地域課題解決に向けて一歩 都市圏の大手社員と和歌山・田辺市の経営者がタッグ

課題解決の事業案を発表する大手と地元企業の合同チーム(和歌山県田辺市東陽で)

 都市圏の大手企業社員が、和歌山県田辺市の若手経営者とタッグを組んで地域課題解決に挑戦する「ことこらぼ」で、3チームの事業案が決まった。それぞれ企業の強みを生かし、防災や介護、環境分野で課題解決を図るもので、実践に向けて動き出した。

 「ことこらぼ」は日本能率協会マネジメントセンター(東京都)の人材育成事業で、田辺市が協力している。今回は大手企業7社12人が、育林業「中川」(文里2丁目)、南紀ガス(宝来町)、内装業「横田」(上の山1丁目)とチームを組み、6月から活動していた。9月29日、市文化交流センター「たなべる」で成果発表会があった。

 南紀ガスのチームは、災害発生時に生活の一部を支える「災害対応型ランドリー」の新設を考案。ガスヒートポンプやガス発電機を活用して、停電時も通常通り空調、給湯、電源が利用でき、炊き出しの拠点にもなる。Wi―Fi(ワイファイ)の無料接続もできる施設にしたいという。

 当初は環境保全の取り組みを検討していたが、顧客アンケートで「自然災害への備え」を課題と考える人が多かったことから、方向転換した。コインランドリービジネスは拡大市場で競争もあるが、ガス会社のため電力やLPガスのコスト、設備の初期投資を抑えられる強みがある。田辺エリアで5店舗を展開したいという。

 南紀ガスは「生活インフラを担う企業として、地域の暮らしを守る」をビジョンに掲げており、発表でも「地域の不安解消につながるビジネスで、地域貢献と事業成長を目指したい」と強調した。

 横田のチームは、加速する高齢化ニーズを予測し、手すりなど介護保険利用の住宅改修事業を検討。事業規模は小さいが、利用者が水回りなど他のリフォームを希望する場合、リピーターになると考えた。

 横田圭亮取締役(41)は「社員全員で取り組める実現性の高い事業案に仕上がった。小さな事業を積み上げて、仕事を広げたい。大手で活躍されている皆さんは分析力や、業務の可視化能力が高く、刺激になった」と感謝した。

 事業案に植樹を通じた異業種のマッチングなどを盛り込んだ中川は、同市龍神村で「ことこらぼ」参加の大手企業と、地元企業や中学生を交えた植樹をするなど、すでに一部実践を始めている。

 発表を聞いた真砂充敏市長は「人口減少が進む中、定住人口だけで課題解決は難しい。関係人口も重要になる。業種や地域を超えて一緒に取り組むプロセスが大切で、継続して関係を深めてほしい」と話した。

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