日本人初のMLSドラフト1巡目指名!元トロントFCの遠藤翼に聞いた「カナダのサッカー事情」「カナダ代表」

日本代表は13日(金)、カナダ代表と新潟のデンカビッグスワンスタジアムで「MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2023」にて対戦する。

カナダは昨年、36年ぶりにワールドカップへ出場。2026年ワールドカップをアメリカ、メキシコと共同開催することが決まっており、今年就任したマウロ・ビエロ監督のもとで強化を進めている。

そんなカナダのサッカーに詳しい人物…ということで、Qolyでは2016年にMLSスーパードラフトで日本人初の1巡目指名を受け、2021年までトロントFCでプレーした遠藤翼を直撃した。

LAギャラクシーIIに所属していた昨年、急性白血病と診断された遠藤。抗がん剤治療や骨髄移植などを経て、現在は復帰に向け日本でトレーニングの日々を送っている。

今回のインタビューでは、遠藤のサッカーキャリアや現在の状況とともに、彼がプレーしていたカナダのサッカー事情やカナダ代表について色々と聞いた。今回は日本代表戦を前にカナダのサッカーに関する部分を先行してお届けする。

(取材日:2023年10月5日)

カナダのサッカー熱と「401ダービー」

――カナダのサッカーについて伺わせてください。まずカナダだと、サッカーの人気はどんな感じですか?やはりアイスホッケーが一番人気?

そうですね。カナダだったらアイスホッケーが多分一番です。

――トロントだと野球のブルージェイズ(MLB)などもありますが。

ブルージェイズも人気ですけど。アメフト…カナディアンフットボールになっちゃうんですけど、そこと比べたら多分サッカーのほうが人気だと思います。サッカーはカナダだとおそらく2、3番手ぐらいじゃないですかね。

アイスホッケーはもうやっぱりみんなメープルリーフス(NHL)への期待度じゃないですけど、応援の熱がトロントではすごいです。そこには多分勝てないと思いますね。

――気温はトロントだと、例えば夏はどのくらいですか?

かなり過ごしやすい夏ですね。日本と比べてあまり湿気がないですし、上がっても31度32度くらいです。朝晩と昼の温度差がかなり違うので、海外って。

トロントもそうなんですけど、朝とか夜は夏でも本当に涼しくて、かなり過ごしやすいです。でもトロントの場合はカナダで寒いんで、やっぱり夏が短いんですよね。6月の終わりくらいから9月中旬ぐらいですかね。もって3ヶ月とか3ヶ月半くらい。それ以外は寒くなってみんな外へ出なくなっちゃうんで。

そういう部分では、みんな夏はテラスに出て外をかなりエンジョイする感じで、「この期間を楽しむんだ」という感じがもう本当に出ている人たちが多いです。テラスがレストランとかも多いですし、夏にもっと感謝するじゃないですけど。

例えばLAとかはずっと暑いというか暖かいじゃないですか。だからそういう部分では何かあまりそのありがたみが分からないというか。

トロントだと本当に3ヵ月とか4ヵ月間しかないので、みんなこの機に外にずっといたり、そういうことはかなり気になりましたね。

――冬はもうとにかく寒い?雪も結構降ります?

寒いですね、本当に。真冬だとマイナス15とか20まで行っちゃいます。でも、まあ慣れはしないですけど、6年間いたので結構大丈夫といえば大丈夫ですね。

雪も降りますけど、そんな酷い雪は多分ないと思います。もちろん降るんですけど、ドームの練習場があって、プレシーズン開幕戦の前とかは大体そこでやったりとか。

プレシーズンは暖かいところに行っていますけど、トロントでやらないといけない練習はドームでやったりとかして。シーズンの終わりほうはまだギリギリ大丈夫かなという感じです。

――MLSだとトロントFC、バンクーバー・ホワイトキャップス、CFモントリオールという3つのチームがカナダにあります。ライバル関係は?

トロントとモントリオールはかなりあって。高速道路かな?401号という道路がトロントからモントリオールまで通っているんですけど、それで「401ダービー」(フォーワンダービー)みたいな感じで呼ばれています。

歴史があるライバル関係になっていて、今はあまり分からないですけど、僕がいた頃はお互いに結構やり合っていました。ピッチの中でも。だから見ていても自分でやっていても面白い試合になりましたね。

――トロントFCはカナダのチームですが、アメリカに越境する感覚や移動などで何か苦労する点などはありましたか?

大学の時から結構移動はしていたので、別に苦というか…例えば日本にいて、そういう移動とかってなるとそんなに長い距離をしないと思うんですよね。だからそこにあまりフォーカスしないと思うんですけど、アメリカだと本当にその倍とか倍以上の移動距離になるので、身体に疲労は絶対溜まってくると思います。

でも個人的にはまだ若かったというのもあるんですけど、ずっとアメリカでそういう移動を大学の時からやってきたので、そこまで別に苦とは思わなかったです。もちろん時差とかもあるので難しい時もありますけど、個人的にはもうずっと慣れてやってきたことなので、“壁”という風には感じたことはないですね。

カナダ代表は「サイドの個が強い」

――カナダは昨年、36年ぶりにワールドカップへ出場しました。近年カナダのサッカーが良くなってきた、強くなってきたと遠藤選手が感じていた部分はありますか?

本当にここ最近強くなってきていて、その理由としてはもちろん選手のレベルアップもあります。MLSでプレーしている選手がたくさんいますし、ヨーロッパに出ている選手も多い。その選手たちがレベルを引き上げている部分があります。

カタールワールドカップの最終予選でも、メキシコやアメリカに勝つなど良い戦いをして、1位で抜けました。もちろん大陸ごとにレベルは違うと思うんですけど、メキシコやアメリカ、ジャマイカとかの中に入って1位でワールドカップへ行けるというのはやっぱりすごいことだと思います。

トロントでやっていたチームメイトではスタメンとして出ている選手もいるので、そういう選手が頑張ってワールドカップにも出場したというのも嬉しいです。

――今のカナダ代表はどんなチームだと感じています?

9月の代表ウィークはカナダ代表が活動していなかったので分からない部分もありますが、個人的には、例えばサイドの個が強いとかですね。

アルフォンス・デイヴィスはカナダ代表では色々なポジションをやっています。バイエルンでは左サイドバックですけど、カナダ代表ではFWとか左サイドハーフも。FWではフランスのリールでプレーしているジョナサン・デイヴィッドも点が取れる選手です。

個人的にはサイドに良い選手が多いかなと思っています。そこで仕掛けられる選手のスピード、クロスであったりとかそういう部分での得点が多いのかなとは思います。

――そのカナダ代表と日本代表が対戦します。最近の日本サッカーや日本代表チームはどう見ていますか?

先月のヨーロッパ遠征はかなり出来が良かったと思います。

見ていて、一人一人がやる仕事じゃないですけど任された仕事をしっかりやっているのと、決めるところをしっかり決める。やっぱりチャンスを何回作っても決められないと試合は決められないですから。チャンスの時にしっかり決めるというのが結構目に見えた試合が、ドイツ戦とトルコ戦ではあったのかなと思います。

守備の時も組織的に動いているのが見えました。一人一人がもちろんアピールする…親善試合はやっぱりアピールする場でもありますからね。

ドイツ戦とトルコ戦は人を入れ替えても他の選手が活躍するとか、そういう部分でやっぱり底上げじゃないですけど、日本代表全体のレベルがそうやってレベルアップしていくのかなと見ていて感じました。

――3年後のワールドカップは、カナダ、メキシコ、アメリカで共同開催されます。そこで日本代表が成功を収めるために「必要なこと」はどうでしょう?

別に自分が言うことでもないのであれなんですけど(苦笑)。

外から見ていて、基本的なところとしてワールドカップで呼ばれる選手たちが所属クラブでしっかり活躍していることがおそらく一番大事だと思うので、そこが一番キーになってくるんじゃないかなと思います。

日本が昨年ワールドカップ前最後のテストマッチで対戦し、1-2で敗れたカナダ戦。そのリベンジマッチとしても注目される一戦は、13日(金)の19:35にキックオフされる。

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なお、遠藤翼にJFAアカデミー福島時代やアメリカのメリーランド大学でのプレー、病気のことや近況などを聞いたインタビューの続編は近日配信予定。

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