“ボールインプレー”と“劇的な幕切れ”の増加、一方で選手から健康を危惧する声も 長いATがサッカーにもたらすものとは?

写真:今季はアディショナルタイムがより厳格に取られている

イギリスメディア『BBC』が、今季のプレミアリーグで話題になっているアディショナルタイムの長さについて検証している。

プロ審判協会であるプロフェッショナル・ゲーム・マッチ・オフィシャルズ・リミテッド(PGMOL)は、国際サッカー評議会(IFAB)からの指示に対する取り組みの一環として、今季からアディショナルタイムをより厳格に取り始めている。その結果、トップリーグの試合時間は平均して100分を超えるようになった。

『BBC』は、アディショナルタイムが長く取られるきっかけとして、FIFAワールドカップ(W杯)カタール2022を挙げている。カタールW杯では、前例がないほどのアディショナルタイムが発生。最も極端なケースでは、イングランド代表vsイラン代表戦において、前半終了間際に14分のアディショナルタイムが掲示された。

同メディアによると、アディショナルタイムの厳格化が導入された今季のプレミアリーグでは、第8節終了時点の平均アディショナルタイムが11分33秒となり、これは昨季の平均8分27秒を上回っている。

今季、ここまで最長となった試合は、現地時間10月7日に行われた第8節のフラムvsシェフィールド・ユナイテッドの113分54秒。この試合では、シェフィールド・ユナイテッドに所属するイングランド人DFクリス・バシャムの左足首があらぬ方向に曲がるアクシデントがあったため、試合が12分ほど中断した。

■プレミアリーグ最長試合 2023-24
1位:2023年10月7日/フラム 3-1 シェフィールド・ユナイテッド(113分54秒)
2位:2023年9月16日/アストンヴィラ 3-1 クリスタルパレス(112分2秒)
3位:2023年9月16日/トッテナム 2-1 シェフィールド・ユナイテッド(109分15秒)

アディショナルタイムの厳格化が検討された主な理由の1つは、ボールインプレー(ピッチ内側にボールがあり、プレーが続行されている状態のこと)の時間を長くするというものだった。昨季のプレミアリーグでは、ボールインプレーの平均時間が54分52秒となり、過去10年で最低の数字に。だが、アディショナルタイムの厳格化によって、今季この数字は58分48秒とおよそ4分近く伸びている。

また、アディショナルタイムが長くなることで、試合最終盤に劇的な展開が発生する可能性も増加している模様だ。今季、すでに(前後半を合わせた)アディショナルタイムのゴール数は計32ゴールとなっており、ゴール総数の13.3%を占めているという。昨季の同時点におけるアディショナルタイムのゴール数がわずか11ゴールだったことを踏まえると、いかに“劇的な幕切れ”の増加が顕著であるかが分かる。

一方、長いアディショナルタイムは選手に大きな負担をかけることにもつながる。マンチェスター・ユナイテッドに所属する元フランス代表DFラファエル・ヴァランは、今季開幕前に自身の公式X(旧ツイッター)で次のように警鐘を鳴らしている。

「監督や選手たちは、試合数があまりにも多く、スケジュールが過密で、身体的・精神的な健康が危険レベルにあるという懸念を長年共有してきた」

「しかし、これまでのフィードバックにもかかわらず、今季は試合時間がより長くなる。選手たちは100%の力を発揮できるよう、ピッチ上で良いコンディションを保ちたいと思っている。なぜ僕たちの意見が聞き入れられないのだろう?」

「選手として、大好きな仕事が毎日できることをとても光栄に思っている。しかし、いくつかの変化が選手、ひいては競技自体にダメージを与えていると感じている」

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