連載コラム【MLBマニアへの道】第5回:100勝チームが消える MVP級スターが打てない ポストシーズン新方式導入から2年連続で相次ぐ下剋上

写真:ベッツとフリーマンは今PSあわせて21打数1安打と苦しんだ

MLBのポストシーズンは、ワイルドカードシリーズ、ディビジョンシリーズの全日程が終了。リーグチャンピオンシップシリーズに進出する4チームは、レンジャーズ、アストロズ、ダイヤモンドバックス、フィリーズに決まった。

今回のポストシーズンは、下剋上が相次いでいる。ここまでに行われた8カードのうち、実に6カードでレギュラーシーズンの勝率が下回るチームが勝利した。今季100勝した3チームはいずれもディビジョンシリーズから登場したが、オリオールズとドジャースは全敗で敗退。両リーグ最多の104勝を挙げたブレーブスですら1勝3敗で姿を消した。

実はこれに近い傾向は昨年にもあった。昨シーズン100勝以上挙げたのは4チームだったが、メッツはワイルドカードシリーズ、ブレーブスとドジャースはディビジョンシリーズと、3チームが最初のシリーズで敗退。100勝チームで唯一勝ち上がっていったのが、ワールドシリーズ制覇したアストロズだった。

現在のポストシーズンの方式は昨年から導入されたものだ。従来はワイルドカードが2枠のみで、ワイルドカードゲームという一発勝負に勝利したチームがディビジョンシリーズに進む形だった。しかし、昨年からワイルドカードが3枠に拡充されたことでフォーマットが一新され、今年で新方式2年目ということになる。

新方式になってから、延べ7つの100勝チームのうち6つが最初のシリーズで姿を消すというのは、MLB側も想定していなかった事態に違いない。地区優勝し第1、第2シードに入ったチームは、ワイルドカードシリーズの間は休養期間になる。5日間休んで調整ができるというのは一見メリットに思えるし、ディビジョンシリーズの初戦に万全の状態のエースを起用することもできるため投手運用が楽になる。一方で「休みが長すぎて試合勘が鈍るのではないか」という懸念もある。

ナ・リーグでし烈なMVP争いを繰り広げたロナルド・アクーニャJr.、マット・オルソン、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンらは、このポストシーズン4選手合計で51打数7安打、打率.137に終わった。二塁打や本塁打を量産し続けた4人がこのポストシーズンで放った長打は、アクーニャJr.の二塁打1本だけだ。ブレーブスとドジャースに所属する彼らは、いずれもディビジョンシリーズからの登場だった。

しかし、100勝チームの敗退続出やスター選手の不振だけで、新方式が地区優勝チームに不利益をもたらしていると判断するのはまだ早いだろう。2年目ということでサンプル数が少なすぎることに加え、アストロズだけは問題なく勝ち続けている。

昨年のアストロズはレギュラーシーズンで106勝を挙げ第1シードに入った。ディビジョンシリーズ、リーグチャンピオンシップシリーズを全勝で駆け抜け、ワールドシリーズも4勝2敗で制覇した。今年のアストロズはシーズン最終戦で逆転地区優勝を果たすなどレギュラーシーズンは例年より苦しんだが、最終的には第2シードをつかんだ。勢いのあったツインズとのディビジョンシリーズで初登場したが、その勢いをものともせずに退けている。

新方式にもなんなく適応しているようにみえるアストロズと、それ以外の強豪チーム。一体何が違うのか。まだポストシーズン半ばだが、この新方式絡みの議論は今後も白熱していきそうだ。

文=Felix

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