機種そのものに何の罪もないが、これが最高評価だとスマパチ需要の喚起にはつながらない。SAOの結果や10月の新海物語の結果がいかに重要かは説明は不要であろう。

本誌が発行される頃にSAOの結論が業界で共有されているかもしれない。少なくとも初動10日のデータとしては、良いのは結論としてもいい。これがいつまで続くか、という話であるが、今回は京楽の販促のセンスもかなり向上しているというのが私見。また、SAOというぱちんこの演出等の作り方は従来の京楽にはなかったゲーム性思想のようにも思う。なにより、いろんな成功機種に共通していることだと思うが、企画開発設計におけるコンテンツ愛がはっきりと見えている。例えばエヴァシリーズ、まどマギシリーズ、北斗シリーズ、慶次シリーズ、牙狼シリーズ、ルパンシリーズ、と挙げればキリがないが、開発企画の担当者が「このコンテンツは嫌だ」と思って作られたようなものが人気となるわけがない。今、名前を出したものすべてにおいて、私は作り手側のコンテンツ愛を顕著に感じるものである。

私は今回直接見ていないが池袋では大都のSAOと京楽のSAOをテレコに導入している店がある。これは店も含めてコンテンツ愛を感じるものだろう。また、秋葉原に有名な強い店が数店舗あるわけだが、これらの店は内装デザインや店内BGM、販促POP系に至るまで店それぞれのセンスでコンテンツ愛を示している。というか、秋葉原という「コンテンツ愛の街」の店であり、初週にSAOのサイネージに引かれて白人数名が入っていったところを目撃したこともある。

ぱちんこの今後が、本誌発行後も、そして来年も、低迷改め反転攻勢の回復・成長トレンドとなっていることを本当に願っている。また、パチスロの好調さも維持し、市場設置台数や店舗数の減少を食い止めて欲しいとも思っている。私は店舗数はさほどどうでもいいという考え方であったが、ここまで減ると話は違う。今は地方に仕事で行ったときによくわかる。空港から中心部に向かうバスやタクシーの窓から目的地到着までにホールを一店舗も見かけないことも珍しくない。新幹線の駅の場合、駅周辺に一店舗もないところも珍しくないのだ。ぱちんこが庶民の娯楽の由縁は「どこにでもある」ことだと思っている。さすがにこれ以上店舗数が減るのは忍びない。なので、スマート遊技機専門店によってコンビニ的な出店が増え、ビジネスモデルとしても成立するような状況になることは業界全体にとっても好ましいことだと考えている。

そんなことを思いながら本稿を書いた。SAOがこのまま良い営業データを続けてロングランして、ぱちんこ市場が活性化しますように。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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