周囲からの影響を受けた“おとめ座銀河団”の渦巻銀河 ハッブル宇宙望遠鏡で撮影

こちらは「おとめ座」(乙女座)の方向約5500万光年先の渦巻銀河「NGC 4654」です。NGC 4654は渦巻腕(渦状腕)に囲まれた中心部分に棒状構造がある「棒渦巻銀河」と、棒状構造がない「渦巻銀河」の中間的な性質を持つ銀河(Intermediate Spiral Galaxy、中間渦巻銀河とも)に分類されています。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された渦巻銀河「NGC 4654」(Credit: NASA's Hubble Space Telescope, ESA, and J. Lee (Space Telescope Science Institute); Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))】

アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、おとめ座銀河団を構成する銀河の一つであるNGC 4654は銀河団の中を移動することで、銀河団の内部を満たす銀河団ガスからラム圧(動圧)を受けている可能性があるといいます。また、現在観測されている状態から約5億年前に別の渦巻銀河「NGC 4639」(※画像には写っていません)と重力を介して相互作用したことでガスの一部が剥ぎ取られた結果、その後に形成された星の分布に偏りが生じたと考えられています。ラム圧や銀河どうしの相互作用の影響は、NGC 4654から伸びる細長い水素ガスの尾や非対称な星々の分布に現れているとみられています。

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータ(近紫外線・可視光線・近赤外線のフィルターを使用)をもとに作成されています。ハッブル宇宙望遠鏡による今回のNGC 4654の観測は、若い星の材料である低温ガスと銀河の関係の調査を目的とした観測プロジェクト「PHANGS」(Physics at High Angular resolution in Nearby GalaxieS)の一環として2019年12月に実施されました。

冒頭の画像はNASAから2023年10月2日付で公開されています。

Source

  • NASA \- Hubble Views A Vibrant Virgo Cluster Galaxy

文/sorae編集部

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