【ドラゴンボールZ】影山ヒロノブが歌う永遠のアンセム「CHA-LA HEAD-CHA-LA」  口ずさまなかった “Z世代” はいない!? ♪ちゃ〜ら〜 へっちゃら〜

国民的マンガ「ドラゴンボール」

私は知らない話題に直面したとき、相手に対して必ずこう聞くことにしている。「うん、よく分かんないからドラゴンボールでたとえてくれる?」と。

すると、どうだろう。大抵の場合において相手は「えぇっと… こっちがフリーザだとすると、これはナメック星で…」という調子で、下等生物並みの教養しかない私にも理解できるように丁寧なレクチャーを施し、そればかりか『ドラゴンボール』という共通の話題を通してお互いの距離を縮めることもできるのだ。

少なくとも20代〜40代の男性で「ごめん、俺ドラゴンボール知らないんだ」と返ってきたケースは一度もない。これほど幅広い年代においてキャラ相関とストーリーが共有されているという点で、やはり『ドラゴンボール』は国民的マンガと呼ぶにふさわしいだろう。

“サイヤ人” という新概念の登場と共に本格的なバトル漫画として再スタート

『ドラゴンボール』の連載開始は1984年。なんと来年で40周年を迎える。もはや “古典” の域である。原作コミックスは全42巻だが、連載5年目の第14巻を境にして大きく様相が変化した。主人公の孫悟空が急成長して大人の姿となり、“サイヤ人” という新概念の登場と共に本格的なバトル漫画として再スタートを切ったのだ。

原作では第14巻収録の166話「それぞれの再開」で新編に切り替わるが、アニメでは一旦『ドラゴンボール』(以下、元祖)が最終回となり、『ドラゴンボールZ』(以下、Z)とタイトルを変えて翌週から新番組として再開した。リアルタイムで追いかけていた人達はどちらも地続きの作品として捉えているようだが、途中から見始めた世代にとっては『元祖』と『Z』は別作品という意識が強く、上述の “ドラゴンボールたとえ” にしても、比喩に使うのが桃白白やレッドリボン軍ではなく、フリーザやセルであることが多い。年齢にすると今の30代以下は『元祖』をリアルタイムで見ていない、いわば “Z世代” にあたる。

様々なアーティストに幾度となくカバーされてき「CHA-LA HEAD-CHA-LA」

“Z” を語るうえで外せないのがオープニングテーマ「CHA-LA HEAD-CHA-LA」(作詞:森雪之丞、作曲:清岡千穂)だ。アニメでは「セル編」のラストまで約4年5ヵ月にわたり使用され、その後も様々なアーティストに幾度となくカバーされてきた。『ドラゴンボール』を象徴する1曲であると同時に、平成アニメを代表する1曲といっても過言ではない、名曲中の名曲だ。サビの「♪ちゃ〜ら〜 へっちゃら〜」の一節を口ずさんだことない “Z世代” など存在しないと私は確信している。

歌うのは影山ヒロノブ。かつて人気ロックバンド “LAZY” のボーカリスト、ミッシェルとして活躍していたのは有名な話だが、解散後はヒットが出ずに工事現場のアルバイトで食いつなぐ時期もあった。苦節を経て、1985年に人気特撮『電撃戦隊チェンジマン』の主題歌を「KAGE」名義で歌ったことで道が開いた。今や故・水木一郎、堀江美都子と並び「アニソンBIG3」と称される影山ヒロノブも、当時は駆け出しの若手ボーカリストの一人だったが、「CHA-LA HEAD-CHA-LA」の大ヒットで一躍して人気者の仲間入りを果たした。

とにかく底抜けに明るく、能天気で、前向きな超ポジティブシンキング

では、なぜ「CHA-LA HEAD-CHA-LA」が30年経っても色あせない不変の名曲になり得たのか。パワーと伸びの美しさが共生した影山ヒロノブの圧倒的な歌唱力、無条件にテンションをぶちあげるアッパーなメロディとサウンドもさることながら、同作の肝は短いフレーズで正確に作品の本質を捉えた作詞家・森雪之丞による歌詞にあると、私は考える。象徴的なのが次のフレーズだ。

 何が起きても気分は
 へのへのカッパ

 頭カラッポの方が 夢詰め込める

『Z』では全人類、時には全宇宙の存亡をかけて悟空を中心としたZ戦士たちが死闘を繰り返すが、その規模感、シビアさの割に登場人物たちはどこか呆気らかんとしていて、むしろ戦うことを楽しんでいる様子さえうかがえる。その独特の能天気さが端的に描かれており、作品の世界観にぴったりマッチするのだ。

また、次から次へと強敵が現れては天井知らずに戦闘力がインフレしたり、あの世(天国と地獄)まで巻き込んで戦いを繰り広げたり―― と、どんどんスケールが巨大になっていく『Z』ならではの “過剰感” も、次のフレーズにみごとに表現されている。

 溶けた北極(こおり)の中に
 恐竜がいたら 玉乗り仕込みたいね

 笑顔ウルトラZで
 今日もアイヤイヤイヤイヤイ
 … Sparking!

すごい。とにかく底抜けに明るく、能天気で、前向きな超ポジティブシンキングだ。当時は子供だったのでよく分からなかったが、今ならこうしたポジティブさが社会を生き抜く上でどれだけ必要か身に染みて分かる。ヘタな自己啓発本よりも『ドラゴンボール』を読み、「CHA-LA HEAD-CHA-LA」を歌った方が遥かに心に効くような気さえする。

ちなみに『Z』の平均視聴率は驚異の20.5%(関東地区)! 若い世代に限定すれば、もっと凄まじい数字が出ていたはずだ。心躍らせながらテレビにかじりついていたあの頃。水曜19時ちょうど、アップで映し出された一星球(イーシンチュウ)の画に合わせて始まる「♪テレレテレレ」という印象的なイントロ――。あの瞬間の高揚感は大人になっても忘れることはない。我々 “Z世代” にとって「CHA-LA HEAD-CHA-LA」は永遠のアンセムなのである。

カタリベ: 広瀬いくと

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