1歳世代にはダービー馬ドウデュース半弟がラインナップ!評価のほどは?期待の2歳馬は?――インゼルTCに聞く

阪神1600mの2歳新馬戦(9/10)を1:34.8の好タイムで勝ち上がったビーグラッド、2勝クラス戦(9/23)で1.3倍の断然人気を背負い、出遅れながらも外を回し完勝という内容だったオーサムリザルト。来年に向けて躍進の兆しを見せているのがインゼルサラブレッドクラブだ。

重賞勝利馬こそまだ出ていないが、1世代目となる3歳も20頭中9頭が勝ち上がり、2世代目(2歳)も勝ち上がり間近な馬たちが多く、良血馬もデビューを控えている。3世代目(1歳)のラインナップも発表された今、改めて各馬への期待度や展望を同クラブ・湯日健治さんに聞いた。

「クラシックに乗れる馬」を出したい

オーサムリザルト(提供:INSEL TC)

――まずは3歳世代ですが、オーサムリザルトは良い勝ち方(9月23日・2勝クラス)をしましたね。

出遅れたんですが、勝ち時計も良く、強い競馬でしたね。この馬は2勝目に川田騎手が乗られたときに「絶対に大事に行きましょう」と仰られていて、池江先生も「詰めて使うタイプではないので、焦らずじっくりやりましょう」という方針です。

牝馬ですし、心身ともに幼いところもあります。レースでも危うい所がありますから、ゆっくり調整していって成長してくれれば。あと一つ勝てばオープン馬ですので、牝馬のグレード競走など魅力的な選択肢も増えていくのではないかと思いますね。

――その一方でネビュルーズやアンテロースなど、1勝クラスで勝ちきれなかった部分もありました。

いまの3歳は、クリダームを皮切りにネビュルーズ、ルクルス、ラヴェリテが新馬を勝って、9頭が勝ち上がってくれました。いまは休んでいる馬もいますが、じっくりやって古馬になってから活躍をしてくれる馬もいますので悲観はしていません。

14日(土)はネビュルーズが1勝クラスに出走します。新馬戦はすごく良い勝ち方をしてくれて、「クラシックに乗れるな」と思ったんですが、頓挫があったりして数を使えなかった。今回はマイル戦になりますが、東京のワンターンですし、改めて適性を探って行ければと思っています。

アンテロースも今は休んでいますが、どこも悪い所はないので年内にはまた使えると思います。とにかく数を使えるのがセールスポイントですし、1勝クラスを2着するところまで来ていますからね。

あとはルクルス。とにかく育成時から騎乗スタッフの評価が高かった馬。ハ行があったり夏負けがあったりと、ここまではうまくいきませんでしたが、ハクサンムーンの下ですし、短距離でこれから良いスピードを見せてくれるんじゃないかと期待しています。

――ありがとうございます。2歳に目を移すと、アンテロースの半妹であるビーグラッドは楽しみな勝ち方をしましたね。

調教でも動いていましたし、担当の方がメイショウハリオをやっている助手さんなんです。牝馬なので繊細な部分はあるんですが、大事に調整してもらって良いスピードを見せてくれましたよね。

一度チャンピオンヒルズに放牧に出して、萩Sを目標に先週帰厩しました。本来はアルテミスSも考えたのですが、繊細な部分と輸送の影響を考慮して、当日輸送で挑めるレースを選択しました。牡馬も含め相手の揃うレースなので、ここでどういう競馬をしてくれるか。良い競馬をしてくれれば、暮れのG1もという期待もあります。

――あとはシルヴァリームーン、ロクシアス、ブラーヴイストワルも勝ち上がり間近まで来ています。

シルヴァリームーン(提供:INSEL TC)

シルヴァリームーンは直線を向いたときに「交わせるな」と思ったのですが、武騎手も言っていたように大外枠の影響が大きかったですね。ただジョッキーも「良い走りをしますね」と褒めてくれました。全然悲観する材料はなかったですし、馬体にもまだ余裕がありましたから、折り返しの未勝利戦は確実に勝っておきたいところ。

ロクシアスは初戦、2戦目と勝負どころで窮屈な競馬になってしまいましたよね…。国枝先生はレース後に「2000くらいでも良いかも」と仰っていたので、次は距離を延ばすかもしれません。上は走っていないですが、この母からの産駒では一番走るかもという手ごたえがあります。

ブラーヴイストワルは連続2着。特に2戦目は相手が悪かったですね…。ただ武騎手からも「距離の融通は効きそう」と言われていますし「勝った馬は強かったけどこの馬も楽しみですよ」と。アルアインを手掛けてくださった方が担当してくださってますし、デビュー前から高い評価をいただいていたので、何とか早めに勝ち上がりたいですね。

デビュー前の組だとアムールリーべは担当の方から「えらい背中がいい馬だね」と。カルデアも厩舎スタッフからの評判が高いです。2頭とも友道先生で、年末から年明けにかけてのデビューを期待しています。エピファドールも、厩舎で助手をされている芹沢元騎手が「すごく乗り味がいい」と褒めていただいたんですよね。この馬は楽しみかもしれません。

――1世代目(3歳世代)から2世代目(2歳世代)と、何か変わった部分はありますか?

やはり1世代目は初めてなので、牧場さんも意識されていましたし、厩舎さんも「早く勝たせてあげたい」と思っていただいた部分は多少あったかもしれません。クリダームも早くから「函館の1200でデビュー」と言われていましたし。実際に重賞2着まで行きましたからね。

とはいえ「馬に合わせて」という基本方針は変わっていません。2世代目では何とかクラシックに乗れる馬を出したいですね。

ダービー馬の半弟・ダストアンドダイヤモンズ22の評価は?

ダストアンドダイヤモンズ22(提供:INSEL TC)

――そしてこの1歳はクラブ3世代目となりますが、やはり目玉はドウデュースの下となるダストアンドダイヤモンズ22(父リアルスティール)でしょうか。

去年のノーザンファームミックスセールで購買しました。牧場の方も仰られてましたが、「ドウデュースとは全くタイプが違いますね」と。この母どうやら父の特徴を出すタイプのようで、リアルスティールと似ていて脚長の体型をしています。

ドウデュースは5月生まれですが、本馬は1月生まれで478キロ。友道先生ですから芝の中距離での活躍を期待したいです。父の成績も上がってきましたからね。ダービー馬の下なのでどうしても値段が高くなってしまうのですが、そういった馬がクラブで募集されることも中々ないですからね。注目してもらいたいです。

――さらには、ファタルベーレ22、アイリスフィール22、エリザベスムーン22あたりのリーディング上位種牡馬は人気が高そうですね。

特にファタルベーレ22(父キズナ)は、手塚厩舎でキズナの男馬、価格もリーズナブルなので、人気するだろうなと思っていました。牧場スタッフは「ディープボンドに似ている」と言っているんですよね。471キロと馬格もしっかりしていますし、楽しみな馬だと思います。

あとはドゥラメンテ産駒がラストクロップですので、こちらも人気を集めるのは頷けるなと。エリザベスムーン22は上が走っていないですが母系が豪華ですから、いつ走る仔が出てもおかしくないなと思います。アイリスフィール22は少し馬体が小さい(439キロ)んですが、牧場スタッフも「母のこの時期は同じくらいだったので問題ないです」と仰っていました。

――さらに新種牡馬つながりで言うと、マンディ22(父ナダル)、ジンジャーミスト22(父ゴールドドリーム)もラインナップされています。

ジンジャーミスト22(提供:INSEL TC)

父ナダルは、個人的にはまだ適性が分からないなと思いますが、大きい馬が多いので恐らくダートが主流かなと。マンディ22は本当に立派な馬ですし、来年はダート三冠も充実しますし、そういった路線に照準を定めるのも良いかもしれません。

父ゴールドドリームは、馬産地で評価の高かったゴールドアリュールの後継。ジンジャーミスト22もミックスセールでの購入馬で、友道先生に見ていただいて預託が決まりました。母系もしっかりしていますし、芝でも期待できるかなと思いますが、厩舎も去年チャンピオンズCを勝っていますからね。これも楽しみにしています。

――その他、クラブとして面白そうな馬をあげるとすれば?

エルパンドール22(父ヘニーヒューズ)は、まだそれほど人気がないですが、価格が安い中ではオススメできるかなと。ダートということで考えていただいたほうがいいと思いますが、母系もしっかりしていますし、先ほど触れたとおり上の評価も高いですからね。

あとはソフトライム22(父ハービンジャー)。5月生まれで馬体が小さい(389キロ)なので、まだあまり票が入っていませんが、ペリエールの下ですからね。ただ、母父フジキセキ、母系にスキーパラダイスが入っていることを考えると芝かもしれません。父らしい成長力を見せてもらいたいなと思います。

マーメイドSを勝ったサラス22(父ブリックスアンドモルタル)は初仔ですが立派な馬格で丈夫な感じで出てきてくれました。父の産駒が重賞を勝ちましたし、改めて注目していただけるのではと思います。

――さらに今年も、父に外国種牡馬の産駒も3頭ラインナップされています。

マジックヒューマー22(提供:INSEL TC)

マジックヒューマー22(父Catholic Boy)は、クラブとしては初めて預託する武英智調教師ですが、牧場にももう何度も見に行っていただいています。米国血統ですしダートかなと思いますが、父父モアザンレディからはジャングロも出ています。母父からは世界で活躍馬が多く出ていますから、個人的には楽しみにしていますよ。

シタディリオ22(父Saxon Warrior)は、父の産駒で2頭目の藤原厩舎預託となります。馬体は立派ですし、この父はもっと走っていいと思うので注目しています。メイディーン22(父Nyquist)もダート寄りかなと思いますが、雄大な馬体をしており、アメリカ血統なので仕上がりも早いと思います。けっして短距離馬ではなく、厩舎の仕上げ方によっては長めの距離での活躍も十分考えられますね。

――たくさんの馬に触れていただきありがとうございます。最後にこの世代にかける期待度と、今後のクラブ運営に関する展望をお願いいたします。

セールを見ても市場価格はかなり上がっていますが、「今年も良血馬を」という会員様の期待に応えたいと思い、今年度1歳のラインナップとなりました。今日は触れられなかった馬もいますが、預託予定の厩舎も含めて、他のクラブさんと比較しても遜色ない馬を集められたと思います。

さらに競走成績においても、現2歳世代ではクラシックへ出られる馬を何とか輩出したい。また3歳世代も含めて重賞勝ちを狙っていきたいです。1歳世代もバラエティに富んでいると思いますし、きっちり走る馬を見極めていただけたら嬉しいですね。

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