藤井聡太八冠達成の一局、記録係が震えた「トップ棋士のすごみ」 福井出身の19歳、戸川悠二郎二段

戸川悠二郎二段

 将棋の藤井聡太八冠(21)が史上初の全8タイトル独占を果たした10月11日の第71期王座戦5番勝負第4局で、プロ棋士養成機関「関西奨励会」に在籍する福井県敦賀市出身の戸川悠二郎二段(19)=同志社大学1年=が記録係を務めた。歴史的な対局を間近で見届け、「一人の将棋ファンとして興奮した。トップ棋士のすごみ、集中力を垣間見た」と話し、県内初のプロ棋士、その先のタイトル戦出場へ意欲を新たにした。

 記録係は、指し手を記録して棋譜を作成し、対局者の残り持ち時間を知らせる「秒読み」も担当する。タイトル戦では有段者の奨励会員が務める。戸川二段にとって藤井八冠は、年齢は近いが「これからも歴史を塗り替えていく雲の上の存在」。偉業が懸かった対局の記録係に決まり「強い2人の先生なので必ず得るものがある」と感じたという。

 戸川二段は10日夕、対局者らが盤や駒の状態を確認する「検分」にも同席。藤井八冠は普段通りのひょうひょうとした雰囲気、一方の永瀬拓矢前王座(31)からは怖いほどの殺気を感じたという。

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 対局では序盤、中盤で永瀬前王座が研究の深さを発揮しペースを握ったが、その後は形勢が二転三転した。「永瀬先生には勝つために準備してきた執念、すごみを感じた。それに対し藤井先生は正確な手を淡々と指し続ける集中力がすごかった」。大一番でも気負わず、表情や姿勢を大きく変えないまま指し続ける藤井八冠の姿が印象的だったという。

 子どもの頃、羽生善治九段(53)が当時の全7冠を達成したと聞き、「自分も全冠制覇すると言って、将棋を勉強する原動力にしていた。それを目の前で藤井先生が塗り替えられた。本当にこんなことができる人間がいるんだなと驚いた」。夢というタイトル戦の舞台に向け「まだまだ足りないところだらけ。一歩一歩、勉強を続けプロ棋士を目指したい」と語った。  

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