「神戸阪急」に老舗書店がオープン、初日120分待ちのワケ

1909年創業の老舗書店「有隣堂」(代表:松信健太郎)が、リニューアルオープンした百貨店「神戸阪急」(神戸市中央区)に関西初出店を果たした。10月11日のオープン初日には多くの人が押し寄せ、レジが120分待ちとなった。書店にこれまでの行列のワケとは?

神戸阪急の本館8階にオープンした「有隣堂」

■ 来店客の目当ては…人気キャラクター?

横浜に誕生し、神奈川・東京・千葉に約40店舗を展開する同店。オープン直後から賑わいを見せ、一時は行列が屋上まで続くという事態に。来店客の目当ての多くは、同社のYouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』内に登場するキャラクター「R.B.ブッコロー」だった。

登録者数25.7万人のYouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』を運用する同社。動画のメインは、やけにおしゃべりなミミズクのMC「R.B.ブッコロー」が、個人的な推し全開のバイヤーと、さまざまな商品を紹介するというもの。なかには同店で扱いのないものまで紹介するといった振り切った内容となっている。

神戸阪急店オープンの12日前には、神戸阪急の店長・杉崎聡さんを招いたライブ配信をおこない、なぜ関西に初出店することになったのかを赤裸々に配信。同チャンネルのファン「ゆーりんちー」たちが、やり取りにツッコミながら「やっと関西に!」と出店を祝っていた。

このライブ配信の流れでオープンに駆けつけたファンも多く、午前中は横浜のスタジオのブッコロー(なかの人)とリアルタイムで会話ができるようにしたところ、大変な騒ぎに。同社広報の市川さんも「YouTubeのファンの方が、こんなに来てくださると思わなかった」と驚く。

枚方から訪れたという女性は、「オープンを狙ってきました。横浜に住んでいたことがあるので、すごく懐かしいなと思って。YouTubeファン歴は浅いですけど、ガラスペンから飛んで、そこからは一気にほぼ全部見ました。ブッコローちゃんのボールペンや本、横浜のオリジナルインクを選びました。枚方からはちょっと遠いですけど、何かイベントがあったらまた来たい」と話し、同じように列に並ぶほとんど人がブッコローオリジナル商品をカゴに入れていた。

公式YouTube『有隣堂しか知らない』で人気のR.B.ブッコローが迎える

■ 雑貨類を6割に、書店の再定義へ

同店は、フロアコンセプト「ていねいな暮らし」にあわせてライフスタイルを提案するため、雑貨を約6割に増やして書店の再定義にチャレンジしている。書籍は1万タイトルと少なくし、ワンテーマで選書した編集棚で提案。雑貨は、YouTubeでブームを牽引したガラスペンやオリジナル商品、神奈川や横浜の美味しいものを紹介するコーナーまで、同社らしいこだわりのセレクトを目指した。

広報担当者は「横浜から初めてきた本屋なので、よろしくお願いしますという気持ちです。人生100年時代と言われるようになりましたので、100年を元気に楽しく、暮らしがワンランクアップするような素敵なものを提案していますので、足を運んで出会っていただきたいと思っています」とコメント。

「有隣堂神戸阪急店」は、神戸阪急本館8階。営業時間は朝10時から夜8時。文庫購入で選べる文庫本カバーには、赤レンガをイメージした限定色「コウベブリック」も用意(なくなり次第終了)。

取材・文・写真/太田浩子

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