医薬品不足深刻に、院内処方の医療機関の9割が「入手困難」院外処方でも7割強「在庫不足」日本医師会が調査

 新型コロナやインフルエンザの同時流行が懸念される中、今年に入って医薬品の供給不足が慢性化している。日本医師会が調査したところ、咳止めや解熱鎮痛剤を中心に大多数の医療機関で処方困難になっていることが改めて明らかになった。

製薬会社との認識相違も明らかに

 日本医師会は、8月9日~9月30日の期間で全国の医療機関にアンケートで医薬品不足の実態について調査し、9月30日時点で6,773医療機関から回答が得られたとして速報値を公表した。

 それによると、院内処方で薬を処方する医療機関の90.2%が「入手困難な医薬品がある」と回答。また院外処方の医療機関でも、調剤薬局から「在庫不足」と回答された割合が74%あったという。

 入手困難になっている医薬品は主に咳止め、去たん剤(たんを出しやすくする薬)、解熱鎮痛剤など抗生剤が多く、新型コロナやインフルエンザの流行にともない需要が高まっていることも背景にあるが、昨年、ジェネリック医薬品の大手製薬会社において不正が相次いで発覚し、廃業などで業界全体の生産能力が落ちていることも要因となっている。

 また、製薬会社側との認識のギャップも明らかとなった。製薬会社の業界団体である日本製薬団体連合会(日薬連)が調査した出荷状況の報告と比較すると、日本医師会のアンケートで院内処方において「入手困難」として回答のあった2,096品目のうち、日薬連の調査で各医薬品製造企業が「通常出荷」として回答している品目は670品目と、実に約3分の1の薬剤において認識の違いが出ている。これに関して日本医師会は「通常出荷の定義が非常にあいまいであり、医薬品業界は世情や医薬品の在庫状況などを踏まえてしっかりと対策すべき」と批判した。

 日本医師会では当座の対応として厚生労働省にはたらきかけ、去たん剤に関しては60日処方や90日処方といった長期処方は控えるよう通知を発出してもらったという。根本的な問題解決に関しては、ジェネリック医薬品に生産能力を持たない会社が参入するなど産業構造的な問題もあるとし、国や産業界一体で取り組むべきだとしている。

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