陶聖の技、功績しのぶ 板谷波山没後60年イベント 茨城・筑西

修復された板谷波山の香炉を紹介する一木努さん=筑西市丙

■修復の香炉も展示

茨城県筑西市出身の陶芸家で文化勲章受章者の板谷波山(1872~1963年)が10日、没後60年を迎えた。命日を前に波山をしのぼうと、トークショーが9日、筑西市丙のしもだて地域交流センター「アルテリオ」で開かれた。約100人が参加し、作品や生前の姿を映像で見ながら、繊細優美な技や、郷土の工芸美術の発展に貢献してきた功績を振り返った。

下館市(現筑西市)の歴史や文化遺産を次世代に継承する市民団体「時の会」が主催。同会は波山の誕生日の3月3日に毎年トークショーを開いている。「板谷波山60回忌 前夜の集い」と題し、昨年の生誕150年記念イベントに続く特別編として開いた。

会長の一木努さんが司会進行役を務めた。波山研究の第一人者として知られる学習院大の荒川正明教授がオンラインで参加したほか、波山の作品を修復したことがある美術古陶磁復元師の繭山浩司さんや、板谷波山記念館の学芸員、橋本空樹さんらが登壇。それぞれが好きな波山作品を写真で紹介しながら語り合った。

荒川教授は現在、米国ニューヨークで現地の学生などに日本の陶芸について教えているという。米国の美術館でも波山の作品が展示されていたことを紹介し、「板谷波山という名前も少しずつ知られてきている」と話した。

会場には繭山さんが修復した波山の香炉が展示。修復前の破片の写真も合わせて並べられ、来場者は写真と見比べながら香炉を観察していた。

後半では、茨城新聞社元社長の室伏勇さんが撮影した波山の写真が紹介された。亡くなる前年に撮影され、工房近くで猫を抱いている穏やかな表情や、作品に彫りを施す手元など、貴重な写真の数々に、来場者は感嘆の声を漏らしていた。

荒川教授は「美術の力は地域の人の心を和らげる。板谷波山という世界最高峰の陶芸家が下館にいたということが、皆さんの暮らしの糧になったらいい」と願った。一木さんは「この町の宝物を守るため、皆さんと協力していきたい」と話した。

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