原作は高橋留美子【めぞん一刻】主題歌で最もヒットした斉藤由貴「悲しみよこんにちは」  「めぞん一刻」初代のオープニングテーマとなった、斉藤由貴「悲しみよこんにちは」

アニメ界にも一大センセーションを巻き起こした「うる星やつら」

1978年、週刊少年サンデー誌で連載がスタートした『うる星やつら』は、高校生の諸星あたると、美少女宇宙人のラムを主人公にしたSFコメディ漫画だった。斬新な設定とキャラクターの魅力で人気を呼び、1981年にフジテレビでテレビアニメ化もされるとアニメ界にも一大センセーションを巻き起こす。

その『うる星やつら』が約1年半に亘る不定期連載の後、週刊で毎回連載となった1980年春。作者の高橋留美子が同年の秋から青年誌のビッグコミックスピリッツで連載を開始したのが『めぞん一刻』であった。

「めぞん一刻」初代のオープニングテーマ「悲しみよこんにちは」

かのトキワ荘を彷彿させるような木造アパート「一刻館」を舞台に、浪人生の住人・五代裕作と、管理人の美しき未亡人・音無響子をめぐるラブコメディ。高橋留美子はこの2つの作品を1987年まで並行して連載した。『うる星やつら』はアニメ化されて、1981年10月から1986年3月まで続くロングランに。その後番組として『めぞん一刻』もアニメ化され、1988年3月まで放送されたのだった。原作の漫画は並行して連載されていたが、アニメはリレー形式だったので、あたるに感情移入していた視聴者が成長して、今度は裕作の目線へとスライドできたのではないだろうか。

『うる星やつら』から多くのテーマソングが生み出されたように、『めぞん一刻』からもたくさんの歌が生まれている。中でも最もヒットしたのが、初代のオープニングテーマとなった、斉藤由貴「悲しみよこんにちは」である。セカンドシングル「白い炎」に続いて玉置浩二が作曲、森雪之丞が作詞、1986年3月にリリースされた通算5枚目のシングルにあたる。

瑞々しいメロディと詞に澄んだ歌声が相俟った従来の由貴節に、リズミカルな躍動感が加味されて新境地が拓かれた作品。武部聡志によるアレンジも快心の作だった。同時に資生堂『モーニングフレッシュ』のCMソングにも起用されてダブルタイアップとなった。

斉藤由貴が20歳を迎えてすぐリリースさsれたアルバム「チャイム」

テレビから頻繁に流されたこともあり、週間チャートで最高3位、年間19位を記録する大きなヒットとなる。TBS『ザ・ベストテン』では2位にランクインした。大晦日には司会兼歌手で出演したNHK『第37回NHK紅白歌合戦』でも歌われた。声優を中心に他歌手にカバーされる機会も多く、歌手・斉藤由貴の代表作のひとつとなっている。当時最年少で紅白歌合戦の司会(紅組キャプテン)に挑み、歌まで披露したのだから、相当なプレッシャーであったに違いない。ちなみに白組キャプテンは加山雄三、斉藤の紅白出場は現在までにこの1回だけである。

「悲しみよこんにちは」は、斉藤由貴が20歳を迎えてすぐ、10月にリリースされたアルバム『チャイム』にも収録された。帯のキャッチに、"澄んだ波紋があなたの心に届きます" と掲げられたアルバムは全編曲を武部聡志が担当(一部、崎谷健次郎と併記)。玉置の楽曲はほかにはないが、森雪之丞はもう1曲「つけなかった嘘」という曲を作詞している。シングル「青空のかけら」も収録されていたせいか、秋のリリースながら、爽やかな夏の色合いが濃いアルバムだった。

オープニングテーマは途中から安全地帯「好きさ」にバトンタッチされ、さらに、松尾清憲「サニーシャイニーモーニング」、村下孝蔵「陽だまり」と展開。初年の秋に石原真理子主演の実写版劇場作品が公開された際には、連動してギルバート・オサリバンの「アローン・アゲイン」が主題歌に使われた回もある。裕作役は石黒賢だった。エンディングは来生たかお「あした晴れるか」に始まり、その後は「シ・ネ・マ」などピカソの曲が続いた。製作がキティ・フィルムであったため、主題歌もキティのアーティストが中心に起用されていた。

伊東美咲主演のスペシャルドラマが2本作られていた「めぞん一刻」

『めぞん一刻』で響子さんの声を演じたのは、『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリス役などでお馴染みの島本須美で、これがまた実に魅力的であった。1981年9月には、島本が音無響子名義で、挿入歌「予感」をシングルリリースしており、現在に連なるキャラクターソングのハシリといえる。

1988年には映画『めぞん一刻 完結篇』、1988年と1991年にはOVAも作られるなど、圧倒的にアニメのイメージが強い『めぞん一刻』だが、2007年と2008年に伊東美咲主演のスペシャルドラマが2本作られていたことは意外と知られていないかもしれない。『電車男』のエルメスさん役から少し後に伊東が演じた響子さんもなかなかに良かったのだ。出来ることなら斉藤由貴主演の実写版も見てみたかった。もちろん主題歌は「悲しみよこんにちは」で。

カタリベ: 鈴木啓之

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