前戦SUGOでまさかの失格となったAstemo、松下信治「レーサーはレースで取り返すしかない」

 10月14〜15日に大分県のオートポリスで行われる2023スーパーGT第7戦『AUTOPOLIS GT450km RACE』。シーズンも残り2戦となり、チャンピオン争いも佳境に差し掛かってきた。ここからは、1ポイントの取りこぼしも許されないレースとなるなか、前回の第6戦SUGOで貴重な大量ポイントを取りこぼすかたちになったのが、17号車Astemo NSX-GTだ。

 8号車ARTA MUGEN NSX-GTと熾烈なトップ争いを繰り広げた17号車は、一時はトップの座を明け渡すも、後半スティントを担当した塚越広大が、わずかなチャンスを見逃さずに逆転。そのまま逃げ切ってトップチェッカーを受けた。しかし、レース後の再車検でスキッドブロックの厚みが規定を満たしておらず、失格の裁定が下った。

「そんなことあるのだなと思いました。『天国から地獄へ』というのは、まさにこのことだなと……でも仕方がないです」と話すのは、決勝前半スティントを担当した松下信治。塚越が8号車を抜き返した際も、ガレージ内で立ち上がってガッツポーズを見せていた。

「過去にFIA F2でそういったことがありましたけど、まさかスーパーGTでも起こるとは……。暫定表彰式も終わっていましたからね(苦笑)」と松下。あれから約1カ月が経ったが、気持ちの整理がついているわけではないという。

「レーサーはレースでしか取り戻せないので、今回(結果を残せるまでは)切り替えられない部分はあります。心のなかでは集中していますけど、その想いを取り返すには今回勝つしかないです」

 前回の悔しさを晴らすためにも、今回は何としても好結果が必要。そこに向けた手応えは松下自身も感じているようで、「SUGOでもそうでしたがクルマは速いですし、チームの力はあるので勝負に参加できると思います。レースはいろいろなものが噛み合って優勝につながるので、そこの噛み合いには“運”も大事です。とにかく全力で頑張ります!」と語った。

2023スーパーGT第7戦オートポリス Astemo NSX-GT

 昨年のオートポリス大会では、公式練習中に松下がクラッシュを喫し、予選Q1まで時間がないなかでメカニックたちが懸命にマシンを修復し、予選Q1開始5分前に作業が完了。そこから勢いを掴んでいき、決勝では優勝を手にした。

 展開を味方につけた1勝ではあったものの、全体的なペースも悪くはなかった。それだけに今回への期待も高まる。ただ、昨年と違うのは決勝レースの距離が450kmに伸びたことだ。各陣営とも未知数な部分が多いと口を揃えて話しているが、松下は「今年は距離が長くなって、どうなるか分からないところもありますが、僕たちは後半も強いタイプではあるので、そこは粘り強くいきたいです」とコメント。レースペースの部分では自信を持っているようだ。

 その分、重要になってくるのが土曜日の予選。「当然、予選で前に行かないとこのサーキットはなかなか抜けないです。NSX-GTはストレートがあまり速くはないので予選は大事ですね。必ずトップ3にいないといけないかなと思いますし、ポール・オースターを狙う感じでいきたいです。サクセスウエイトが軽いマシンたちもいますし、今はヨコハマタイヤ勢も速いですからね」と、松下はライバルの動向を警戒していた。

 それでも「とはいえ、ウチも速いので頑張ります!」とキッパリ。チャンピオン獲得のためにも、今回は何がなんでも結果を残すことだけに集中していた。

 そんな松下は先月下旬に鈴鹿サーキットで開催されたF1日本グランプリに来場。DAZNでの中継に参加したほか、決勝レースでは場内放送の解説を務めた。レース前には、以前から親交のあるアレクサンダー・アルボンと都内で会ったり、ジョージ・ラッセルやローガン・サージェントと相撲観戦に行った様子が本人のSNSに投稿されて話題となった。

 そのときについては「向こうから連絡がきました」と松下。「僕の友達が相撲協会で働いていて、(チケットを)頼んで用意してもらい、ジョージ(・ラッセル)とサージェントといきました。彼らと会って話すと、F1はみんな忙しくて大変そうだなという感じでしたね」とエピソードを披露してくれた。

2023スーパーGT第7戦オートポリス 塚越広大(Astemo NSX-GT)

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