中国、脱北者500人を北朝鮮に強制送還

先月23日から今月8日まで中国の杭州で開催されたアジア競技大会。日本は金メダル52個など、合わせて188個のメダルを獲得し、3カ国中で2位に輝いた。次の大会は2026年に名古屋で開催予定だ。

スポーツの熱狂の裏で、脱北者が恐怖に震えていた。北朝鮮は2020年1月に、新型コロナウイルスの国内流入を避けるために国境を閉鎖し、強制送還の対象者の受け入れも拒否していた。それがついに再開されたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

脱北者の救出活動を行っているJM宣教会によると、中国当局はアジア競技大会の閉幕翌日の9日19時30分ごろ、吉林省の図們、琿春、長白、遼寧省の丹東など複数の場所から、中国国内で逮捕され強制退去処分を受けた脱北者を北朝鮮に強制送還した。JM宣教会は、今回の強制送還が中国と北朝鮮当局の事前協議に基づいて行われたと主張した。

これに先立つ8月29日や、大会直前の先月18日にも、脱北者の北朝鮮送還が行われた。同宣教会が把握した数は合わせて500人に達する。

北朝鮮に受け入れを拒否されたことで命拾いした脱北者もいたが、その行方はわかっていない。

韓国のNGO、北韓人権情報センターのソン・ハンナ国際協力ディレクターは今年6月、米国議会の議員と行政府高官からなる「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会」の聴聞会で、中国の収容施設にいる脱北者は600人から2000人と推定されると明らかにしている。

各国の人権団体は、中国の習近平国家主席宛に、脱北者の北朝鮮強制送還をやめるように公開書簡を提出するなどの動きを見せていたが、アジア競技大会、ロシアのウクライナ侵攻、パレスチナイスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突などに国際社会の視線が集中し、批判の声はさほど広がっていなかった。

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