音楽家・鶴久政治「皆さん大声で歌ってほしいです」60年代の匂いがする『ぴるあぽ』新曲制作秘話

9人組アイドルグループPeel the Apple(愛称ぴるあぽ)が10月16日に2ndミニアルバム『Apple bobbing』をリリースする。今回は9人のメンバーが3名編成のユニットを作り、3形態のCDを発売。このセールスをチームで競う、という企画が実施される。優勝ユニットは新曲とMVを制作することができるが、最下位ユニットには駅伝形式で走る42.195kmのフルマラソンの罰ゲームが待っている。各チームのCDには異なったボーナストラックがついていて、TYPE-C(春海りお、松村美月、山崎玲奈)には音楽家の鶴久政治が作曲を担当した『Love me do』が収録されている。鶴久は2023年3月から4月にかけて放送された、ぴるあぽ初の冠番組『Peel the Appleの#ぴるあぽ拡散希望』の第1回ゲストとしてメンバーと共演したという縁がある。ぴるあぽのキュートな側面にフォーカスしたこの楽曲は、どのようにして生まれたのか。制作の背景について単独インタビューを行った。

■大御所2人のMCに対して、ものおじしないぴるあぽの度胸に感心

――鶴久さんはPeel the Appleの初冠番組『Peel the Appleの#ぴるあぽ拡散希望』の第1回目のゲストで出演されました。Peel the Appleは、どんなグループだと感じましたか?

最初、メンバーがMCの小木博明さん(おぎやはぎ)と柴田英嗣さん(アンタッチャブル)と絡んでいたんですけれど、すごく堂々として落ち着いていて。僕が登場した時は、すでに場ができあがっている感じだったので、とても話しやすかったです。たぶんお互いの世代があまりにも違いすぎていたので、彼女たちはまったく緊張しなかったんだと思いますね(笑)。でもその方がやりやすかったです。

それから今のアイドルはグループが多くて、メンバーは歌が上手い人、踊りが上手い人、人気が出そうなルックスの人、面白い人など、いろいろなキャラクターの人がいるじゃないですか。ぴるあぽは、一通りのキャラがそろっていましたね。

――番組の中で印象に残ったやり取りはありますか?

番組内で楽曲提供の話になったのですが、その時はみんなすごく真顔になって。一瞬で期待されている感じがしたので、“これはちゃんとしなきゃいけないな”と思いました。アコギがあったのでバラードを歌ってみたところ、みんなのリアクションも良く、喜んでくれたんですよ。

アイドルは表題曲をバラードにして歌うことがあまりないので、その時はバラード曲を提供したら面白いかな、と思ったんですね。でもその後、ぴるあぽのMUSIC VIDEOを見た時に、やはり踊れた方がファンの人たちもコンサート会場で楽しいだろう、と感じました。

何より今、コロナ禍の規制が少しずつ解除され始めて、その日に僕は乃木坂46のコンサートを見に行ったんですよ。そうしたら、ちょうどお客さんの声出しOKの日で。みんな歌いながら泣いていて、それにすごく感動しました。

だからこれはバラードじゃないな、と。みんなで踊って声を出して、一体感が生まれるような曲がいいなと考えたんです。テレビの最終回放映時に本人たちのレコーディング風景で流れましたけれども、『Love me do』という曲を作り、歌ってもらったらことのほか似合っていたので、ホッとしました。

■『Love me do』は60年代ガールズグループの匂いを取り入れた

――『Love me do』を聴かせていただきましたが、一体感がありながら、おしゃれでかわいいラブソングですね。

僕が1960年代の音楽で一番影響を受けているのは、ガールズグループです。その時の楽曲で、「この曲、ぴるあぽに似合うかな?」と何曲か選んで、『Love me do』はそれらとコード進行が近い曲になっています。これはパッと聴いても、その時代の影響を受けている人にしかおそらく分からないと思います。

――1960年代の匂いを『Love me do』で出された、ということですか?

そうです。今回、ぴるあぽはポップな曲も似合うかなと思ったのと、僕は秋元康さんプロデュースのコンペによく楽曲を出すんですけれども、20代、30代の人の若い音楽クリエイターの人たちも提出していまして。彼らは今の感じでやっているから、僕はあえて自分が影響を受けた60年代のルーツに基づいた楽曲を作ってみて。松田聖子ちゃんの曲で流行ったリズムがあるんですけれど、その元はThe Ronettes(ザ・ロネッツ) の『Be My Baby』という曲なんです。そういうのを匂わせて、ルーツの元はこんな感じだよということを、『Love me do』でこだわりとして入れました。

分からない人は分からなくていいんですけれども、「素敵だな。かわいいな」と少しでも受け取ってくれたらうれしいな、と思っています。ただ僕が古い感じのメロディをわざと作るので、アレンジはちょっと今風にしてバランスをとっています。

それとアイドルの子だと声が重なってくるから、ブレスの部分はあまり必要なかったりするんですけども、僕はグループで歌う場合でも絶対ブレスを入れていて。1人でもその歌を好きになってくれた人が、カラオケに行った時に歌いやすいようにしています。曲ができたら時間のある限りずっと自分で歌ってみて、「ここは歌いやすいな」「ここは今一つだから、仕掛けが欲しいな」とか、そんな感じで判断しているんですよ。

『Love me do』は全体的にポップな感じなんですけれど、自分の中ではそんなに軽いポップではないです。イメージが明るい曲だと、作る時はちょっと難しくて。実はマイナーコードの方が記憶に残りやすかったり、刺さりやすいかな、と思います。チェッカーズの時も、マイナーコードの方が曲としては多かったので。

――なるほど。

そのバランスはいろいろですね。分かりやすく言うと、メジャーで始まるとBメロはちょっとマイナーを入れて、またサビは明るくする。マイナーで始まると、Bメロを明るくして、サビもマイナーにしたりします。

ただ僕らはデビューして40年くらいになるんですが、昔はレコードだったのでイントロから聴けたじゃないですか。でも今は好きな箇所から聴けたり、飛ばしたりできるので、サビの部分だけはインパクトを持たせたりしないと、すぐに捨てられる状況ですね。その辺も少し意識しながら今はやっています。

――今の動向を見ながらも、楽曲の流れを非常に大事にされているんですね。

そうですね。ただ、僕は曲の中に転調を入れるのがあまり好きではないんです。でも今は転調を入れた方が、場面が変わってかっこいいんですよね。これは20年前くらいから小室哲哉さんがやってらっしゃったことを、秋元康さんが手掛けているアイドルの楽曲で、作家陣がよくやっていることで。これを取り入れて自然に聞こえるのであれば、自分もやろうかな、と思いました。

去年STU48が歌ってくれた楽曲『花は誰のもの?』(鶴久政治が作曲を担当)も音域が広いので、これは転調を入れないと歌いにくいかな、ということで転調させたんです。そうしたら、自分の中では少し刺激的だったんですよ。だから今回の『Love me do』も転調を入れています。メンバーは歌っていて難しいかもしれませんけれど、それをあまり感じさせない楽曲だとは思います。

■言われるままやるよりも、自主性を持ってやる方が楽しい

――鶴久さんは『Love me do』でPeel the Appleのどんな魅力が広がればいいな、と思われますか?

本人たちと会って話す機会があれば、「この人が歌った、この曲のコード進行を参考にしているんだよ」と教えたいんですよ。今は検索すると白黒の映像ですけれど、YouTubeで見ることができますから。昔のThe Supremes(60年代に活躍したアメリカの4人組ガールズグループ)とか、今のアイドルたちがその映像を見ると、振り付けや髪型など、ヒントがいっぱいあるような気がします。

だからそれを見て、ステップしながら、クラップしながら歌うのは、これだけかわいくて素敵なことだと分かってくれたらうれしいですね。

――昔はそういった過去の映像を探すのも大変でしたけれど、今はネットで簡単に見ることができるようになったから、勉強できますよね。

昔の踊りが上手い人だと、ヒールを履いたままステップを踏んだりしているから、やっぱりすごいな、と思います。安室奈美恵ちゃんがステージでヒールを履いたまま激しい踊りをしながら歌っているのを見た時、この人はすごいな、と思いました。かっこよく見せるというプロ意識ですよね。

今は動画もすぐ撮れるじゃないですか。ライブの時にスマホでスタッフに自分たちのパフォーマンスを撮ってもらって、自分たちでそれを見て、自分たちで課題に気づいて、自分たちでそれを改善していくのが一番いいと思います。

チェッカーズの時も、周りからいろいろ言われるのが嫌だったから、ライブのフォーメーションも衣装も照明も、自分たちで全部決めてリクエストしてやっていたんですよね。じゃないと、楽しくないじゃないですか。

――そうですよね。

僕は野球が好きでよく見ているんですけれど、好きな球団の監督が「グラウンドでやるのは選手たちだから。監督は何も言わず、自分たちでサインを決めて、自主的に試合の中で楽しんで、見せるプレーをする。それが一番楽しいんじゃない?」とコメントしていて。確かにそうだなと思ったんですよ。

■何事も上達の方法は、練習を積み重ねて自ら気づくこと

――『Love me do』は“歌っていて難しいかもしれません”というお話がありましたが、ボーカルを上達させるためには、どんなことが大切でしょうか?

やはり、歌の練習をするしかないです。僕も若い時、作曲の師匠たちに作曲のことをいろいろ聞いたら、「それは作曲するしかない」と言われました。例えば人から「こうだよ」と言われてやって、それが形になって人から評価されたとしても、自分で気づいてやっていないと、すぐに次の壁が来てしまいます。

そしてお客さんがたくさんいる前で歌うことが、一番上手くなるんですよ。たとえ歌が上手い人でも、大人数の前に立った時に緊張して歌えなかったら、結局、世の中からは“緊張する下手な人”に見えてしまう。ただ、ぴるあぽの場合は、みんな度胸が良さそうな感じだったので、そういう緊張はないかもしれないですね(笑)。

とにかく人前でたくさんの経験を積んでいく。たとえば「今日は音程重視で行こう。だから踊りはちょっとセーブする」とか、その日の目標を立ててみる。自分で録画したものを見て、「これぐらいならいいな」などと振り返る。その一つ一つの積み重ねではないでしょうか。

漠然と「じゃあ今日もやるぞ。イエーイ!」とやっていても、あまりうまくはならない。お客さんは盛り上がってくれるから、「今日も盛り上がったね」で終わってしまう。そうではなくて、“今日も成長したな。今日も気づいたな”と判断する冷静な自分がいると、どんどん成長すると思います。

僕もずっと曲を作っていますが、50歳を過ぎて「このコード進行はいいな」と思ったら、ずいぶん前からほかの人たちがやっていた、ということもあります(笑)。それでも気づけると、自分の引き出しが増える。人から教えてもらうより、自分で気づいた方がうれしいですよ。自信もつきますし、堂々と世の中にそれを出せると思います。

――『Love me do』は、ファンの方にはどんなふうに楽しんでもらいたいですか?

サビのところのおっかけの<Love Love me Do>は、皆さん大声で歌ってほしいです。僕らもライブをやっていた時はそうだったんですけれど、そもそもお客さんの返しは、何より本人たちがめちゃくちゃ盛り上がってくるんですよ。

まずこちらから投げるんですけれど、向こう(ファン)から来るじゃないですか。それがすごくうれしいから、その倍にして返す。そうすると、また倍になって返ってくるんですよ。そのやりとりがライブの一番の良さなので。まずは本人たちがどんどんファンの人に投げて、サビのところの<Love Love me Do>はファンの人に大声で歌っていただきたいですね。

――最後にPeel the Appleのメンバーに対して、応援のメッセージをお願いいたします。

これまで自主的にやることの大切さをお話しましたが、一方でアイドルは人気商売なので、どうしても評価は周りが決める形になります。ファンの人と本人たちの間にはスタッフさんが入っているから、スタッフさんの言うことはなるべく聞いた方がいいと思います。

たとえば自分がやりたいことはAなんだけども、スタッフさんがBと言ったら、まずBの方に対してしっかりトライする。そういった腹のくくり方も大事ですね。

よく“人から見られた自分を気にするな”と歌詞の中では出てきますけれど(笑)、やっぱり人が決めることなので。「あなたの右側の顔がいいのよ」と言われたら、自分は左側が好きでも、右側の顔を強調した方がいいと思うんです。頑固な部分と柔らかく取り入れる部分。この2つを持ち合わせてやっていくことが大事かな、と思います。

<鶴久政治>
1964年3月31日生まれ。チェッカーズ「ギザギザハートの子守唄」でデビュー。チェッカーズ・光GENJI・高井麻巳子・岩井由紀子などアイドルやアーティストに多くの楽曲提供している。

【リリースイベントスケジュール】
10/15(日) 東京・東京文具協和会館 1部/12:00~ 2部/16:00~ 特典会/TikTok◎/ビンゴ大会
10/16(月) 東京・池袋サンシャイン噴水広場 1部/15:00~ 2部/17:00~ ミニライブ/特典会/TikTok×
10/18(水) 東京・タワーレコード錦糸町パルコ店 店内イベントスペース/19:00~ 特典会/TikTok◎
10/19(木) 神奈川・タワーレコード横浜ビブレ店 店内イベントスペース/19:00~ 特典会/TikTok◎
10/20(金) 東京・タワーレコード渋谷店 B1F CUTUP STUDIO /19:00~ ミニライブ/特典会/TikTok◎
10/21(土) <広島・黒嵜・春海>神奈川・タワーレコード川崎店 店内イベントスペース 1部/13:00~ 2部/15:00~ 3部/17:00~ 特典会/TikTok◎
<浅原・南・山崎>愛知・タワーレコード名古屋パルコ店 店内イベントスペース 1部/13:30~ 2部/15:30~ 3部/17:30~ 特典会/TikTok◎
<小田垣・佐野・松村>大阪・タワーレコード梅田 NU 茶屋町店 店内イベントスペース 1部/14:00~ 2部/16:00~ 3部/18:00~ 特典会/TikTok◎
11/4(土) 都内某所(終日リリースイベント)

詳細は、Peel the Appleオフィシャルサイト・公式SNSをご確認ください。
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