旧統一教会への解散命令請求 元信者ら「前進」評価も被害者救済を求め

東京地裁(資料写真)

 「ようやくスタートラインに立てた」─。文化庁が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を東京地裁に請求した。今後は政府と教団の意見を踏まえ、解散命令の是非を司法が判断することになる。元信者や家族のほか、支援に取り組んできた弁護士からは「前進」との評価と共に、早期の解散命令や被害者救済の体制整備などを求める声が上がる。

 「ここまでたどり着いたのは、多くの人の力。同じ被害を生まないための一歩だと思う」。

 県内在住で元信者の30代女性は15年前、都内の駅で青年の意識調査と称して声を掛けられた。教団と関わる最初のきっかけだった。幼い頃に母親を亡くし、当時は友人とも疎遠で孤独を感じていた。手相を見られ、案内された施設で生い立ちや収入を詳しく聞かれ「勉強すればあなたやあなたの先祖が救われる。あなたは選ばれた人」などと繰り返された。さみしさが紛れ、温かく迎えられたと感じ、通うようになった。

 教団や宗教と分かるようなものはなく、旧統一教会と知ったのはその1年以上後。一度できたつながりは簡単に途絶えず施設に通うなどしていたが、父親の反対を受け、指摘されていた高額献金の問題などを調べ、自ら脱会を決めた。

 教団と知らされず勧誘され「苦しんでいる先祖を助けるため」と購入させられたとして、宝石や着物代など約260万円の返金を求めて今年、集団交渉に参加した。現在は調停に移ったものの大きな進展はないといい、30代の夫は「めどがたたない不安はある。教団は真摯(しんし)に受け止め、賠償をちゃんと進めて」。女性は「正体を明かさない勧誘や弱みにつけ込んで不安をあおる手口への注意はこれからも必要」と呼び掛ける。

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