【独自】理研が神戸で量子コンピューター整備へ 26年度に「富岳」と連携、最先端の運用システム開発目指す

スーパーコンピューター「富岳」。近くに量子コンピューターが新たに整備される予定=神戸市中央区港島南町7

 スーパーコンピューターをしのぐ超高速で複雑な計算ができるとされる次世代計算機「量子コンピューター」を、理化学研究所(埼玉県和光市)が2026年度までに神戸市に整備することが12日、分かった。量子コンピューターは早期の産業利用が期待される一方、計算エラーが起きやすいなど課題も多い。理研とソフトバンク(東京)が神戸・ポートアイランド2期にあるスパコン「富岳」などと連携させ、エラーを補正して運用するシステムの開発に取り組む。(西井由比子)

 量子コンピューターは、光や原子、電子といった「量子」と呼ばれる極めて小さな粒子の性質を利用したコンピューターで、一度に処理できる情報量が飛躍的に増えるとされる。膨大な組み合わせの中から適切なものを選ぶ処理や、人工知能(AI)との相性が良いとされ、新薬候補の探索や素材開発、暗号解読、金融資産の運用など幅広い分野で活用が期待されている。

 現在、各国の企業や研究機関が開発にしのぎを削るが、動作が不安定で計算エラーが生じやすい課題があり、スパコンと組み合わせて計算結果を整理・補強する「ハイブリッド型」での実用化を目指す動きが世界の潮流になりつつある。日本は世界トップクラスの計算性能を誇る富岳を活用し、世界に先駆けた運用システムの構築を目指す。

 理研によると、神戸市の量子コンピューターは、富岳があるポーアイ2期の理研計算科学研究センター内に整備する見通し。和光市に設ける別の量子コンピューターと富岳、東京大と大阪大のスパコンを連携させる。神戸と和光では「超伝導型」「イオントラップ型」という特性が異なる量子コンピューターをそれぞれ整備する。

 26年度にこれらを連携させる仕組みを構築、有効に動くかどうか実証に取り組む。一連の研究開発は、高速大容量の第5世代移動通信システム(5G)の機能をさらに強化した「ポスト5G」をにらんだ技術開発を支援する経済産業省の事業に採択された。

 神戸市は「新たな領域の研究が広がることへの期待は大きい。兵庫県内には、物質の微細な構造を明らかにできる大型放射光施設『スプリング8』(佐用町)やエックス線自由電子レーザー施設『SACLA(さくら)』(同)もあり、先端研究のさらなる発展に期待したい」とコメントしている。

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