「いま僕はココにいます」Vol.177 米ツアー予選会に挑戦へ

欧州ツアー5年目のシーズンを送る川村昌弘が下した決断とは? (Luke Walker/Getty Images)

人は彼のことを“旅人ゴルファー”と呼ぶ。川村昌弘・30歳。2012年のプロデビューから活躍の場を海の向こうに求め、キャリアで足を運んだ国と地域の数は実に70に到達した。キャディバッグとバックパックで世界を飛び回る渡り鳥の経路を追っていこう。

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プロゴルファーの川村昌弘です。
いま僕はマドリードにいます。

今週のDPワールドツアー(欧州男子ツアー)は「アクシオナ スペインオープン by マドリード」。前週、スコットランドでの「アルフレッド・ダンヒルリンクス選手権」が大雨で月曜日(9日)まで持ち越されたため、大慌てでやってきました。

予約していたエジンバラからマドリードまでの直行便が火曜日は設定されていなかったため、試合を終えたその足でイングランド・ロンドンまでレンタカー移動! 約7時間のドライブを経て、スタンステッド空港から直行便で10日(火)の夕方にスペイン入りしました。コースチェックもままならず、試合はまさに“ぶっつけ本番”になります。

さて、今回はお知らせがあります。今週のスペインでの試合を終えた後、僕は米国に渡ります。来年のPGAツアー、下部コーンフェリーツアーの出場を目指して、この秋の予選会(Qスクール)にチャレンジすることを決めました。1次予選会からの受験で、上位者が出場資格を得られる12月の最終までは3ステージの長い道のりになります。

2018年秋に予選会を突破して参戦した欧州ツアーも、ことしで5年目になりました。世界中を旅する現在のライフスタイルは学生時代から夢見てきたものでもありますが、悪い意味でも“慣れ”を感じている、ここ最近です。

今年1月、アラブ首長国連邦のアブダビで行われた新年の初戦に臨んだ際、数年前まで感じていたワクワクした気持ちが薄れていることに気づきました。立っている舞台への高揚感が徐々に失われている自分を認めざるを得ません。そろそろ新しい挑戦を始めなくてはいけないと、少し前からずっと考えていました。

男子ゴルフの世界最高レベルにあるPGAツアーは、もちろん僕にとっても小さい頃からの憧れでした。そのツアーにトライするには、当然ながら高い技術も精神力も求められます。昨年発症した右手首の痛みなどの影響で飛距離も落ち、それほど好結果が出ない状態で、本当に挑戦して大丈夫だろうか?と春先から悩みっぱなしでした。

7月に出場したバーバゾル選手権。今田竜二選手、小平智選手とプレーしました(撮影/川村昌弘)

そんな迷いが消えたのが7月、欧州ツアーとPGAツアーの共催大会「バーバゾル選手権」「バラクーダ選手権」に出場するため渡米した時のことです。どちらの試合も「ジェネシス スコティッシュオープン」と「全英オープン」との同週開催で、エリート選手は不在。普段のPGAツアーに比べれば小規模でしたが、見知らぬ土地、初めてのコースでプレーすることが楽しくて仕方ありませんでした。

「悩むなら、行こう」。僕はキャリアでずっとそうしてきたはずです。この期に及んで悩み、迷うくらいなら、まずはチャレンジ。そうすることを選びました。

1次予選会は米国13会場で行われ、僕は24日(火)からテキサス州のアビリーンCCでの競技に参加します。アビリーンはダラスからは西に車で約3時間の小さな街みたい。72ホールのストロークプレーで、各地の上位者が11月の2次(5会場)に進みます。

周りには学生上がりのプレーヤーや、職場を求めて必死な選手たちが緊張感を漂わせるはず。そういうピリピリとした空気はきっと伝染します。自分がどんな気持ちでゴルフができるのか、それも楽しみに思います。

正直なところ、歳を重ねて、若い頃やってきたような不安を打ち消すほどの猛練習はフィジカル的にもできません。これまで蓄えてきたキャリアと技術を信じてやるしかない。いつか行きたい場所の扉を、まずはノックしてきます。

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