ウクライナにクリスマスの贈り物を 避難者が手作り品を販売し祖国支援 22、28日に神戸

自作のモタンカ人形を手にするテティアナ・グゼンコさん(右)と磯野和美さん=神戸市東灘区

 祖国ウクライナのために避難先でできることを-。兵庫県内の避難者の願いが10月、「ウクライナショップ」として実現する。ボランティアの協力で、民芸品など手作りの品を販売するブースを神戸のイベントに出店。売り上げをクリスマスの贈り物の購入資金に充てる。市民との交流の場とすることで「戦闘が続く状況に関心を持ち続けてほしい」と呼びかける。(田中真治)

 きっかけをつくったのは神戸・阪神間で美術教室を主宰する磯野和美さん(60)=神戸市灘区。10年ほど前に友人の紹介で、通訳などの仕事で日本と行き来するウクライナ人女性と親しくなり、首都キーウ(キエフ)市内にある実家を訪ねた。「町はきれいで、人はフレンドリー。どの国よりも気が合った」

 新型コロナウイルス禍が明けたら再訪しようと考えていた昨年2月、ロシア軍侵攻のニュースが流れた。「まさかと思ったが、彼女の家の近くにも爆弾が落とされた」。不足していると聞いた食料品や薬を送り、停電が続いた昨年末には約30万円の寄付を集めて防寒着などを届け、個人で顔の見える支援を続けてきた。

 ウクライナからの避難者ともつながりができる中、「自分たちは安全な場所にいるが、何もできないことがつらく、後ろめたい」との悩みを打ち明けられた。磯野さん自身、阪神・淡路大震災ではボランティアにかかわり、気持ちは痛いほど分かった。

 そんな折、避難者の家で目にしたのが、手慰みの小物類。「みんなで作って売ってみては」。磯野さんが教室のスタッフとして受け入れているテティアナ・グゼンコさん(28)=尼崎市=らに提案すると、「ぜひやってみたい」と20人余りに賛同の輪が広がった。

 グゼンコさんはキーウの大学で日本語を学んだことがあり、昨年11月に来日。「大学の友達にも、家族の命を奪われた人がたくさんいる」と表情を曇らせる。ショップに出すのは、布に糸を巻きつけて作るモタンカ人形。幸福や健康を願う伝統的なお守りだ。「ウクライナは(これまでより)もっと大変になっている。いっぱい作るのでたくさんの人に来てほしい」

 ブースにはアクセサリーやマスコット、キーウのアーティストがデザインしたTシャツやエコバッグなどを並べ、モタンカ人形作りのワークショップも開く。磯野さんは「子どもたちの菓子や生活必需品を送り、ウクライナのことを忘れていないと伝えたい」と話し、息の長い支援を訴える。

 10月22日の神戸海星女子学院大(神戸市灘区青谷町2)の大学祭、28日のJICA関西(同市中央区脇浜海岸通1)の秋祭りに出店する。いずれも午前10時~午後5時。

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