自然の幸と個性の集う町、広尾町へ “ふるさとワーキングホリデイ”滞在記

北海道の広尾町には“ふるさとワーキングホリデー”という、地元の第一次産業に触れながら滞在する制度があります。今回は私、東京農業大学に通う大学2年生が広尾町の「菊地ファーム」にインターンした11日間の“広尾日和”をご紹介します。

はじめに

私は旅が大好きな東京農業大学に通う大学2年生です。長期休みを利用して、自分の全く知らなかった場所や人、食べ物、文化に触れたいと思ったときに魅力的に思えた「ふるさとワーキングホリデー」に参加しました。観光だけでは得ることのできない、そこに住む人たちの“日常”に関わることで、出会いと発見がたくさんありました。そして、その出会いや発見、経験は一生ものです。

神奈川県から来た大学生の私が「ふるさとワーキングホリデー」に参加した経験を多くの人に共有することによって、広尾町で関わってくださった方々への恩返しになればと思っています。

一次産業に触れる、広尾町の“ふるさとワーキングホリデー”

今回私がお世話になったのは、『牛を身近に感じてほしい』『広尾町にたくさんの人が来てほしい』という想いで牛乳の生産から6次化までを手掛ける「菊地ファーム」さん。主に加工品の製造補助や関東での催事に向けた準備や、穀物飼料の給餌や搾乳も体験しました。

搾乳は同じことの繰り返しだと思っていましたが、牛によって乳房の長さや向きがバラバラだし、搾乳が苦手な牛もいれば、しぶしぶやってくる牛も。菊地さんが「牛は人と似ている」と話していたのも納得です。

牛を育ててミルクを搾る。同じ繰り返しのように思える酪農だったけど、人と同じように1頭1 頭違っていて、変化の絶えない仕事という発見がありました。

また、広尾生まれ広尾育ちの漁師である保志さんには「昆布干し」を教えてもらいました。自分の身長よりも長い昆布を遠心力で広げながら干していく。昆布干しは漁師さんの仕事のひとつだけど農作業に似ていて不思議なギャップ。干した昆布はふわっと海のにおいがしました。

その他にも、十勝神社のお祭りに参加したり、道の駅や襟裳岬までドライブしたり、温泉に行ったり、鹿の角加工や料理教室など、広尾町の食や自然に関わるたくさんの経験をした充実の日々でした。なかなか入り込むのが難しい一次産業を体験することができる多様さが広尾町ふるさとワーキングホリデーの最大の魅力だと思いました。

滞在場所は、道内外の人が集う「シーサイドハウス」

滞在したのは、 広尾町農林課が管理するシェアハウスとコワーキングスペースが合わさった合宿所のような「シーサイドハウス」という施設。地域づくりに携わる人々や道外からのゲストなど、たくさんの人が集まっていました。

とてもありがたいことにレンタカーの貸し出しがあったため買い出しに自由に行くことができ、運転ができれば自由に動くことができて快適です。買い物は車で10分程度の場所にスーパーとドラッグストア、コンビニがありました。また、お風呂や洗濯機、キッチン、冷蔵庫、ドライヤーなど日常生活に必要なものが揃っています。

「水産人」や「生産者」とのカルチャーショックな出会い

昆布漁を学びにきた水産人(すいさんちゅ)カレッジの学生たちと滞在期間が被り、共同で自炊することとなりました。水産人カレッジは、東京海洋大学や北海道大学の学生などで構成された水産の情報を発信するインターカレッジです。さすが水産人!出会った6人中4人はmy釣竿・my仕掛け持参。スーパーに行く前に自分で釣るという選択肢が!

「8割釣れない」と聞いていたけど、結局サバが10匹ほど釣れました。手際よくさばかれたサバは大葉と梅肉のはさみ揚げに。わくわくするカルチャーショックでした。

釣りに行くことができない日は地元鮮魚店へ。 気づいたら両手じゃないと持てないようなおっきい鮭を買っていてまたまたびっくり。でもやっぱりパパっと捌けてしまう。すごい。そしてみんなで作ってみんなで食べるご飯はやっぱりおいしい。肉も魚も広尾産のBBQは最高でした。勤務先の菊地さんや昆布漁師の保志さん、猟師の中村さん達とBBQ。八角やシシャモといった広尾の海産物、広尾のジビエ、広尾の牛肉、生産現場が近いと「いただきます」の気持ちを改めて認識できた夕ご飯でした。

広い道、縦向きの信号、エアコンのない部屋、毎日流れる定時放送、広い空、晴れた日には星。家から出た瞬間に海。たくさんの牧場、たくさんの牛、ひょっこり現れる野生動物たち。生産現場が近くて大きい。思い出す風景はたくさんありますが、自分の出身地とは異なる環境は、なんでも発見・刺激になりました。ベイラウンジコーヒーで海鮮ランチや襟裳岬へのドライブやアザラシ鑑賞も最高でした。

出会いに溢れた11日間

飼料に昆布を使えないか研究中の地域おこし協力隊員。2拠点生活をしているライターさん。ピロロツーリズム協議会を発足して町づくりもしている酪農家。町を面白くしようと少年のようなまなざしの漁師さん。移住先を探して日本一周中の人。昆布漁を経験しに来た水産人カレッジの学生たち。大学生、町内外出身の社会人、移住した人、広尾生まれ広尾育ちの人、一次産業の町にこんなにも幅広いバックグラウンドの人が広尾町には集まっていました。

これだけ見ず知らずの大学生や社会人が入り込みやすい環境があるのも広尾町。すべての住民が同じ気持ちではないし、なかなか難しいところもあると聞いたけれど、実際に自分がこの町を訪れたことでここにしかない個性との出会いと発見があり、自身の人生が豊かになりました。

余談ですが、現在私は実家暮らしをしています。今後は県外への就職も視野に入れているのですが、地元から離れた場所で自炊して運転して洗濯して生活する経験はとても貴重なものとなりました。まだ帰りたくない。長いように思えた11日間の滞在も、まだまだ足りないくらいあっという間に過ぎていきました。広尾町の冬、林業も見てみたいな。また訪れたくなる環境と人に出会うことができました。

ライタープロフィール

ねぎま

旅と美味しいものが大好きな農学部に通う大学2年生。全国各地の農家さんにファームステイすることに夢中!

あわせてチェック!

© クリプトン・フューチャー・メディア株式会社