ガザ:医療施設は尊重されるべき──爆撃の中で続く活動 現場からの報告

パレスチナ・ガザ地区=2023年10月9日 © Mohammed ABED

イスラエルとパレスチナ・ガザ地区の間で衝突が激化。暴力の連鎖により、多数の死傷者が報告されている。国境なき師団(MSF)はガザにおいて、医薬品や物資を医療施設へ提供するとともに、負傷者の治療に当たっている。エルサレムを拠点に、パレスチナの現地活動責任者を務めるレオ・カンズが、現地の様子を伝える。

どこへ行けば安全なのか

ガザの状況は壊滅的です。地区内のすべての病院に絶え間なく負傷者が押し寄せ、手に負えないほどの状況です。医療チームは24時間体制で治療に当たり、疲れ切っています。

非常に激しい爆撃が続き、建物が次々と破壊されています。昨夜はMSFのオフィスのすぐ隣の建物も被害を受けました。

ガザの住民は夜中に時々、避難を促すメールを受け取ることがあります。ガザにいるMSFのチームの何人かにも届いていたようです。メールを受け取った人びとは、夜中に子どもたちを起こし、着の身着のまま家を出て、安全な場所に向かおうとする──しかし、どこへ行けばいいのか分かりません。そして、真夜中に外に出て、爆弾の雨の下にいることに気づくのです。一体、どこへ行けば安全なのでしょうか?

爆撃により破壊されたガザ=2023年10月9日 © Mohammed ABED

出口の見えない恐怖

最新の報告によると、避難民の数は約20万人と推定されています。彼らは主に避難を促すSMSメッセージを受信し、家を破壊された人びとです。彼らには、水やシャワーを浴びる場所、食料、寝るためのマットレス……。すべての基本的な生活必需品が必要です。

いま、イスラエル政府は水と電気の供給を完全に遮断することを決定し、電話網も大きな被害を受けています。今朝はガザのチームと電話で連絡を取ることができませんでした。必然的に、救助活動の調整や負傷者にアクセスすることが非常に難しくなっています。

今日のガザでは、人びとは恐怖におびえています。私はガザに暮らす同僚たちと頻繁に話をしてきました。彼らは非常にタフな人たちで、残念ながら、それは彼らが多くの戦争を生き抜いてきたためだと言えます。

現在の状況は彼らに極度の不安を与えています。出口が見えず、この先どうなるのかも分かりません。精神的な苦痛は非常に大きく、ガザの人びとが経験している状況を表現する言葉は見当たりません。

ガザの人びと=2023年10月9日 © Mohammed ABED

医療施設の尊重を

MSFは、医療施設が被害を免れていないことを非常に懸念しています。MSFが支援する病院の一つが空爆による被害を受け、活動する病院の目の前で負傷者を乗せた救急車が爆撃されました。手術中だったMSFのチームは、急いで病院を去らなければならなかったのです。繰り返しますが、医療施設は尊重されるべきで、攻撃の対象になってはいけません。これは交渉で決めるようなことではないのです。

現在MSFは、ガザ地区の主幹病院に必要な医薬品と医療機器を寄贈しています。また、2つの病院に外科手術チームを派遣し、負傷者の治療を支援しています。このような紛争下において、負傷者は完治するまでに何度も手術を繰り返さなくてはいけません。この数日間の間に、新たに受け入れる負傷者だけでなく、既存の患者の再手術にも多くの対応が必要な状況になるでしょう。

また昨日は、ガザの中心地にその他の負傷者のための診療所を設置しました。状況が許す限り治療を続ける予定です。

医療物資の準備を行うMSFのスタッフ=2023年10月8日 © MSF

暴力と爆撃の激しさは、死者の数と同様、恐ろしいものです。イスラエルの「宣戦布告」は、いかなる状況であれ、ガザの住民に対する集団的懲罰につながるものであってはなりません。水、電気、燃料の供給を断つことは、住民全体を罰し、基本的なニーズを奪うものであり、容認することはできません。

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