ヨシムラの加藤陽平TDに聞く渥美心のEWC&全日本ロードでのスポット参戦「2024年を見据えて」

 9月に開催された2023EWC第4戦ボルドール24時間耐久ロードレースでヨシムラSERT Motulの第4ライダーとして登録された渥美心。10月14~15日に開催される全日本ロードレース選手権最終戦鈴鹿にもYOSHIMURA SUZUKI RIDEWINから出場が決まったが、この2戦への起用を決めた加藤陽平チームディレクターに経緯を聞いた。

 渥美はEWCではTONE RT SYNCEDGE 4413 BMW、OG MOTORSPORTでSSTクラスを経験。今年は開幕戦ル・マン24時間と第2戦スパ24時間をOG MOTORSPORTで、第3戦鈴鹿8耐ではS-PULSE DREAM RACING-ITECでEWCクラスを経験した。

 そして、その後にOG MOTORSPORTを離れてヨシムラSERT Motulの第4ライダー(リザーブライダー)に第4戦ボルドール24時間で起用されることが明かされて、予選では1分53秒142を記録して良い走りを披露した。

渥美心(ヨシムラSERT Motul)/2023EWCボルドール24時間

 渥美がヨシムラSERT Motulにたどりついた経緯をボルドールの現場で加藤氏に聞くと「スパ24時間が終わった後に渥美君の方から相談を受けました。今年、我々は第4ライダーを置いていなくて、24時間戦う上では何があるかわからないから心配ではありました」と語った。

 2021年は渡辺一樹、2022年はクリスチャン・イドンがリザーブとして予選まで帯同したが、渡辺はチームを離れ、イドンもスズキ系チームから変わったこともあり、2023年のヨシムラSERT Motulは第4ライダーを登録していなかった。

「第4ライダーはすごく探していたので、非常にありがたいですし、彼はEWCに魅力を感じて自分で飛び込んできて、一生懸命走って結果も残してきている。S-PULSEで鈴鹿2&4、鈴鹿8耐に参戦されて、非常に良い走りをしていたので本当に迷いなく決めました。感謝しています」

渥美心(ヨシムラSERT Motul)/2023EWCボルドール24時間

 また、ヨシムラ側はただ最終戦のリザーブのために渥美を起用したわけではない。加藤氏が「EWCのパドックからは退くという話を鈴鹿8耐の後にもらって……」と語る通り、今季限りで同チームを去るシルバン・ギュントーリの後任を探す必要もあった。さらに渥美がSSTクラスからEWCクラスにステップアップするにあたりトップチームへの所属を望んでいたことなどのタイミングが重なったこともある。

 その流れで全日本ロード最終戦鈴鹿への参戦も決まったのだが、来季のEWCライダー候補のひとりとして鈴鹿での走りが期待されている。

「我々も日本人がレギュラーメンバーにいないので、来季以降にそこにチャレンジしてもらえる、いい機会かなと思います。走らせる上では当然2024年を見据えての目線もないと失礼だし、本人もそこを掴みたいから、今回のオファーを受けてくれて、精一杯頑張ってくれています」と加藤氏はこの2戦での起用の意味を説明した。

 ボルドール24時間の予選では、2021年に渡辺が記録した1分53秒002に迫る1分53秒142をこのレースウイークに初めて駆ったマシンでマークした。

 この走りについては「ぶっつけ本番のウイークで、少ない走行時間でオートバイにアジャストして、ペースを上げてくれました。タイムアタックというような機会はなかったですが、初年度の渡辺一樹が予選で記録したタイムとほぼ遜色ないところまで、出してくれたし、本当にいい意味で驚いているし、私も含めてチームのみんなの評価もすごい上がっています」と続けた。

 残るは全日本ロード最終戦での2レース。木曜日と金曜日の走行では2分07秒台に入れて上位のタイムを記録している。この週末にもパフォーマンスを発揮して、ヨシムラSERT Motulの2024年のシートを獲得できるだろうか。

加藤陽平ディレクター(ヨシムラSERT Motul)/2023EWC第4戦ボルドール24時間

© 株式会社三栄