直木賞作家・辻村さん 小説構想の土浦三高で講演 「この夏の-」 科学部取材し執筆 茨城

講演後、県立土浦三高の生徒と記念撮影する作家の辻村深月さん(右から3人目)=土浦市大岩田

■創作の舞台裏 語る

6月に小説「この夏の星を見る」を出版した、直木賞作家の辻村深月さんが11日、作中の舞台構想に生かされた茨城県土浦市大岩田の県立土浦三高で講演した。小説では、同校発祥の天体観測の催しが、離れた土地に住む主人公たちを結び付ける重要な役割を果たす。辻村さんは、登場人物の造形など創作の舞台裏を解説しながら「この内容になったのは土浦三高との出合いがあったから」と明かした。全校生徒が熱心に耳を傾けた。

辻村さんは山梨県出身。2004年に「冷たい校舎の時は止まる」でデビュー。12年に直木賞、18年に本屋大賞を受賞し、若い世代を中心に人気を集めている。小説「この夏の星を見る」では、新型コロナウイルスが拡大する中での茨城と東京、長崎の中高生の群像が描かれる。辻村さんは執筆に当たり、同校の科学部を取材した。

辻村さんは講演で、創作上の登場人物について「物語に必要だからという理由では登場させない」と説明した。「悪役として生まれ、悪役として行動する人なんていない」とし、「それぞれの行動原理の中で良かれと思ったことが、結果、悪役に見えるだけ。皆自分の人生を一生懸命に生きているのだと忘れないようにしている」と話した。

デビュー当初、編集者に「自分の中にいるたった1人の読者に向けて書けばいい」と背中を押された。「中高生だった頃の自分が読んだらどう思うかが自分の指標」と強調した。

司会を務めた栗原悠那さん(17)=3年=と竹原史織さん(18)=同=は、辻村さんの同校取材時に、同じファン同士として意気投合したという。2人は「先生に会えて本当にうれしい。今日のことは一生忘れない」と声を弾ませた。

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