続く代表辞退で海外組の招集は曲がり角?/六川亨の日本サッカー見聞録

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JFA(日本サッカー協会)は12日の12時過ぎ、GK前川黛也がケガのためにチームを離脱し、代わりに新潟のGK小島亨介を追加で招集したと発表した。10月4日の代表メンバー発表の際は、鎌田大地と堂安律がコンディション不良のため招集を見送ったと森保一監督は話していた。

その後、9日に前田大然がケガのため不参加となり、代わりに川辺駿(スタンダール・リエージュ)が、さらに同日、三笘薫が体調不良のため不参加が決まり、代わりに奥抜侃志(ニュルンベルク)を招集すると発表した。

そして昨日は久保建英がメディアの取材に応じ、ヨーロッパからの移動は「きついけど戻ってきました。きつさがあるのは事実だし、僕だけじゃない」と正直な気持ちを吐露した。これまでも当コラムで書いてきたが、9月のドイツやベルギーといったようにヨーロッパで強豪とマッチメイクできる機会はそうそうないので、ヨーロッパ組が中心になるのは当然である。

しかし国内で、それもカナダやチュニジアとの親善試合に多くのヨーロッパ組を呼び戻す必要があるのかどうか、JFAと技術委員会は真剣に考えるべきだろう。

今回の親善試合も、カナダ戦はみずほ銀行が、チュニジア戦はキリンが冠スポンサーとなった。こうした日本代表の試合の入場料収入やグッズ収入、放映権料などがアンダーカテゴリーや女子の強化費になるため、“目玉となる選手”を呼びたいのも理解できる。

これがブラジルやアルゼンチンなら、チケットも簡単に売り切れとなるだろう。しかし現状はヨーロッパ勢をほとんど呼べず、南米ではペルーやパラグアイか、せいぜいウルグアイあたりだし、北中米やアフリカ勢が多いため、どうしてもイングランドやスペインで活躍している三笘と久保に頼らざるをえなくなる。これで今回、久保がケガでもしたら、ソシエダも強制力があるとはいえ久保の代表参加に慎重になるだろう。

今回代表を辞退した堂安や鎌田、三笘はリーグ戦に加えてELやCLも戦っている。それは冨安健洋や古橋亨梧、上田綺世、久保も同様だ。奥抜は初代表でうれしいかもしれないが、追加招集ならすぐに合流できる国内組でもいいのではないかと思ってしまう。

日本代表の近々の目標は、11月のW杯予選の2試合(ミャンマー対マカオの勝者とシリア戦)と来年1月にカタールで開催されるアジアカップだ。W杯予選は大阪での試合後、中東でのシリア戦が予想されるので、そのままヨーロッパへ戻ればいい。

問題はアジアカップである。アジア最大のサッカーイベントであり、前回はカタールに敗れて準優勝に終わっているだけに、森保監督もリベンジの意識が強いだろう。しかし大会は1月14日にスタートして、決勝まで勝ち進んだら2月10日まで1ヶ月以上の長丁場だ。すでにチームの主力となっている久保や三笘を1ヶ月も欠くことになったら、ソシエダとブライトンは優勝争いから脱落するかもしれないし、久保と三笘自身もレギュラーポジションを失うかもしれない。

強制力はあるものの、呼ぶ前に、まずは本人の意思を確認してみてはいかがだろうか。そろそろ、そういう時期に日本も来ている気がしてならない。


【文・六川亨】

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