札幌市円山動物園 運営方針の変化で見えたこれからの役割とは?

今週のテーマは、札幌の円山動物園。ことし8月に赤ちゃんゾウが誕生し、多くの人でにぎわいを見せている。その動物園を支えているのは?実は「動物大好き」のMC杉村太蔵さんと秘密を探る。

【赤ちゃんすくすく ゾウ舎の鍵は“準間接飼育”】

まずは、入るのに1時間待ちというゾウ舎へ。ゾウがいきいきと暮らすことができる環境を求め、総工費30億円をかけて2018年に完成した。大きさは国内最大規模だ。

ゾウ担当の坪松さんは「動物園の業界の中で一番死亡事故が多いのがゾウだが、それは『直接飼育』だから。円山動物園ではそういった事故がないよう、檻越しに健康管理を行う『準間接飼育』を取り入れている」と話す。柵越しに飼育する準間接飼育はゾウにとってはストレスが少なく、飼育員にとっても安全に飼育管理を行うことができる方法として、近年世界的に導入が進んでいる。準間接飼育でのゾウの出産は国内初だ。

子ゾウの現在の体重は約190キロ。「これからどんどん活発になっていくので、予期せぬ行動をして事故につながらないか気を付けている」という坪松さん。子ゾウの日々の成長や、お母さんのパールがどのように子ゾウに接しているかを見にきてほしいと話す。

【間もなく完成!新オランウータン館】

約13億円を投じて去年の冬から建設中の「新オランウータン館」。屋内は植物が自生可能。熱帯で暮らすオランウータンにとって最適な環境を目指し、温度・光・水にこだわっている。10月31日の完成を目指していて、公開は来年春の予定だ。

オランウータン館は熱帯に近づけるため暖房の利用が多くなるが、エネルギーにも配慮しているという。その秘密が建物の地下に通している『アースチューブ』という管。担当の鈴鹿さんは「地中熱と熱交換をして、冷たい外気を少し暖かくして館内に供給。夏は熱い空気を地中のひんやりした空気にして供給する」と話す。これにより年間25万~40万円の燃料代を節約できる。

館内のコンセプトは、「動物のエリアにおじゃまする」。オランウータンの故郷ボルネオの生物多様性を知り、感じることができるような施設になっている。

【動物園の今後 来園目標“定めない”理由とは?】

動物園の運営には市民や企業の支援も重要だ。円山動物園の主な収入である入園料は昨年度3億7千万円だったのに対し、基本的な支出のエサ代・光熱費・施設運営は8億円を超える。足りない部分は環境教育施設として市の財源を充てている。入園者の推移では、新しいゾウ舎がオープンした2018年、39年ぶりに年間100万人を突破。しかしその後コロナ禍で休園が続き、来園者数は大きく落ち込んだ。

実はコロナ禍の直前、収支を改善するため大人の入園料を600円から800円にするなど、料金を改定。また、運営方針もこれまでと変わり「集客目標値」を定めないとした。

目標数値を追うことで動物と向き合う現場が疲弊したため、「一番根底にある『動物を大切にする』というところに力点を置いて事業しようという見直しを図った」という柴田園長。新規の入園者を増やす事にとらわれなくなり、リピーターが増えているという。柴田園長は「動物をもっとより良い形で命をつないでもらうように頑張る」と話す。

MCの杉村太蔵さんは「いかに人間と動物が共存できるようにするか、それを考えるきっかけを与えるのが動物園の役割。まさにSDGsの根幹になってくるのではないか」と話す。円山動物園の取り組みに今後も注目だ。
(2023年10月14日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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