昭和の茨城県石岡市を舞台に17年間駅に通い続けた、いちずな保護犬の姿を描いた映画「石岡タロー」が、20日からシネマサンシャイン土浦、シネプレックスつくば、イオンシネマ守谷、27日からユナイテッド・シネマ水戸で公開される。公開を前に映画監督の石坂アツシさんに作品への思いなどを聞いた。
-待望の劇場公開が迫ってきた。現在の心境は。
撮影が終わったのが2年前。ようやくという気持ちとヒットさせたいという心意気でいっぱいだ。
-制作発表直後にコロナ禍に突入するなど苦労が絶えなかった。
撮影開始から緊急事態宣言で出はなをくじかれ、2021年2月にようやくクランクイン。そこから2回の緊急事態宣言を経て12月まで撮影することになった。人生で一番長い10カ月になった。ファミリー映画なので、どうしてもシネコンで上映したく配給会社を探す苦労もあった。
-監督として、この作品のどこを見てほしいか。 実話を基にした映画。国道を1匹で歩くタローの姿が最初から頭にあった。そこから昭和当時に走っていた車、建物が少ない風景をどうやって再現し、映像化するかに力を入れた。
-海外の映画祭に出品し、インド、イタリア、オランダでは賞を獲得している。
現在のところ8カ国の映画祭で上映され、四つの最優秀長編映画賞を頂いた。感動物語は世界の人の心に届くという手応えを得ることができた。
-ロケ地は全て県内。石岡市民が登場する場面もある。
一番大切にしたかったのが昭和の雰囲気。それを出せる場所が見つけられた。それに空が広いことに感動した。茨城で撮って本当に良かった。市民が集まってタローへの思いを語るシーンを入れたが、出てくれたのは実際にタローと触れ合っていた40、50代の人々。ドキュメンタリーのような映像が撮れた。タローが石岡の風景の一部だったんだと感じた。
-茨城の上映は全国展開への鍵を握る。
茨城の4館の動員数によって全国に拡大できるかが決まる。重要な上映なので、できる限りの宣伝活動はやってきた。なるべく多くの方に知ってもらい、見に来てほしい。
■石坂アツシ(いしざか・あつし)
1962年生まれ。ビデオ制作会社、CG制作会社を経て現在はフリー映像作家。ビデオ、ゲーム、CG、DVDなどの企画、プロデュース、演出のほか、ビデオ編集ソフトの技術書の著書も多数。自主制作の短編映画は国内外の映画祭で上映されている。20日公開される「石岡タロー」は初の長編映画。