「持ちこたえると思ったが4時間越水し続ければ、もうだめ」堤防が切れた…身近な川にもある水害リスク【わたしの防災】

いまから、ちょうど4年前、長野県の千曲川が決壊し、新幹線の車両が水に浸かる災害を記憶されている方は多いと思います。被災した人にあらためて話を聞くと、わたしたちの身近な場所を流れる川にも同じようなリスクがあることが分かりました。

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<リンゴ農家 渡辺美佐さん>
「決壊した場所があの方向なのかな、ここから250mくらいの所なんですけれど」

長野市のリンゴ農家渡辺美佐さんです。渡辺さんは1ヘクタールの畑で約100本の木を育てています。

4年前の2019年10月13日、畑の近くを流れる千曲川が決壊し、渡辺さんが暮らす地区はすべての世帯が被災しました。

変わり果てた我が家。最盛期を前にしたリンゴも泥に覆われました。

<りんご農家 渡辺美佐さん>
「濁流と壊れた家屋がここにあったリンゴの木を全部なぎ倒して。泥が40cmぐらい堆積していました。ここは」

自宅や畑の泥出しに駆けつけてくれたのはボランティア。半年かかったものの春の農作業の開始に間に合い、翌年は残った木に花が咲き立派なリンゴが実りました。

しかし、この3年間は、夏の暑さでリンゴの色づきが悪いといいます。

<りんご農家 渡辺美佐さん>
「今年はもう最悪です。まったく色がつかない。色がつく前に味がついちゃっているんです」
Q緑色なんだけど甘い?
「甘いですね。でもそれって緑のまま出荷しても売れないじゃないですか」

川が決壊するほどの大雨や夏の暑さ。気候変動がわたしたちの生活を脅かしています。

年々、激しくなる豪雨災害。決壊した千曲川のすぐそばの寺・妙笑寺の笹井妙音さんは、みるみるうちに川の水位が上がったと話します。

<妙笑寺 笹井妙音さん>
「午後8時までは、まだ全然あの通り、水位が上がってきていませんでした。夜12時ちょっと過ぎた頃から、ここから水があふれ始め、この辺から70m(堤防が)切れました」

笹井さんは命を守るためには地域の災害の歴史を知ることが大切だと話します。

<妙笑寺 笹井妙音さん>
「こういう風に堤防が非常に湾曲していて(昔は)ここに城があった。水の流れがここにぶつかるようになって洪水が起こり、何度も何度もこの辺が切れていた。明治29年(1896年)以降なかった。だから安心していました。通り過ぎてくれると思っていた。だめでしたね、持ちこたえられませんでした。4時間越水し続ければ、もうだめ」

寺の境内にある水害の記念碑には、4年前の水の高さが刻まれました。わたしたちが住む静岡を流れる川も過去に災害を繰り返しています。

静岡市を流れる安倍川では、2022年9月の台風15号で平成以降、最高となる水位を観測。氾濫危険水位を超え、堤防がいつ決壊してもおかしくないほど危険が迫りました。

支流の藁科川では、水の勢いで堤防の下がえぐられる河岸洗掘が発生しました。

<国土交通省静岡河川事務所流域治水課 酒井大介課長>
「こういった堤防が壊れましたら堤防の反対側には家もありますので、ここが決壊したら大きな被害が出たことも考えられます」

109年前の大正3年には、安倍川の本流が決壊する水害も起きています。

<国土交通省静岡河川事務所流域治水課 酒井大介課長>
「いまから500年から600年前は、いまのような流れではなくて、網状に流れが分かれていて、支線の藁科川も別に流れていた状況です。徳川家康が城を整備する際に、安倍川を西の方に動かして、いまの流れが形成された歴史があります」

もともと、いくつもの川が流れていた静岡市内。災害のリスクと隣り合わせであることを忘れてはいけません。

国土交通省のホームページでは、全国の一級河川について川の歴史や主な災害を紹介しています。過去の水害を知ることで、大雨が降った時の素早い避難など命を守る行動につながります。

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