国民的アイドル「天地真理」は今 体調面を考慮しながらファンと交流 CS放送から“再ブーム”へ

1970年代前半に国民的アイドルとして大ブームを巻き起こした歌手・天地真理。この3年間、CS放送で天地の冠番組がリピート放送され、昭和歌謡史の中で一時代を築いた存在が世代を超えて再び注目されている。15日には都内で主演映画などを上映するイベントが開催され、本人も舞台挨拶で登壇する。既存のメディアとは距離を置きつつ、ファンに近い場所で独自の活動を続ける現在のスタンスや、その思いについて関係者に話を聞いた。

天地は71年、TBS系ドラマ「時間ですよ」で注目され、同年10月に「水色の恋」で歌手デビュー。「あなたの心のとなりにいる白雪姫」のキャッチフレーズで、「ひとりじゃないの」「虹をわたって」「ふたりの日曜日」「恋する夏の日」などの多数のヒット曲を世に送り、子どもらに向けた〝真理ちゃんグッズ〟も人気に。72年から74年にかけてTBS系で「真理ちゃんとデイト」「となりの真理ちゃん」「とび出せ!真理ちゃん」といった冠番組が放送された。

本人も登壇する映画上映イベントは2012年9月に東京・銀座シネパトス(13年閉館)で初開催。昨年10月に東京・池袋HUMAXシネマズで行われた前回に続き、「真理ちゃん映画祭り2」と題された今回は通算3回目となる。会場を運営するヒューマックスシネマズと天地の個人事務所でもある「天地真理ファンクラブ事務局」の共催だ。天地主演の松竹映画「虹をわたって」(72年)と「愛ってなんだろ」(73年)、約2年半続いたテレビ番組「真理ちゃんシリーズ」から14曲の歌唱映像が上映され、天地は「愛ってなんだろ」で共演した俳優で元千葉県知事の森田健作と舞台挨拶する。

映画上映だけではない。貴重な音楽ライブの映像を「スクリーンコンサート」と題し、コロナ禍の中断を除き、約10年にわたって開催している。記者は13年6月に東京・新宿区の角筈区民ホールで、本人がファンの温かい拍手に迎えられて挨拶する姿を目に焼き付けた。その後、現在まで東京をベースに、大阪、名古屋、福岡などでも上映し、今後も全国展開していくという。

体調面を考慮しながら、映画や音楽映像の上映イベントでファンと接する。それが、天地の「今」だ。

ファンクラブの荘清二郎事務局長は「近況として、本年3月に松竹のCSホームドラマチャンネルで天地真理の特別番組が製作され、11年ぶりのテレビ出演をいたしました。松竹様との約2年を越える信頼関係を積み重ねた上で実現するに至りました。ただ、テレビや雑誌及び新聞などの出演や取材依頼は原則お断りいたしております」と説明。その理由について「デビューして数年で人気絶頂を極め、今でも『国民的歌手』とか『元祖アイドル』と言っていただくこともございます。その当時は実績相応の身体を酷使する厳しい忙しさも体験しております。一人のプロ歌手が一生をかけて行うことを、既に高いレベルで果たしてきたのではないか、そのような観点に立っておりますので、現在は無理をしない、させないことを第一としております」と明かした。

再放送で「真理ちゃん」が〝復活〟している状況について、荘氏は「この3年に限れば、同世代の歌手と比較して、最もコンテンツが発信された歌手は天地真理ではないかと自負いたしております」と手応えをつかむ。会場には全国からファンが訪れる。荘氏は「『真理ちゃんコール』が起こり、ファンお一人お一人と対面で握手をすることも。感動されて涙される方がおられるかと思えば、天地真理がファンを励ますサプライズなシーンが舞台上で起きるなど、心のつながりを大切にしています」と証言した。

今回のイベントでは、娯楽映画研究家・佐藤利明氏と歌手・タブレット純のトークショーも行われる。

佐藤氏はリアルタイム世代として「(天地デビュー)当時、僕は小学2年生。僕らの世代にとっては『あこがれのお姉さん』ですね。『ひとりじゃないの』や『虹をわたって』は小学校の遠足で、みんなで歌った記憶があります。70年代アイドル歌謡時代のトップバッターでもある天地真理さんの歌声は、僕らの心を明るく朗らかにしてくれます」と振り返った。

また、タブレットがパーソナリティーを務めるラジオ日本の番組「タブレット純 音楽の黄金時代」では、9月30日放送回に本人が声のメッセージでサプライズ出演。天地は「私はとても元気に楽しく毎日を送っております」と報告し、イベント告知と共に「お世話になります。楽しい1日にしたいと思います」と自然体で思いを語った。

ヒューマックスシネマズの鈴木伸英・シアター事業部長は「多くのファンの皆さんと真理ちゃんが笑顔で楽しい時間を過ごしていただければ」という。半世紀を経た今も、「真理ちゃん」はファンの「となり」にいた。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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